契約電力の超過防止に使うデマンド監視装置の種類と、警報型・制御型・クラウド型の比較、高圧/低圧別・規模別の選び方、設置要件、BEMS連携、補助金活用まで実務目線で整理します。数値は前提を置いた目安です。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
このページでわかること
デマンド監視装置は、30分単位の電力需要を測定し、契約電力を超過しそうなときに警報を出したり、制御信号を出したりする装置です。契約電力超過はペナルティ的な料金改定につながるため、多くの工場・ビルで導入されています。
機能は単純な警報ブザーから、AI予測・クラウド蓄積・メール通知・空調自動制御まで幅広いです。
高圧・特別高圧で採用される実量制(デマンド制)では、契約電力が過去1年間の各月の最大デマンド(30分ごとの平均需要電力の最大値)の最大値で決まります。一度ピークを更新すると、その値が以後1年間の契約電力となり、基本料金が上がってしまいます。だからこそ、ピークを未然に抑えるデマンド監視装置の役割が重要になります(出典: 省エネルギーセンター / 資源エネルギー庁 等から整理・2025年時点)。
電気料金の基本料金は『契約電力 × 基本料金単価 × 力率割引』で決まります。契約電力が下がれば基本料金も下がるため、デマンド管理によるピーク抑制は、電力量(kWh)の削減とは別に、基本料金の削減という効果を持ちます。
デマンド監視装置は、30分の計測時限の途中で『このペースで使い続けると目標値(デマンド目標)を超える』と予測したときに警報・制御を行います。つまり、時限が終わる前に手を打つことでピークの確定を防ぐ仕組みです。目標値を厳しく設定するほど削減効果は大きくなりますが、警報・制御の頻度が増えて現場運用の負担が高まるため、現場のピークの出方に合わせた設定が肝心です。
燃料費調整や再エネ賦課金など料金全体の構造については、 燃料費調整制度の解説も併せて参照してください。
デマンド監視装置は、機能の観点から大きく3タイプに分けられます。
これらは排他的ではなく、クラウド型でかつ制御機能を持つ製品もあります。自社の人員体制(常駐者の有無)、拠点数、データ活用志向に応じて組み合わせを選びます(出典: メーカー一般仕様 / 省エネルギーセンター 等から整理・2025年時点)。
単機能型は、装置単体で予測計算と警報を行う方式で、導入費用は10〜30万円程度と安価です。中小工場・店舗に向いています。
クラウド連携型は、データをクラウドに蓄積し、複数拠点を統合管理、他システムとの連携(BEMS・EMS)が可能です。導入費用は数十万〜数百万円、月額料金が発生します。複数拠点持ち・データ活用志向の企業向けです。
選定では、初期費用だけでなく、月額料金・保守費・通信費を含めた数年間の総保有コスト(TCO)で比較することが重要です。単機能型は初期費用が安い一方で多拠点管理ができず、拠点が増えると管理工数がかさみます。クラウド型は月額が発生する反面、多拠点を一元管理でき、データ活用による追加の省エネ施策につなげやすい構造です。
①予測精度(何分前に警報が出るか)、②外部制御連携(空調・生産設備の自動制御可否)、③複数拠点統合可否、④オープンデータ形式(CSV・API)の4点を確認します。
工場の場合は生産ライン制御との連携が可否が重要で、オフィスビルの場合は空調制御との連携が優先度高い傾向があります。
これに加えて、⑤通知手段(ブザー・メール・LINE・スマホアプリ)、⑥データの保存期間と分析機能、⑦既設のキュービクル・計測機器との接続互換性、⑧サポート・保守体制、も確認しておくと選定の精度が上がります。とくに⑦は追加工事の有無に直結するため、現地調査の段階で受変電設備の仕様を確認することが重要です。
【ベーシック型(10〜30万円)】:30分デマンド計測、予測警報、パルス出力。単体運用、複数拠点統合不可。
【クラウド連携型(50〜150万円+月額1〜3万円)】:複数拠点統合、AI需要予測、メール・LINE通知、API連携。
【フルBEMS統合型(300万円〜)】:空調・照明の自動制御、需給調整市場連携、AIピーク最適化、詳細レポート。
自社の契約規模・拠点数・運用担当者の人数で選定範囲が決まります。
| タイプ | 費用目安 | 自動制御 | 多拠点統合 | 向く事業者 |
|---|---|---|---|---|
| ベーシック型 | 10〜30万円 | ×(警報のみ) | × | 中小工場・店舗 |
| クラウド連携型 | 50〜150万円+月額 | △(製品による) | ○ | 多拠点・データ活用志向 |
| フルBEMS統合型 | 300万円〜 | ○ | ○ | 大規模工場・ビル |
※ 費用はメーカー一般仕様から整理した目安(2025年時点)。実際の費用は構成・拠点数で変動します。
契約区分と事業規模によって、現実的な装置の選択肢は変わります。以下は前提を置いたシナリオ例です。
小規模(高圧50〜100kW・1拠点)
ベーシックな警報型から開始。常駐者がいればまず手動対応で効果を確認。
投資を抑えつつデマンド管理の習慣を定着させる段階。
中規模(高圧数百kW・無人運転あり)
制御型で空調等を自動制御。夜間・休日の無人時でもピークを抑制。
制御対象の優先順位を設計し、生産・快適性への影響を最小化。
大規模・多拠点(特別高圧含む)
クラウド型/フルBEMS統合で多拠点を一元監視・分析。
AI予測・需給調整市場連携も視野に、全社で最適化。
低圧電灯など小規模契約では、デマンド管理の費用対効果が出にくいことが多いため、まずは契約区分と料金体系を確認し、装置導入の要否そのものを見極めることが先決です(出典: 省エネルギーセンター / 資源エネルギー庁 等から整理・2025年時点)。
一般的な設置の流れは、(1)現地調査(受変電設備・計測機器・通信環境の確認)、(2)装置・センサーの設置工事、(3)デマンド目標値・制御設定の初期設定、(4)試運転・チューニング、です。受変電設備(キュービクル)の計器用変成器(CT・VT)からパルス信号や計測値を取り込み、装置に接続します。
工事は電気工事士による施工が必要で、停電を伴う作業が発生する場合があります。クラウド型では携帯回線やLANなどの通信回線の確保が、制御型では空調・生産設備側に制御を受け入れる外部接点や通信インターフェースが必要です。既設設備の仕様により追加工事の範囲が変わるため、事前の現地調査が重要です(出典: メーカー一般仕様 / 省エネルギーセンター 等から整理・2025年時点)。
デマンド監視装置は、それ単体でも契約電力の削減に役立ちますが、BEMS(ビルエネルギー管理システム)やFEMS(工場エネルギー管理システム)と連携させることで、ピーク管理にとどまらない全体最適が可能になります。30分値の計測データを見える化・分析の基盤として活用し、空調・照明・生産設備の運用改善や自動制御につなげる流れです。
連携の前提として、装置がCSV・API等のオープンなデータ形式に対応していることが重要です。将来BEMS導入を検討している場合は、データ連携の拡張性を選定基準に加えておくと、後々の投資が無駄になりません。BEMS/FEMSの全体像は BEMS/FEMS/EMSの違い、AIによる最適化は AIによる電力最適化の実務も参考になります。
デマンド監視・制御に関わる設備は、省エネ補助金(資源エネルギー庁・SIIが執行)や中小企業向けのIT導入補助金等の対象になる場合があります。補助率は1/2〜2/3が一般的です。BEMSと一体で導入する場合は、より大きな補助の枠組みに乗せられることもあります。
補助金は対象設備・要件・公募時期が制度ごと・年度ごとに異なります。採択・交付決定が前提のため、補助なしの場合の費用対効果も併せて確認しておくのが堅実です。制度の詳細は BEMS/FEMS補助金の解説、 SII省エネ補助金を参照してください(出典: SII / 資源エネルギー庁 / 中小企業庁 等から整理・2025年時点)。
デマンド監視装置の導入で効果が出ないケースには、共通する落とし穴があります。
とくに最後の点は重要で、デマンドを抑えても契約電力を見直さなければ基本料金は下がりません。装置導入と契約見直しはセットで進めます(出典: 省エネルギーセンター 等から整理・2025年時点)。
デマンド監視装置の導入には、省エネ補助金(資源エネルギー庁)や中小企業向けのIT導入補助金が活用可能です。補助率は1/2〜2/3が一般的です。
省エネ法定期報告では、デマンド管理の実績(契約電力推移)も記載事項となるため、装置導入と社内報告体制を一体で整備します。
Q. デマンド監視装置とは何をする装置ですか?
A. デマンド監視装置(デマンドコントローラー)は、30分単位で電力需要を計測し、契約電力を超過しそうなときに警報を出したり、空調・生産設備に制御信号を出してピークを抑えたりする装置です。高圧・特別高圧の契約電力(最大需要電力)は、過去1年間の各月の最大デマンドの最大値で決まるため、ピークを一度でも超えると以後1年間の基本料金が上がります。これを未然に防ぐのがデマンド監視装置の役割です(出典: 省エネルギーセンター / 資源エネルギー庁 等から整理・2025年時点)。
Q. 警報型と制御型はどう違いますか?
A. 警報型は、デマンドが目標値に近づくとブザーやランプ、メール・LINE等で警報を出し、人が手動で設備を止める方式です。安価で導入しやすい反面、対応する人が常駐していないと効果が出ません。制御型は、警報に加えて空調・照明・生産設備などに自動で制御信号を出し、人手を介さずにピークを抑える方式です。人手不足の現場や夜間・休日の無人運転がある現場では制御型が有効ですが、制御対象設備の運用に支障が出ないよう優先順位設定が重要です(出典: 省エネルギーセンター / メーカー一般仕様から整理・2025年時点)。
Q. クラウド型を選ぶメリットは何ですか?
A. クラウド型は、計測データをクラウドに蓄積し、複数拠点を統合管理できる点が最大のメリットです。スマートフォンやPCからどこでも需要状況を確認でき、AI需要予測やメール・LINE通知、CSV/API連携によるBEMS・EMSとのデータ連携も可能です。本社で多拠点のデマンドを一元監視したい企業や、データを分析して省エネ施策につなげたい企業に向きます。一方、初期費用に加えて月額料金(クラウド利用料)が継続的に発生する点は、ランニングコストとして見込む必要があります。
Q. 高圧と低圧で選ぶ装置は違いますか?
A. 違います。高圧(契約電力50kW以上)はデマンド契約のため、契約電力の超過が基本料金に直結し、デマンド監視装置の費用対効果が出やすい区分です。一般的にこの区分が主な導入対象になります。低圧の中でも『低圧電力』はデマンド的な料金体系を持つ場合があり、簡易な監視が有効なケースがあります。一方『低圧電灯』など小規模契約では効果が限定的なことが多く、まずは契約区分と料金体系を確認したうえで装置の要否を判断します(出典: 省エネルギーセンター / 資源エネルギー庁 等から整理・2025年時点)。
Q. デマンド監視装置でどのくらい契約電力を削減できますか?
A. 現場のピークの出方と運用次第ですが、ピークカットによって最大需要を抑えられれば、契約電力(基本料金)の引き下げにつながります。一般に、ピークが特定の時間帯や設備に集中している現場ほど削減余地が大きく、見える化と運用改善だけでも一定の効果が見込めます。制御型で自動的にピークを抑えれば、人手に頼らず安定的に削減できます。削減幅は現場ごとに大きく異なるため、過去のデマンド実績データを基に保守的に見積もるのが堅実です(出典: 省エネルギーセンター 等から整理・2025年時点)。
Q. 設置にあたって必要な要件や工事は何ですか?
A. 一般的には、受変電設備(キュービクル)の計器用変成器(CT・VT)からパルス信号や計測値を取り込み、デマンド監視装置に接続します。設置には電気工事士による工事が必要で、停電を伴う作業が発生する場合もあります。クラウド型では通信回線(携帯回線・LAN等)の確保が、制御型では空調・生産設備側に制御を受け入れる仕組み(外部接点・通信インターフェース)が必要です。既設設備の仕様によって追加工事の範囲が変わるため、事前に現地調査を行うのが標準です(出典: メーカー一般仕様 / 省エネルギーセンター 等から整理・2025年時点)。
Q. デマンド監視装置は補助金の対象になりますか?
A. なり得ます。省エネ補助金(資源エネルギー庁・SIIが執行)や中小企業向けのIT導入補助金等で、デマンド監視・制御に関わる設備が対象になる場合があります。補助率は1/2〜2/3が一般的ですが、対象設備・要件・公募時期は制度ごとに異なり、年度で変わります。BEMSと一体で導入する場合はより大きな補助の枠組みに乗せられることもあります。採択・交付決定が前提のため、補助なしの場合の費用対効果も併せて確認しておくのが堅実です(出典: SII / 資源エネルギー庁 / 中小企業庁 等から整理・2025年時点)。
Q. 装置選定や契約電力の見直しはどこに相談すればよいですか?
A. デマンド監視装置の選定は、契約区分・料金体系、現場のピークの出方、制御対象設備の運用制約など、複数の要素を踏まえた判断が必要です。まずシミュレーターで自社の電気料金と契約電力の負担感を確認し、装置の種類選定・BEMS連携・補助金活用を一体で設計するには、電力契約と省エネ実務を理解した中立的な専門家に相談するのが安全です。装置導入と並行して電力契約そのものの見直しを行うことで、コスト削減効果を高められる場合があります。
本記事は上記の公的資料・公式サイト・メーカー一般仕様を参考に編集しています。掲載する費用・補助率・削減効果は前提を置いた目安であり、最新の制度・数値・製品仕様は各出典元で必ずご確認ください。
このテーマの理解を深めたら、シミュレーターで自社の電気料金リスクを確認しましょう。
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