JEPXの価格は、「電気の相場」として一言で語られることがあります。ただ、実際には、単純に需要と供給だけで決まっているわけではありません。
暑い日や寒い日には需要が増えやすく、太陽光や風力の発電量が変われば供給側の条件も変わります。そこに火力発電の燃料価格、 時間帯ごとの需要差、設備の稼働状況、送電制約などが重なることで、電気の価格は大きく動くことがあります。
基本は需給のバランスです。需要が強く、すぐ使える供給余力が小さいほど価格は上がりやすく、余力があるほど価格は落ち着きやすくなります。 ただし、電気は保存が難しく、30分単位で同時同量を合わせる必要があるため、価格は平均値よりも「その時間帯の厳しさ」に反応しやすい特徴があります。
需給だけを見ると抽象的になりがちですが、実際には「どの需要が増えたのか」「どの電源が使いにくかったのか」で価格の上がり方は変わります。 同じ需要増でも、再エネがよく出ている日と、火力依存が強まる日では価格の出方が異なります。
夏冬の昼夕方は冷暖房需要が膨らみやすく、価格が上がりやすい時間帯です。特に太陽光が落ち始める夕方は、需要が高いまま再エネ出力が低下し、 火力で埋める比率が高まりやすくなります。逆に需要が低く再エネ出力が高い時間帯は、価格が落ち着くことがあります。
日本では火力発電が需給調整の中心を担う場面が多いため、LNGや石炭などの燃料価格が上がると、火力の発電コストが上昇し、 結果として市場価格の上昇圧力になります。どの電源がその時間帯の追加供給を担うかで、価格の重みづけも変わります。
ここは「燃料価格が上がれば必ず同じ幅でJEPXが上がる」という単純な話ではありません。需要水準、再エネ出力、使える火力の量、 系統状況が同時に影響するため、燃料高は価格形成の重要な要因の一つとして見るのが実務的です。
| 要因 | 価格が動きやすい方向 | どういう場面で起こるか |
|---|---|---|
| 需要の増加 | 上がりやすい | 猛暑・厳冬、平日昼間、操業増などで使用量が膨らむ場面 |
| 再エネ出力の低下 | 上がりやすい | 日射が弱い、風が弱い、夕方に太陽光が落ちる場面 |
| 燃料価格の上昇 | 上がりやすい | LNGや石炭など火力燃料の調達コストが上がる場面 |
| 発電設備の停止・供給余力低下 | 上がりやすい | 定期点検、トラブル、需給ひっ迫で使える電源が少ない場面 |
| 系統制約・エリア差 | エリアごとに差が出やすい | 送電制約やエリア間連系の限界で地域別の価格差が広がる場面 |
| 需要が弱く供給余力がある | 下がりやすい | 中間期、需要が落ち着き再エネ出力も高い場面 |
需給が逼迫すると、わずかな需給差でも価格が大きく動きやすくなります。また、送電線の制約やエリア間連系の余力が限られると、 地域ごとの価格差が開くことがあります。法人の読者にとっては、「全国で同じ値動き」とは限らない点を押さえておくと理解しやすくなります。
下のグラフは、JEPXスポット市場のシステムプライス年度平均の推移です。短期高騰の山谷をそのまま示すものではありませんが、 2021年以降に価格変動が大きくなったことや、2022年度の高止まりが市場環境に与えた影響を読み取る補助線になります。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
出典: JEPX公開値ベースのシステムプライス年度平均。単位は円/kWh。図は説明用に年度平均へ整理したもので、短期の高騰局面は別途日次・月次で確認が必要です。
「なぜ今日は高いのか」を考えるときは、単に需要増だけでなく、燃料、再エネ、供給余力、エリア差を重ねて見ることが大切です。 市場連動メニューではこの変動が直接見えやすく、固定型でも更新時の調達条件に反映されることがあります。
JEPX価格は需給バランスを基本に、再エネ出力、火力の稼働状況、燃料価格、系統制約が複合的に影響して決まります。需要が供給余力に対して逼迫するほど価格は上がりやすく、30分単位で同時同量を合わせる必要があるため「その時間帯の厳しさ」に敏感に反応します。
夏冬の昼夕方は冷暖房需要で価格が上がりやすくなります。特に太陽光が落ち始める夕方は、需要が高いまま再エネ出力が低下し火力で埋める比率が高まるため高値になります。逆に、需要が低く再エネ出力が高い時間帯は価格が落ち着きます。
日本では火力発電が需給調整の中心を担う場面が多いため、LNGや石炭などの燃料価格上昇は市場価格の上昇圧力になります。ただし、需要水準・再エネ出力・使える火力の量・系統状況が同時に影響するため、燃料高だけで価格が決まるわけではありません。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-03-12
価格形成の背景を押さえたら、燃料調達や市場以外の調達手段に進むと理解が深まります。
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