法人の電力契約は、受電する電圧の高さによって「低圧」「高圧」「特別高圧」に区分されています。電力会社との契約区分が変わると、適用される料金メニューの構造も変わります。契約区分を正しく理解することは、法人が電気料金を管理・比較するための基礎知識です。
このページでは、特に法人が多く該当する「高圧」と「特別高圧」の違いを、受電電圧・料金構造・適用施設の観点から整理します。
このページでわかること
日本の電力供給では、使用規模(契約電力)と受電する電圧によって、以下の3つの区分に分かれます。
低圧
100V・200Vで受電。契約電力50kW未満が目安。一般家庭・小規模事業所が対象。
高圧
6,600Vで受電。契約電力50kW以上が目安。中規模以上の工場・商業施設・病院など。
特別高圧
20kV以上で受電。大規模工場・データセンター・鉄道など大口需要家が対象。
受電電圧が高くなるほど、電力会社の送電・変電コストが下がり、1kWhあたりの単価が低くなる傾向があります。ただし、高電圧を受け入れるための受電設備(変圧器・キュービクルなど)を需要家側で保有・維持するコストが発生します。
| 項目 | 高圧 | 特別高圧 |
|---|---|---|
| 受電電圧 | 6,600V(6.6kV) | 20,000V・60,000V・140,000V以上 |
| 契約電力の目安 | 50kW以上〜数千kW程度 | 概ね2,000kW以上 |
| 変圧器(受電設備) | 需要家側で設置(キュービクルなど) | 大型の変電設備が必要 |
| 適用される主な施設 | 工場、スーパー、病院、学校、中規模ビル | 大規模工場、データセンター、大型商業施設、鉄道 |
| 単価の傾向 | 低圧より安い | 高圧より安い(スケールメリット) |
| 料金構造 | 基本料金(契約電力kW)+電力量料金(kWh) | 基本料金(契約電力kW)+電力量料金(kWh)※単価水準が異なる |
高圧・特別高圧の電気料金は、基本的に「基本料金」と「電力量料金」の2つの要素で構成されます。
基本料金(円/kW・月)
契約電力(kW)または最大需要電力(デマンド)に対して課される固定的な費用。電力をほとんど使わなくても発生します。デマンドが高いほど基本料金が増加します。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
電力量料金(円/kWh)
実際に使用した電力量(kWh)に単価をかけた従量課金。燃料費調整額・再エネ賦課金・容量拠出金相当が加算されます。
高圧・特別高圧では、力率(電力の使用効率)によって基本料金が割引または割増されます。力率が高いほど基本料金が安くなります。
力率の詳細は 力率とは何か で確認できます。
高圧・特別高圧契約を管理している担当者が実務上で確認すべき主なポイントを示します。
高圧・特別高圧の見積書を比較する際は、以下の点に注意することで正確な比較ができます。
高圧契約の見直しポイントは 高圧契約の見直しで確認したいこと で、特別高圧は 特別高圧契約の見直しで確認したいこと でそれぞれ確認できます。
| 比較項目 | 高圧(500kW・5万kWh/月) | 特別高圧(3,000kW・150万kWh/月) |
|---|---|---|
| 基本料金単価 | 1,500〜1,900円/kW | 1,200〜1,600円/kW |
| 電力量料金単価 | 15〜20円/kWh | 12〜18円/kWh |
| 月額合計目安 | 約160〜195万円 | 約2,400〜4,400万円 |
| 1円/kWh差の年間影響 | ±60万円 | ±1,800万円 |
| 受電設備費用 | 需要家負担(キュービクル) | 需要家負担(特高受電設備・変圧器) |
高圧は受電電圧が6,600V・契約電力50kW以上、特別高圧は受電電圧が20,000V(20kV)以上・契約電力2,000kW以上が目安です。特別高圧は大規模工場やデータセンターなどが対象で、高圧より単価が低い傾向があります。
特別高圧に移行すると単価が下がる可能性がありますが、自家用変電設備の設置費用や維持費が必要になります。電力コストの削減効果と設備投資のトレードオフを慎重に検討する必要があります。
一般的に契約電力2,000kW以上が目安ですが、エリアや電力会社によって異なります。受電電圧の変更には電気工作物の設置届出が必要で、専門家への相談が推奨されます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-10
力率とは何か
高圧・特別高圧料金に影響する力率の仕組みと確認方法。
高圧契約の見直しで確認したいこと
高圧需要家向けの料金構造と契約条件の着眼点。
特別高圧契約の見直しで確認したいこと
大規模契約の比較と注意点。
高圧・特別高圧で市場連動を考えるときの注意点
大口需要家が市場連動プランを選ぶ際の注意点。
法人の電気料金の内訳
高圧・特別高圧を含む電気料金の全構成要素。
法人向け電気料金見積書の見方
高圧・特別高圧の見積書を正しく読む方法。
市場連動プランと固定プランの違い
契約区分を理解したうえで、プランの選択軸を整理できます。
法人向け電気料金は高止まりしているのか
高圧・特別高圧の単価推移の実態をデータで確認できます。
契約電力・使用量・プランタイプをもとに、シミュレーターで年間コストを試算できます。
ここまで読んで基礎がつかめたら、次は自社の請求書を手元にシミュレーターで現状診断してみましょう。数値を前にしても判断に迷う論点があれば、一般社団法人エネルギー情報センターへ無料でご相談いただけます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。