データセンターのIT機器が使う電力は、事実上すべて熱に変わります(IEA「Energy and AI」)。本ページでは、その熱がどの温度で出てくるか、温度によってどこで使えるか、EU・ドイツ・日本で排熱の利用がどう制度に組み込まれているかを、資料名を添えて整理します。数値と制度の記載は、2026年10月8日時点で確認した資料によります。冷却方式の選び方やPUEを下げる実務は、別のページで扱います。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
このページでわかること
データセンターでは、IT機器が使った電力が熱になり、その熱を取り除くために冷却の設備が電力を使います。排熱を考える出発点として、熱が生まれる構造と、データセンター内の支援設備の効率を表すPUEの定義を、資料ごとに確認します。
本ページは、特定の事業者・製品・契約形態を推奨するものではありません。
IT機器が使う電力は熱になる
IEA(国際エネルギー機関)の報告書「Energy and AI」(2025年4月)は、データセンターのIT機器が使う電力は事実上すべて熱に変わるとしています。欧州委員会の報告書(COM(2026) 500・2026年9月21日)も、データセンターが消費した電力は実質的にすべて最終的に熱になり、そのためデータセンターのエネルギー再利用は排熱が中心だとしています。
日本の公的機関の説明
科学技術振興機構(JST)低炭素社会戦略センターの提案書(令和3年2月)は、データセンターで出る熱はCPU・メモリ・ストレージ・スイッチの消費電力のほぼ全量で、CPUなどの動作環境を一定に保つために熱を取り除く空調が置かれているとしています。
冷却に使う電力の割合
IEAの「Energy and AI」によると、データセンター全体の消費電力に占める冷却の割合は、効率の高いハイパースケール型で約7%、効率の低いエンタープライズ型で30%超です。同報告書は、PUEが約2なら、IT機器が1kWhを使うごとに、冷却などの補助設備がさらに約1kWhを使うと説明しています。
電力の使い道の分け方
経済産業省の工場等判断基準ワーキンググループ「中間取りまとめ」(令和4年3月)は、データセンターの電力の主な使い道を、付帯設備(空調・電源供給・照明)とIT機器(サーバ)に分けています。欧州委員会共同研究センター(JRC)の指針(2025年3月)は、電力と冷却の需要を生むのはIT機器で、施設内の冷却が多くの場合で最大のエネルギー損失だとしています。
| 資料(発行者) | PUEの定義 |
|---|---|
| 資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」(2026年4月) | (DC全体の消費電力)÷(サーバなどのICT機器の消費電力)。DC内の建物・付帯設備の効率を評価する指標で、1.0に近いほど効率が高い。 |
| EUの委任規則 (EU) 2024/1364 | PUE=E_DC÷E_IT。E_DCは冷却に使う電気・燃料などを含むデータセンターの総エネルギー消費、E_ITはIT機器の消費(UPSでの測定が原則)。 |
| 米エネルギー省(DOE)FEMP/NREL「Best Practices Guide for Energy-Efficient Data Center Design」(2024年7月改訂) | データセンター施設を動かす年間総エネルギーと、全IT機器が使う年間総エネルギーの比。 |
米DOEの同じ指針は、PUEが表すのはデータセンター内の支援設備(インフラ)の効率で、データセンター全体の効率を示す指標ではないとし、PUEが1.0なら、データセンターに入る電力の100%がIT機器に使われ、冷却・照明などには使われていないことになると説明しています。規格では ISO/IEC 30134-2 がPUEを定めており、2016年版は廃止済みで、2026年10月8日時点の現行版は2026年の第2版です。
PUEを下げる実務(空冷と液冷の比較など)は データセンター冷却最適化で扱います。
一般社団法人エネルギー情報センターの担当者が、現状の契約内容や課題感をお伺いし、判断に必要な論点を一緒に整理します。ご相談にはメールで折り返しご連絡します。詳細が決まっていない段階でも構いません。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。
排熱の温度は冷却方式で変わり、同じ冷却方式でも資料によって値の幅が違います。ここでは一つの値にまとめず、資料名を添えて並べます。
| 冷却方式・回収する位置 | 排熱の温度 | 資料(発行者・年) |
|---|---|---|
| 空冷(CRAC/CRAHの還気) | 平均25〜35°C | ReUseHeat D1.4(EU Horizon 2020のプロジェクトの成果物・2020年) |
| 空冷 | おおむね25〜35°C | Wahlroos ほか(査読論文・Energy誌・2017年) |
| 空冷(CRACへの還気で回収) | 25〜35°C | Sethuramalingam ほか(会議論文・ICESF 2019) |
| 空冷サーバーから回収する熱 | 通常35〜40°C | Pärssinen ほか(査読論文・Sustainable Cities and Society誌・2019年) |
| 空冷(ドイツ・フランクフルトの調査) | 約25°C | Jürgens ほか(査読論文・IJSEPM誌・2024年) |
| 空冷(高負荷サーバーが密に並ぶラックの還気) | 100°F(約38°C)を超えることがある(原文は°Fのみ。°Cは本ページで換算した値) | 米DOE FEMP/NRELの指針(2024年7月改訂) |
| 液冷 | 40〜80°C | IEA「Energy and AI」(2025年) |
| 液冷(機器を直接冷やす) | 一般に50〜60°C | ReUseHeat D1.4(2020年) |
| 液冷(プロセッサの近くで回収) | 例として50〜60°C | Wahlroos ほか(2017年) |
| 液冷 | 50〜60°C | Pärssinen ほか(2019年) |
| 液冷(CPUの近くで回収) | 50〜60°C | Sethuramalingam ほか(2019年) |
| 液浸冷却 | 温度の数値の記載なし(利点として幅広い温度への対応と高い熱回収を挙げる) | ASHRAE TC 9.9の白書「Emergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers」(2021年) |
Pärssinen ほか(2019年)は、回収温度の上限は電子部品の温度で決まり、部品はほとんどの時間85°C未満に保つ必要があるとしています。Wahlroos ほか(2017年)は、データセンターの排熱は一般に低質(85°C未満)で、当時の地域熱供給網では十分に使い切れないとしています。
液冷の「Wクラス」は排熱の温度ではない
液冷の資料に出てくる W17・W27・W32・W40・W45・W+ は、ASHRAEの液冷の水温クラスの名前です(旧名称のW1〜W5から改められ、W40は新設。改定は『Thermal Guidelines』第5版(2021年)に反映。ASHRAE TC 9.9の白書「Emergence and Expansion of Liquid Cooling in Mainstream Data Centers」(2021年))。Wの数字は、サーバーへ送る施設側の水(供給側)の温度の上限(°C)で、排熱(戻り)の温度ではありません(米DOEの指針。ASHRAE TC 9.9の白書「Water-Cooled Servers」(2019年)も、各製品の上限を施設側の水温で示しています)。全クラスとも下限温度は2°Cです(同じ2021年の白書)。なお、「Water-Cooled Servers」は、旧名称のW2〜W4(新名称のW27・W32・W45)向けのループ設計では、IT側の二次ループの流体温度が50〜60°Cになりうるとしています。
排熱の使い道を考えるうえでは、熱の受け手が求める温度が条件の一つになります。米DOEの指針によると、サーバーを出る空気や水の温度が高いほど排熱を使える機会は増え、省エネ効果が最も大きいのは、建物の換気空気の予熱や水の加温などの低温用途に直接使う場合です。同指針は、熱の受け手に合う温度で、ヒートポンプなしで直接使えることを理想としています。
| 熱の受け手 | 温度についての記載 | 資料(発行者・年) |
|---|---|---|
| 暖房(空冷サーバーの熱をそのまま使う) | 空冷サーバーから回収する熱(通常35〜40°C)は、そのままでも暖房に足りる | Pärssinen ほか(2019年) |
| 事務所・実験室の暖房(液冷の還水を使う設計) | 部品を直接液冷し、冷却水を24°Cで供給して35〜40°Cで還す。この還水を事務所と実験室の暖房に使い、最も寒い日に施設を暖めるには還水35°Cが必要とした | NREL(米DOE所管の研究所)の講演資料(2018年) |
| 地域熱供給 | 熱供給網の多くは第2〜第4世代で、送水は70°C以上のため、ヒートポンプが要る | Jürgens ほか(2024年) |
| 地域熱供給(第3世代) | 送水温度は平均80°C超。50°Cを大きく下回る低温排熱は昇温が必要 | ReUseHeat D1.4(2020年) |
| 地域熱供給(フィンランドの事例を扱う論文) | 論文の当時(2017年)の送水温度は、外気温に応じて一般に75〜120°C | Wahlroos ほか(2017年) |
| 低温地域熱供給(LTDH) | 送水50°C未満・還水約20°Cもありえ、送水が50°C未満ならヒートポンプなしで直接送れる可能性がある | Wahlroos ほか(2017年) |
地域熱供給の送水に排熱を直接入れられるのは、排熱の温度が熱供給網の送水温度より高い場合です(Jürgens ほか・2024年。同論文は、熱供給網の戻り管に入れる方法は研究されているが一般的ではないとしています)。IEAの「Energy and AI」は、空冷では熱を使える温度まで上げるのにヒートポンプが要ることが多く、液冷は既存の地域熱供給網に直接送れる場合があるとしています。ReUseHeat D1.4は、データセンターの熱が得られるかどうか(可用性)は、日・季節を通じておおむね一定としています。
ヒートポンプで昇温するときの効率(COP)について、Pärssinen ほか(2019年)は文献上の値を温度差に応じて3.0〜6.0としています。Sethuramalingam ほか(2019年)は、ヒートポンプで排熱を最大95°Cまで上げられ、データセンターでのCOPは段数と温度によって2〜7としています。
利用先の例として、Pärssinen ほか(2019年)は住宅・事務所・プール・温室・地域熱供給事業者を、東京都の「まちと調和したデータセンターに向けたガイドライン」(令和8年3月)は住宅やオフィスビルの暖房・給湯、ビニールハウスでのトマトなどの栽培、温水によるウナギなどの養殖を挙げています。環境省の「地域共生を目指したデータセンター脱炭素化設備導入支援事業」の事業概要資料の事業イメージ図にも、データセンターからの温熱の供給先として施設・住居暖房、温水プール、温室ハウスが描かれています。
寒冷地での使い方の試算として、北海道立総合研究機構 北方建築総合研究所の調査研究報告 No.396「積雪寒冷条件を踏まえたデータセンターの設計に関する基礎的検討」(2019年3月)は、美唄市の2017年11月〜2018年4月の気象条件で、データセンターの排熱による冬季の融雪をシミュレーションし、冷房負荷1kW当たり3〜4㎡程度の融雪が可能だとしています。条件は、データセンターの空気を冷やす熱交換コイルの空気入口温度を32°C、冷房負荷の約50%を処理するというもので、この設定で1kW分の熱を交換するには、循環水の入口温度を17°C以下にする必要があるとしています。
EUの制度では、排熱の再利用はPUEとは別に、ERFで数えます。データセンターの電気代そのものの見直しは データセンターの電気料金見直しポイントで、自社の条件での電気代と上昇リスクは シミュレーターで確認できます。
EUとドイツは、データセンターの排熱の利用や情報の公開を法令で定めています。以下はそれぞれの法域の規定で、日本の義務ではありません。
1MW超のデータセンターの排熱利用(指令第26条第6項)
総定格エネルギー入力が1MWを超えるデータセンターは、排熱を利用するか、他の排熱回収用途に回すことを加盟国が確保します。評価に基づき技術的または経済的に実行不可能と示せた場合は例外です。
新設・大規模改修のときの費用便益分析(同第7項)
1MW超のデータセンターを新設または大規模改修するときは、施設単位の費用便益分析を行い、技術的実現性・費用対効果・季節変動を含む地域の熱需要・地域熱供給網への接続などを評価します。その分析では、排熱を有用な温度で、少ない補助エネルギーで回収できる冷却方式を検討することとされています。第26条第6項を含む規定の国内法化の期限は2025年10月11日です。
情報の公開と報告(指令第12条・委任規則 (EU) 2024/1364)
IT機器の電力需要が500kW以上のデータセンターについて、加盟国は所有者・運営者に情報を公開させます(初回は2024年5月15日まで、その後は毎年)。公表する主要指標には「排熱利用」が含まれます。委任規則は、欧州データベースへの報告の期限を2024年9月15日、次に2025年5月15日、以後は毎年としています。
排熱の指標(委任規則 (EU) 2024/1364)
再利用排熱量(E_REUSE・kWh)、平均排熱温度(T_WH・°C。IT機器を冷却する流体の温度の年平均)、エネルギー再利用率(ERF=E_REUSE÷E_DC)を定めています。
欧州委員会の報告書(COM(2026) 500・2026年9月21日)によると、初回報告期間(2024年5〜9月)に報告したデータセンターは770か所で、報告義務の対象と推定される数の約36%でした。何らかの排熱再利用を報告したのは67か所で、報告データでは、EUのデータセンターが出す熱のうち再利用されているのは約1.8%です。ただし同報告書は、一部の値が非現実的に高いことや、排熱再利用の事業が知られている加盟国でも報告がなかったことを、代表性の限界として注記しています。
同報告書は、再利用が進まない要因として、施設ごとに排熱を供給できる準備の度合いがまちまちなこと、熱の高温化と受け手までの輸送に投資が要ること、出せる熱のパターンが不規則または受け手に合わないこと、熱の受け手がいないことを挙げています。地域に熱の需要と受け入れ設備がなければ再利用できず、気候や季節で需要が変わるため、ERFの目標値は設定が難しいともしています。
欧州委員会は2026年9月21日、500kW超の個別のデータセンターを対象とする共通の格付け制度を提案し、排熱の再利用など電力系統への貢献も評価に含むとしました。プレスリリースでは、その委任規則は欧州議会と理事会による2か月の精査期間を経て発効する手続きとされ、最初のラベル表示は2027年の見込みとされています。同じ委任規則(C(2026) 3472 final・2026年9月21日)は、委任規則 (EU) 2024/1364 を改正して「排熱再利用対応(waste heat reuse ready)」の定義を加える内容で、境界で外部の利用者へ排熱を出せる設備(熱交換器・専用の水配管系統・熱量計など)を備えたデータセンターを指し、周辺に熱導管網があるかどうかは問わないとしています。この委任規則は2026年10月8日時点で発効を確認できておらず、発効日と官報番号は公表待ちです。
対象
非冗長の電気接続容量が300kW以上の施設を、この法律での「データセンター」としています。
2026年7月1日より前に運転を始めた施設のPUE
年平均のPUEを、2027年7月1日から1.5以下、2030年7月1日から1.3以下に保ちます。
2026年7月1日以降に運転を始める施設のPUEと再利用率
PUE 1.2以下と、DIN EN 50600-4-6に基づく再利用エネルギー比率(ERF)10%以上が求められます。ERFの下限は運転開始の時期で変わり、2027年7月1日以降の運転開始は計画値で15%、2028年7月1日以降は計画値で20%です。要件は、運転開始から遅くとも2年後までに年平均で満たします。
PUEの算定ルール
PUEを計算するとき、データセンターの排熱の高温化だけに使う設備の電力は算入しません(ドイツの法律の算定ルールです)。
再利用率の要件が適用されない場合
運転開始後の事情で運営者の責任なく満たせなくなった場合、近隣の自治体または熱供給網の運営者と、10年以内に要件を満たせる熱導管網を整備する協定(投資計画・接続管の費用負担・排熱の価格の取り決めを含むもの)がある場合、熱受け渡し設備を用意して原価で熱を提供したのに周辺の熱供給網の運営者が6か月以内に受けなかった場合のいずれかを運営者が示せば、再利用率の要件は適用されません。
毎年の公表
運営者は毎年3月31日までに前年の情報を公表し、連邦へ提出します。項目には、熱の受け手へ供給した排熱の量(kWh/年)と平均温度、大気・水域・地中へ出した排熱の量と温度、再利用エネルギー比率が含まれます。
企業一般の排熱の義務
企業一般の排熱の回避・利用の義務は、データセンター向けの特則がない範囲でデータセンターにも準用されます。企業は可能で妥当な範囲で排熱を再利用しなければならず、この再利用の義務は、完了した過去3暦年の年平均の最終エネルギー消費が2.5GWh以下の企業を除きます。企業が毎年提出した排熱の情報は、連邦エネルギー効率局が公開の「排熱プラットフォーム」に載せます(こちらも、完了した過去3暦年の年平均の最終エネルギー消費が2.5GWh以下の企業は除きます)。
ドイツの規定は、連邦司法省の法令掲載(2023年11月13日の法律。掲載版に改正の注記はありません)の本文によります。2026年10月8日時点の改正の予定は確認していません。
データセンター業は2022年4月に、省エネ法のベンチマーク制度の対象業種に加えられました。旧資料(資源エネルギー庁「データセンター業のベンチマーク制度 制度の概要」・令和5年5月)では、指標は「事業者PUE」で、データセンターのエネルギー使用量の合計(kWh)を、IT機器のエネルギー使用量の合計(kWh)で割った値とされていました。2026年4月10日策定のガイドラインでの平均PUEの求め方は、下の「対象と水準」のとおりです。
2022年のワーキンググループの事業者アンケートでは、PUEの最頻値が1.6以上1.8未満、上位10〜20%がおよそ1.4で、目指すべき水準は、回答事業者の上位15%程度にあたる「1.4以下」とされました(経済産業省「中間取りまとめ」・令和4年3月)。
令和7年度定期報告(令和6年度実績)分の公表値は、事業者ごとのエネルギー使用量による加重平均値が1.571、目指すべき水準を達成した事業者は報告者61のうち13(21.3%)です(資源エネルギー庁「ベンチマーク指標の実績について(令和7年度定期報告(令和6年度実績)分)」・令和8年6月3日、令和8年6月24日更新)。令和8年度定期報告分の結果は、2026年10月8日時点で公表を確認できておらず、公表待ちです。
データセンター業への追加措置は2026年4月1日に施行されました(資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法に基づくデータセンター業に係る措置」と、同措置のガイドライン(2026年4月10日策定))。
対象と水準
データセンター業のエネルギー使用量が年度1,500kl(原油換算)以上の事業者が対象で、対象のデータセンターは年度1,500kl以上、またはサーバ室面積300㎡以上のものです。水準は平均PUE 1.4以下、目標年度は2030年度。平均PUEは、保有する全データセンターのPUEをデータセンターごとのエネルギー使用量で加重平均して求め、2026年度の報告からはホスティング・クラウド(テナント)型のデータセンターも計算に含めます。
データセンター業の範囲
ガイドラインは「データセンター業」を、データセンターを運営・利用して情報処理に係る設備・機能の一部を提供する事業と定めています。データセンターを自社内の管理(経理・管理・研究開発等)の用で用いる場合はデータセンター業に当たりません。同じ工場等でデータセンター業とそれ以外の事業を行い、エネルギー使用量を按分できない場合は、その工場等を一体でデータセンターとみなします。
2029年度以降に新設するデータセンターのPUE 1.3
データセンター業で年度1,500kl以上の事業者が2029年度以降に新設するデータセンターは、稼働開始から2年が経過した時点の翌年度以降、PUEを1.3以下にしなければなりません。データセンターではない建築物を転用したもの、2028年度以前に新設されたハウジング型またはホスティング・クラウド(オーナー)型のデータセンターと受電設備を共有するもの、それらのハウジング型に新たに専有部分を設けたテナント型、年度1,500kl未満かつサーバ室面積300㎡未満のものは除きます。これとは別に、データセンターの新設や、データセンターに係る設備の新設・更新をする場合には、設計時PUEを1.28以下にすることが「望ましい取組」とされています。
基準を満たさない場合
PUE 1.3の基準を満たさない場合、国は合理化計画の作成を指示し、従わなければ公表や命令を行い、命令にも従わなければ罰金となります。設計時PUEが1.28以下で、未達の原因がIT機器などの稼働率の低さだと確認できる場合は指示を行わないとされていますが、稼働率の具体的な基準は、2026年4月10日策定のガイドラインの時点で未定とされており、2026年10月8日時点で公表待ちです。
新設データセンターのPUEの公表
データセンター業で年度1,500kl以上の事業者は、2025年度以降に新設したデータセンター(除外あり)のPUEなどを、提出年度の3月31日までに自社のホームページ等で公表します。PUEは、前年度比の改善率を併記すれば、実数ではなく所定の区分で公表してもよいとされています。国は集計レベルの情報を公表するとしています(事業者による初回の公表期限は2027年3月31日です。国の集計は2026年10月8日時点で公表待ちです)。
日程
2026年7月31日=目標・達成方針と定期報告書(2025年度実績)の初回提出期限、2027年3月31日=初回公表期限、2029年4月1日=PUE 1.3の基準の適用開始、2032年4月1日=遵守状況に応じた行政措置の開始です。
同じガイドラインの取組の表では、望ましい取組(設計時PUE 1.28以下)の欄に「廃熱の有効利用が可能なDCとなるよう設計及び付帯設備の選定を行うこと」が、PUE 1.3以下の基準を満たすための取組の欄に「DCで発生する廃熱の有効利用のための運用上の工夫を検討すること」が書かれています。望ましい取組の欄には、電力密度が高くなる場合に液体冷却方式の採用を検討することもあります。2026年10月8日時点で確認した範囲では、データセンター業の措置の中で、排熱の利用を義務・基準・指標として定めた規定は見つかっていません。
一方、工場等一般に向けた省エネ法の「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(経済産業省告示。資源エネルギー庁に掲載の、改正の記載が令和5年3月31日までの版)には、事業者が技術的かつ経済的に可能な範囲内で行う基本的実施事項として、エネルギー消費量の大きい設備の廃熱等の発生状況を把握・分析して課題を抽出することが定められており、廃熱の回収利用の基準もあります。どちらもデータセンターに限った規定ではなく、廃熱の回収利用の基準は、専ら事務所その他これに類する用途の工場等を除く工場等に向けた項目です。データセンターが「専ら事務所その他これに類する用途の工場等」に当たるかどうかと、掲載版より後の改正(2026年4月の追加措置に伴うものを含む)の有無は、2026年10月8日時点で確認できていません。
環境省「地域共生を目指したデータセンター脱炭素化設備導入支援事業」
総務省との連携事業で、令和7年度補正予算額は20億円。熱利用設備を補助対象に含みます(補助率1/2・1事業あたり上限10億円)。公募は、1次が2026年5月15日〜6月12日正午、2次が2026年7月9日に発表、3次が2026年9月1日〜10月9日正午です。4次以降の公募は、2026年10月8日時点で確認できていません。
東京都 産業労働局「データセンター廃熱利用実装促進事業」
2026年5月11日に公募を開始。国内に導入事例がないか普及が始まったばかりの、データセンター内の廃熱を有効に使う取組が対象で、将来外部へ廃熱を供給するための効果検証も含みます。都の負担の上限は5.2億円(令和8・9年度の合計)、採択予定は1者程度、事業期間は令和10年3月31日まで。採択結果は2026年7月16日に発表されています(下の「国内の取組の例」)。
東京都 環境局の協業(実証)の公募
2026年6月9日に、データセンター排熱など未利用熱を使う協業の公募を開始。スタートアップとデータセンター事業者(原則として都内のデータセンターを運営する事業者)をそれぞれ公募し、スタートアップへは令和8年度に1社あたり上限2,000万円としていました。採択予定は2件(公募時)で、2026年10月6日に3件の採択が発表されています。都は2026年6月9日の公募開始の発表で、都内は人工排熱が多いことに加え、24時間稼働するデータセンターの増加で新たな排熱の増加が懸念されているとしています。
NEDOの技術開発の採択
NEDOは2025年9月4日、2025年度「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」の採択を決め、その中にデータセンター排熱を使う熱発電技術の開発が入っています。
内閣官房の「データセンターの立地に関する関係省庁連絡会議」第1回(2026年9月10日)の資料では、環境省が、自治体と連携して騒音・ばい煙・排熱の実態と対策の実施状況を把握する方向を挙げています。同じ資料は、日本データセンター協会の「データセンター地域共生ガイドライン」(2026年5月策定)が、地域への説明事項と住民の懸念への対応指針の両方に排熱を含むことも紹介しています。第7次エネルギー基本計画(令和7年2月)は、効率的な熱供給の推進として「廃熱等のエネルギーの面的利用」を挙げています(データセンターに限らない記述です)。
日野市の環境審議会は、市内(日野台)のデータセンター開発事業者への提案(案)を令和8年2月27日(令和7年度第4回)に審議し、その排熱の項目で、排熱情報の開示・周囲への熱の排出を抑える計画・廃熱利用の検討を要請事項としています。同審議会の議事要旨録では、要請事項は強制できない項目だと説明されています。
主体・場所・年・出典を公的資料で確かめられた国内の取組として、北海道美唄市の例を紹介します。あわせて、東京都の2つの事業の採択結果を、発表に書かれた内容のまま紹介します(実証場所は発表に書かれていません)。
北海道美唄市の雪の冷熱とデータセンター排熱の構想
北海道経済産業局の「北国の省エネ・新エネ大賞」の優秀賞(2024年1月23日発表)を受けた取組です。受賞の資料によると、美唄市が除排雪した雪を空知工業団地に積み、その冷熱でデータセンターを冷やし、データセンターから出るIT機器の廃熱を、植物工場や陸上養殖など通年型の食料生産施設の暖房に使う構想です。資料では「データセンター実証試験施設」「地域循環事業を進行中」と書かれており、構想・実証の段階の取組です。北海道経済部の資料(2024年5月21日)も、美唄市のデータセンターで排熱を養殖などに使っている例を紹介しています(温度と、取組を始めた年の記載はありません)。
東京都 産業労働局の事業の採択結果(2026年7月16日発表)
3社共同の事業で、GPUサーバの冷却に対応した蒸発冷却システムを開発し、廃熱を高温で直接回収する技術の確立を目指します。回収した廃熱を、併設施設の冷房熱源・近隣の温浴施設・地域熱供給などで利用するシステムの実用化などを検証するとしています(いずれも発表に書かれた事業の目標・内容で、実施済みの結果ではありません)。事業期間は令和8年7月16日から令和10年3月31日まで。実証場所(データセンターの所在地)は発表に書かれていません。
東京都 環境局の協業プロジェクトの採択結果(2026年10月6日発表)
採択は3組です。①データセンターの排熱を陸上養殖の加温に使い、バナメイエビを飼育する実証、②低温の排熱でも発電する素子とセンサーを一体にした試作品の実証、③鉄道高架下にあるモジュール型の小規模データセンターの排熱を回収してサーバーの冷却に再利用し、将来は周辺施設への温水・冷水の供給を目指す実証。実施期間は3組とも協定締結日から令和10年3月31日まで。実証場所の具体的な地点は書かれていません。
冷却方式と資料で違います。空冷は平均25〜35°C(ReUseHeat D1.4)や通常35〜40°C(Pärssinen ほかの論文)、液冷は一般に50〜60°C(ReUseHeat D1.4)や40〜80°C(IEA「Energy and AI」)とされています。液浸冷却については、ASHRAE TC 9.9の白書は利点として高い熱回収を挙げていますが、温度の数値は示していません。
いいえ。ASHRAEの液冷の水温クラス(W17・W27・W32・W40・W45・W+)の数字は、サーバーへ送る施設側の水(供給側)の温度の上限(°C)で、排熱(戻り)の温度ではありません(米DOEの指針・ASHRAE TC 9.9の白書「Water-Cooled Servers」による)。
Data Center Metrics Task Forceの推奨文書(2011年)は、データセンターの外で使った排熱はPUEを変えないとしています。JRCの指針(2025年)も、排熱を隣接する事務所などの暖房に回しても、データセンター自身のエネルギー消費は減らないとしています。EUの制度では、境界の外で再利用された排熱をERF(エネルギー再利用率)で数えます。
2026年4月10日策定のデータセンター業の措置のガイドラインでは、排熱は取組の表で、望ましい取組(設計と付帯設備の選定)と、PUE 1.3以下の基準(データセンター業で年度1,500kl以上の事業者が2029年度以降に新設するデータセンターが対象・除外あり)を満たすための取組(運用上の工夫を検討すること)として書かれています。2026年10月8日時点で確認した範囲では、データセンター業の措置の中で、排熱の利用を義務・基準・指標として定めた規定は見つかっていません。工場等一般の「判断の基準」(改正の記載が令和5年3月31日までの掲載版)には、廃熱の把握や回収利用の規定があります(データセンターへの当てはめは確認できていません)。
EUのエネルギー効率化指令 (EU) 2023/1791は、総定格エネルギー入力が1MWを超えるデータセンターが排熱を利用するか他の排熱回収用途に回すことを加盟国が確保するよう定め、技術的または経済的に実行不可能と示せた場合を例外としています。ドイツのエネルギー効率法は、非冗長の電気接続容量が300kW以上の施設のうち、2026年7月1日以降に運転を始めるものに、PUE 1.2以下と再利用エネルギー比率10%以上(2027年7月1日以降の運転開始は計画値で15%、2028年7月1日以降は計画値で20%)を、運転開始から遅くとも2年後までに年平均で満たすよう求めています。運転開始後の事情で運営者の責任なく満たせなくなった場合など、法律の定める場合を運営者が示せば、再利用率の要件は適用されません。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-10-13
排熱の利用とは別に、データセンターの電気代と上昇リスクは、シミュレーターで自社の条件をもとに試算できます。