POWER SUPPLY / 電力調達の仕組みを知る
東京は常時4,456MW輸入している
日本の電力系統は9つのエリアが「連系線」で結ばれており、エリア間で電力を融通しあっています。 東京エリアは常時平均4,456MWを他エリアから輸入し、東北エリアは常時4,041MWを輸出しています。 この融通のバランスが崩れると、エリア間でJEPX市場価格の乖離が広がり、 法人の電気料金に直接影響します。30分値データから連系線潮流・揚水発電・蓄電池の実態を解説します。
連系線は、隣接する電力エリア間を結ぶ高圧送電線です。電力が余っているエリアから不足しているエリアへ 電力を送ることで、全国の需給バランスを調整する役割を果たします。ただし送電容量には物理的な上限があり、 この上限に達すると「混雑」が発生し、エリア間の市場価格が乖離します。
正の値(赤)は輸入(他エリアから受電)、負の値(青)は輸出(他エリアへ送電)を示します。
出典: 各一般送配電事業者公表の30分値データを集計(2024年2月〜2026年4月)
| エリア | 平均(MW) | 最大(MW) | 最小(MW) | 基本的な役割 |
|---|---|---|---|---|
| 北海道 | -125 | +498 | -763 | 輸出 |
| 東北 | -4,041 | -82 | -6,666 | 輸出 |
| 東京 | +4,456 | +7,788 | 217 | 輸入 |
| 中部 | +1,494 | +4,288 | -2,488 | 輸入 |
| 北陸 | -174 | +1,184 | -1,884 | 輸出 |
| 関西 | +676 | +6,654 | -3,720 | 輸入 |
| 中国 | +123 | +2,726 | -3,238 | 輸入 |
| 四国 | -1,030 | +558 | -2,348 | 輸出 |
| 九州 | -1,637 | +224 | -3,048 | 輸出 |
東北エリアは常時平均4,041MWを輸出しており、その大半が東京エリアに向かいます。 東北は再エネ(太陽光9.5%+風力4.5%)と石炭火力(36.0%)で発電した電力を、 需要最大の東京へ送り続けています。
東京の輸入は最小でも+217MW(常に正)であり、東北からの送電が途絶えるケースは事実上ありません。 ただし冬季の需要ピーク時に連系線が混雑すると、東京のJEPX価格が東北より高くなる 「エリアプライス乖離」が発生します。
揚水発電は「電力の蓄電池」として、夜間や昼間の余剰電力で水をくみ上げ(充電)、 需要ピーク時に放水して発電します。太陽光の普及により、昼間の充電→夕方の放電という パターンが増えています。
| エリア | 充電時間率 | 最大発電(MW) | 最大充電(MW) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 17.3% | 581 | -783 |
| 東北 | 9.6% | 438 | -448 |
| 東京 | 33.4% | 7,813 | -7,456 |
| 中部 | 31.9% | 3,624 | -3,754 |
| 北陸 | 2.8% | 154 | -124 |
| 関西 | 47.7% | 3,231 | -3,786 |
| 中国 | 36.4% | 1,738 | -2,021 |
| 四国 | 17.6% | 622 | -618 |
| 九州 | 28% | 2,202 | -2,466 |
関西は充電時間率47.7%と最も積極的に揚水を活用しています。原子力のベースロード電源が充電源となり、 夕方のピーク需要に備える運用です。東京・中部も30%超で、ダックカーブ対策として揚水が重要な役割を果たしています。
系統用蓄電池(大型蓄電池)は揚水発電を補完する新しい調整力ですが、現時点での貢献は微小です。
| エリア | 平均(MW) | 最大出力(MW) | 稼働率 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | -4 | 117 | 98.8% |
| 東北 | -2 | 52 | 93.1% |
| 東京 | 3 | 45 | 42.2% |
| 中部 | 1 | 34 | 27.9% |
| 関西 | 2 | 66 | 40.5% |
| 九州 | -1 | 50 | 62.9% |
北海道(98.8%)と東北(93.1%)は高い稼働率ですが最大出力は100MW程度。 全国の需要(約11,000MW平均)に対して蓄電池の寄与はまだ1%未満です。 ただし今後の大規模蓄電池プロジェクトの進展により、2030年代には調整力の一角を担う可能性があります。
連系線が混雑するとエリアプライスがシステムプライスから乖離します。 東京エリアは需要集中で常に高めのプレミアムがつきやすく、市場連動型プランの企業は エリアプライスの動向を意識する必要があります。
冬季の寒波や夏季の猛暑で需要が急増した際、連系線の送電容量が上限に達すると エリア内の供給力だけで対応する必要があります。この状況ではJEPX価格がスパイクし、 市場連動型プランの企業は大幅なコスト増に直面します。
大規模地震や台風で連系線が損傷するとエリアが孤立し、供給力が大幅に低下するリスクがあります。有事シナリオ分析で 自社のリスクを確認してください。
国は北海道−東北間、東北−東京間の連系線増強を計画しています。実現すれば 北海道の風力・太陽光を東京へ効率的に送れるようになり、エリアプライスの乖離が縮小する可能性があります。
エリア間の電力融通は日本の電力システムの安定運用に不可欠ですが、送電容量には限界があります。 東京の常時輸入体制、東北・九州の輸出構造、関西の揚水活用──これらの実態を理解することで、 自社エリアの電気料金がなぜそのような水準・変動パターンになるのかが見えてきます。
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
自社エリアの連系線混雑リスクや市場価格変動が電気料金にどう影響するか、シミュレーターで確認できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。