燃料費調整額(燃調費)とは、LNG・原油・石炭の輸入価格の変動を電気料金に反映する仕組みです。本記事では計算式、2018〜2026年度の推移、2022年の急騰、激変緩和措置の影響まで、法人向けに実データで整理します。
このページでは、燃料費調整額(燃調費)の計算式、貿易統計 CIF 価格との関係、2018〜2026 年度の推移、2022 年ウクライナ危機時の急騰、激変緩和措置(電気料金値引き補助金)の影響を実データで解説し、後半で 市場価格調整額(市場連動プラン)との違い を比較表で整理します。
日本の電気料金は、発電コストの中でも大きな割合を占める燃料費が変動した場合に、 一定のルールで料金に反映する「燃料費調整制度」が設けられています(電気事業法に基づく算定規則)。
具体的には、貿易統計上の LNG・原油・石炭の平均 CIF 価格を 3 ヶ月分平均し、 基準燃料価格との差に応じて kWh あたりの単価を毎月改定します。 改定は 3 ヶ月前の貿易統計を参照するため、実際の燃料市況とは 3〜5 ヶ月程度のタイムラグがあります。
燃料費調整単価 =(平均燃料価格 − 基準燃料価格)× 基準単価 ÷ 1,000
平均燃料価格 = 原油 CIF × α + LNG CIF × β + 石炭 CIF × γ(換算係数は会社・契約区分ごとに定める)
平均燃料価格が基準値を上回ると燃調はプラス(上乗せ)、下回るとマイナス(値引き)になります。 2020 年度のようにコロナ禍で世界的に燃料需要が落ち込んだ時期はマイナスの月が続きました。
以下は東京電力エナジーパートナーの高圧料金メニューにおける、年度平均の燃調単価の概算推移です。 2022 年度にウクライナ危機起点の LNG 急騰で過去最高水準まで上昇し、 2023 年度は政府の激変緩和措置(電気料金値引き)で見かけ上は低く抑えられています。
※ 実績は月次で大きく変動します。激変緩和措置(2023年1月〜)の値引きを反映した概算です。 正確な月次値は東京電力エナジーパートナーの公表資料をご確認ください。
| 年度 | 燃調(概算) | 補助反映分 | 背景 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | +0.60 円/kWh | — | 原油・LNGは落ち着いた水準。燃調は±ゼロ付近で推移。 |
| 2019年度 | -0.20 円/kWh | — | 燃料安基調で燃調は小幅のマイナス域。 |
| 2020年度 | -3.20 円/kWh | — | コロナ禍での燃料需要低下で大幅マイナス。実質的な値下がり局面。 |
| 2021年度 | -0.40 円/kWh | — | 年度前半はマイナス、後半にかけて燃料価格上昇で急速に縮小。 |
| 2022年度 | +6.80 円/kWh | — | ウクライナ危機でLNGスポット急騰。自由料金では上限撤廃。規制料金は上限到達。 |
| 2023年度 | +1.10 円/kWh | ▲3.20 | 激変緩和対策事業により高圧は 1〜9月 3.5円/kWh、10月〜 1.8円/kWh の値引きが反映。 |
| 2024年度 | +2.40 円/kWh | ▲1.10 | 補助は縮小局面。燃料価格は高止まりで燃調は再上昇。 |
| 2025年度 | +3.10 円/kWh | ▲0.30 | 補助は再開・終了を繰り返し、ベースは燃料価格に依存。 |
| 2026年度 | +3.30 円/kWh | — | 補助なしを前提。LNG・原油の高止まり継続で燃調も高値圏。 |
燃調費の最大の変動要因は LNG 輸入価格です。日本の火力発電はガス火力が中心のため、 LNG の CIF 価格が動けば、その 3〜5 ヶ月後に燃調単価が動きます。
A.燃料費(LNG・石炭)の国際価格上昇、再エネ賦課金の増加、容量拠出金の新設、託送料金改定、カーボンプライシング導入が主な要因です。複数要因が同時に進行し、中長期的に上昇圧力が続きます。
A.LNG・石炭・原油の輸入価格変動を電気料金に反映する調整額です。kWhあたりで加減算され、原油価格が高騰すると料金全体が大きく上昇します。毎月更新され、請求書に別項目で記載されます。
A.2012年度の0.22円/kWhから2024年度は3.45円/kWh程度まで上昇。再エネ普及とともに今後も上昇傾向で、2030年度には4円/kWh超の可能性があります。年間使用量100万kWhなら賦課金だけで約345万円の負担です。
A.将来の供給力確保のため、小売電気事業者が負担する料金で、2024年度から本格稼働。需要家には小売料金を通じて転嫁されます。kWhあたり数十銭〜1円程度の上昇要因となります。
A.①プラン見直し(固定・市場連動・TOU)、②切替先との相見積もり、③デマンド削減による基本料金圧縮、④再エネPPA・自家発電の検討、⑤省エネ投資、の順で取り組むのが効果的です。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
出典: 財務省貿易統計(年度平均の概算)。2022年度は 128,000 円/トンまで急騰しました。
本記事(サブピラー A = 燃料軸)から、メタピラー・対をなす市場軸サブピラー・自身配下のクラスター 2 本へのナビゲーションです。
燃料費調整 vs 市場価格調整 完全比較(メタピラー)
10 項目比較表と金額規模シミュレーションで、どちらのリスクが大きいかを整理します。
市場価格調整の総合解説(サブピラー B)
燃調と混同しやすい別の調整項目。市場連動プラン中心。
燃料費調整額の過去推移
2018〜2026 年度の燃調単価推移と最大振れ幅を実データで整理。
約款での燃料費調整確認
自社契約の約款で燃調の表記・上限有無を見分ける手順。
法人の電気料金とLNGの関係
LNG市況が料金に波及する流れを整理。
市場連動プランとは
燃調ではなくJEPX連動で請求される契約。
再エネ賦課金とは
燃調と並ぶ請求書の変動要因。
法人向け電気料金は高止まりしているのか
燃調費を含む料金水準の推移実態をデータで確認できます。
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法人電気料金の基礎知識
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業種別の見直しポイント集(33 業種)
病院・工場・小売・自治体施設など、業種ごとの負荷特性・固定vs市場連動の向き不向き・契約見直しの着眼点を整理した解説記事集。
【2026年5月】法人の電気料金はどう動いた?
5/1施行の再エネ賦課金改定・GW明けの需要急増・冷房開始期のJEPX動向を、燃調費の動きとあわせて整理。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
解説を押さえたうえで、現在契約と候補プランを同条件で比較すると、見直しの方向性を具体化しやすくなります。
燃調費や市場連動、再エネ賦課金など、料金が上がる要因を自社の契約に当てはめると、今後の影響額が具体的に見えてきます。読み解きに不安があるときや、社内説明の材料が必要なときは、専門家へお気軽にご相談ください。
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中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。