POWER SUPPLY / 電力調達の仕組みを知る
太陽光出力制御の実態
どのエリアでどれだけ捨てられているか
太陽光発電の導入拡大に伴い、電力需要の少ない時間帯に余剰電力が発生し、「出力制御(カーテイルメント)」が 常態化するエリアが増えています。九州では昼間時間帯の13.8%で抑制が発生し、ピーク時には4,838MWもの太陽光出力が カットされています。30分値の実績データからエリア別・月別の抑制状況を分析し、法人の太陽光投資判断や 契約選択への影響を解説します。
太陽光出力制御(カーテイルメント)とは
電力系統は常に「需要=供給」のバランスを保つ必要があります。太陽光の発電量が需要を上回ると 周波数が乱れるリスクがあるため、一般送配電事業者が太陽光発電所に出力を下げるよう指示します。 これが出力制御です。制御された電力は発電されず、いわば「捨てられた」状態になります。
FIT/FIP売電収入への影響
出力制御中は発電できないため、売電収入がゼロになります。FIT認定設備でも制御対象となり、 投資回収計画に直接影響します。
自家消費型への影響
自家消費型太陽光は系統への逆潮流を制御されるケースがあります。蓄電池との併用で 自家消費率を高める対策が有効です。
エリア別・月別 太陽光出力抑制量
主要5エリア(九州・四国・関西・東北・中国)の月別平均抑制量(MW)です。 春季(3〜5月)に抑制が集中し、夏季はほぼゼロになる季節パターンが鮮明です。
出典: 各一般送配電事業者公表の30分値データを集計(2024年2月〜2026年4月)
エリア別 出力制御頻度(昼間時間帯 6〜18時)
| エリア | 抑制頻度 | 最大抑制量 | 平均抑制量 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 九州 | 13.8% | 4,838 MW | 62 MW | 全国最多。3〜4月が深刻 |
| 四国 | 10.5% | 1,230 MW | 17 MW | 需要規模小で余剰吸収困難 |
| 関西 | 10.1% | 2,650 MW | 19 MW | 原子力ベースロードとの競合 |
| 東北 | 7.8% | 3,751 MW | 36 MW | 風力との同時余剰も発生 |
| 中国 | 6.9% | 2,348 MW | 20 MW | 太陽光シェア15.8%で上位 |
| 中部 | 3.2% | 1,982 MW | 5 MW | 春季のみ一時的に発生 |
| 北陸 | 2.6% | 703 MW | 1 MW | 太陽光導入量自体が少ない |
| 北海道 | 1.6% | 461 MW | 1 MW | 蓄電池で一部吸収 |
| 東京 | 0.0% | 0 MW | 0 MW | 需要最大でまだ吸収余力あり |
季節別の抑制パターン
3〜5月(春季)
抑制が最も深刻な時期。日射量が多い一方、冷暖房需要が少なく電力需要が年間最低水準。九州では3月に565.6MW、4月に851.8MWの平均抑制が発生。
7〜8月(夏季)
冷房需要で電力消費が増加し、太陽光の出力を吸収できるため抑制はほぼゼロ。九州でも7月の抑制はゼロ。
10〜11月(秋季)
気温が下がり始め需要は緩やかだが、日射はまだ強い時期。九州で114.7MW(10月)、関西で44.0MW(11月)と中程度の抑制。
12〜2月(冬季)
暖房需要で電力消費が増加するが、日射量も減少するため抑制は少ない。ただし九州は2月でも35.7MWの抑制が発生。
なぜ東京は抑制ゼロなのか
東京エリアの太陽光抑制率は0.0%です。これは太陽光が少ないからではなく(出力は全国最大の最大17,840MW)、 需要が全国最大で余剰が発生しないためです。さらに東北から常時4,000MW超の電力を輸入しており、 連系線を通じて東北の余剰電力も吸収する受け皿になっています。
ただし将来的に太陽光導入がさらに進めば、東京エリアでも昼間の余剰が発生する可能性があります。 その場合、ダックカーブの深化とともに 抑制が始まるシナリオも想定されます。
法人にとっての意味
太陽光投資の判断
九州・四国で太陽光のFIT/FIP売電を検討する場合、春季の抑制リスクを投資回収計算に織り込む必要があります。 蓄電池併設やオフサイトPPA先のエリア選定も重要な判断要素です。
市場連動型プランへの影響
出力制御が発生するほど太陽光が余る=昼間のJEPX価格が低下します。市場連動型プランの場合、 昼間のコストが安くなる一方、夕方のランプアップ時に急騰するリスクがあります。
需要シフトの機会
抑制エリアでは昼間に電力が余っています。蓄電池や蓄熱、EV充電などで昼間に電力を使う「需要シフト」は 系統にも企業コストにも有益な戦略です。
再エネ賦課金との関係
抑制により発電されなかった電力もFIT買取対象にはなりませんが、FIT導入量の増加は再エネ賦課金の 上昇圧力に。法人は賦課金コストと抑制ロスの両面を意識する必要があります。
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