低圧電力は、契約電力50kW未満の法人が利用する電力契約区分です。小規模オフィス・店舗・クリニック・飲食店・倉庫など幅広い施設が該当しますが、 「従量電灯」と「動力(低圧電力)」の違いや、契約方式の選択、高圧への切り替え判断など、実務で迷いやすいポイントが多くあります。
このページでは、低圧電力の料金構造を体系的に整理し、請求書の読み方・契約方式の選択・見直し判断のポイントまでを解説します。
低圧電力は、契約電力が50kW未満の法人向け電力契約区分です。小規模オフィス、店舗、クリニック、飲食店、倉庫などが該当し、 日本全国に数百万件以上の低圧法人契約が存在します。
高圧契約との最大の違いは、キュービクル(受電設備)が不要である点です。 電力会社の低圧配電線から直接受電するため、設備投資なしに利用できます。一方、単価は高圧より割高になる傾向があり、 使用量が一定規模を超えると高圧への切り替えが経済的に有利になる場合があります。
低圧契約には「低圧電灯(従量電灯)」と「低圧電力(動力)」の2種類があります。 用途・電圧・料金体系が異なるため、自社の設備・用途に応じた区分を使用していることを確認することが重要です。
| 項目 | 低圧電灯(従量電灯) | 低圧電力(動力) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 照明・コンセント・IT機器 | エアコン・冷蔵庫・モーター・ポンプ |
| 電圧 | 単相100V/200V | 三相200V |
| 料金単価 | 段階制(使うほど高い) | 一律単価(使うほど割安感) |
| 基本料金の決まり方 | 契約アンペアまたは実量制 | 契約電力(kW)×単価 |
| 典型的な施設 | 小規模オフィス・店舗 | 飲食店・クリニック・小型工場 |
| 月間使用量目安 | 500〜5,000kWh | 1,000〜15,000kWh |
※ 両方の契約を同一施設で持つケースもあります(例:電灯用と動力用で別メーターを設置)。
低圧電力(動力)の月額請求は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金の合計で構成されます。 使用量5,000kWhを例に試算値を示します。
| 費目 | 算定方法 | 単価目安 | 月5,000kWhの場合 |
|---|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力×単価 | 1,100〜1,200円/kW | 約1.1〜3.6万円(10〜30kW) |
| 電力量料金 | 使用量×単価 | 夏季:17〜18円/kWh、その他:15〜17円/kWh | 約7.5〜9万円 |
| 燃料費調整額 | 使用量×調整単価 | ▲2〜+5円/kWh | ▲1〜+2.5万円 |
| 再エネ賦課金 | 使用量×賦課金単価 | 3.49円/kWh(2025年度) | 約1.7万円 |
| 合計目安 | ― | ― | 約9〜16万円 |
※ 単価は大手電力会社の標準メニュー目安。燃料費調整額は市場状況によって変動します。実際の料金はご契約内容をご確認ください。
低圧電力(動力)では、契約電力の決め方として「主開閉器契約」と「負荷設備契約」の2方式があります。 どちらを選ぶかによって基本料金が変わるため、実態に合った方式を選択することが重要です。
| 項目 | 主開閉器契約 | 負荷設備契約 |
|---|---|---|
| 契約電力の決まり方 | ブレーカー容量で決定 | 設備容量の合計で決定 |
| メリット | 実態に近い契約が可能 | 設備増設に柔軟 |
| デメリット | ブレーカーが落ちるリスク | 実使用量より高い契約になりやすい |
| 向いている施設 | 使用パターンが安定している施設 | 設備が多く同時使用率が低い施設 |
| 見直しポイント | 実態に対して容量が大きすぎないか | 設備の稼働実態を反映しているか |
現在の契約方式と実際の使用状況にずれが生じている場合、変更申請によって基本料金を適正化できる可能性があります。 電力会社への確認・相談を検討してください。
低圧契約のままでいるか、高圧へ切り替えるかの判断は、年間電気代・使用量・設備投資コストのバランスで決まります。 一般に「50kW」前後が判断の分岐点とされます。
| 判断基準 | 低圧のまま | 高圧への切り替えを検討 |
|---|---|---|
| 契約電力 | 30kW未満 | 40kW以上(特に50kW前後) |
| 月間使用量 | 5,000kWh未満 | 10,000kWh以上 |
| 年間電気代 | 150万円未満 | 300万円以上 |
| 設備投資 | キュービクル不要 | キュービクル設置が必要(200〜500万円) |
| 単価メリット | ― | 高圧の方が3〜5円/kWh安いことが多い |
| 回収期間 | ― | 使用量次第で3〜5年 |
契約電力30kW・月間使用量8,000kWhの飲食店で、低圧のままの場合と高圧に切り替えた場合を比較します。
低圧のまま(現状)
高圧切り替え後
年間差額:約40万円の節約が見込めますが、 キュービクル設置費用(目安300万円)の回収には約7.5年かかる計算になります。 建物の所有形態(賃貸か自己所有か)や施設の使用年数によって判断が変わります。
※ 上記は試算例です。実際の単価・基本料金・設備費用は電力会社・施設条件によって異なります。
低圧電力の請求書を毎月確認する際、以下の5点を習慣的にチェックすると、コスト増の原因が早期に把握しやすくなります。
契約電力(kW)が実際のピーク使用電力と大きくかけ離れていないか確認します。 過大な契約電力は基本料金の無駄な支出につながります。
プラス(追加請求)かマイナス(値引き)か、前月からの変化幅を把握します。 使用量が同じでも、燃調費の変動だけで請求額が数万円変わることがあります。
季節性のある用途(エアコン、冷蔵設備など)は、前年同月との比較が有効です。 単純な前月比では季節変動と異常値の区別がつきにくいため注意が必要です。
三相200V機器(エアコン・冷蔵庫など)を多く使用しているにもかかわらず低圧電灯(従量電灯)のみ契約している場合、 動力契約の追加が料金面で有利になる可能性があります。
年間電気代が300万円を超えるようであれば、高圧契約への切り替えの検討が経済的に合理的になる可能性があります。 定期的に試算を行うことを推奨します。
低圧電力の料金を正しく把握するには、契約区分(電灯・動力)、契約方式(主開閉器・負荷設備)、 そして使用規模が高圧切り替えの経済的ラインに達していないかを定期的に確認することが重要です。
現在の契約内容・使用実績をもとに、定期的な見直しを行うことが長期的なコスト管理につながります。
低圧電力(動力)は3相200Vで主に工場・設備用、従量電灯(電灯)は単相100V/200Vで主に照明・コンセント用です。法人でも両方の契約を持つ場合があり、契約種別によって料金体系が異なります。
一般的に電力使用量が50kW以上になると高圧への切り替えを検討できます。高圧移行には変電設備の設置費用がかかりますが、単価が低くなるため大規模になるほどコスト削減効果が大きくなります。
主開閉器契約は電力量計のブレーカー容量で契約電力を決める方式、負荷設備契約は施設内の設備容量をもとに契約電力を算出する方式です。実際の使用パターンによってどちらが有利かが変わります。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-13
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