JEPX(日本卸電力取引所)は、発電事業者や小売電気事業者などが電気を売買する日本唯一の卸電力市場です。 2003 年に設立され、電力自由化の拡大とともに日本の電力取引の中核機能を担っています。
このページでは、JEPX の基本機能、一日前市場・時間前市場の役割、2016 年以降の価格推移、 電力会社の調達実務、そして法人料金への波及までを、実データとグラフで整理します。
JEPX(Japan Electric Power Exchange、日本卸電力取引所)は、発電事業者と小売電気事業者などが電気を売買する市場です。 電気は大量にためておきにくく、受渡時刻ごとに需給を合わせる必要があるため、卸市場は調達実務の中核的な機能を持ちます。
JEPX の価格動向は、法人の電気料金の背景を読む上で最も重要な指標の一つです。 2016 年度以降の年度平均システムプライスは次のように推移してきました。
出典: 日本卸電力取引所(JEPX)公表値。2022 年度は 20.37 円/kWh と過去最高。
| 市場名 | いつ使うか | 何を調整するか | 主な使い方 |
|---|---|---|---|
| 一日前市場(スポット市場) | 受渡前日に翌日の30分単位を売買するとき | 翌日の需要見込みに対する主な調達量 | 不足見込みを前日に埋める、余剰見込みを売却する |
| 時間前市場 | 当日に需要予測や発電計画のずれを修正するとき | 当日発生した過不足や見込み差 | 天候急変や需要変動を受けた追加調整 |
JEPX スポット市場の価格は、売り入札と買い入札を束ねて作られる需給曲線の交点(ブラインド・シングルプライス方式)で決まります。 時間帯(30 分コマ)ごとに全国一律の「システムプライス」が決まり、 送電制約が発生した時間帯はエリアごとに「エリアプライス」が分離します。
送電制約がない場合の全国一律価格。市場の基準価格。
北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の 9 エリアごとの価格。送電制約がある時間帯に分離する。
典型的には、翌日の需要に対して不足しそうな量を一日前市場で確保し、当日になって気温や再エネ出力が変わった場合に時間前市場で微調整します。
1. ベース調達
自社発電、相対契約、長期契約などで基礎量を確保する
2. 翌日計画
需要見込みに対して一日前市場で不足や余剰を調整する
3. 当日修正
時間前市場で天候や需要変動によるずれを微調整する
4. 小売供給
最終的な調達コストと需給バランスが料金設計の背景になる
JEPXは柔軟性が高い反面、需給が引き締まった局面では価格が大きく動きます。 2021年1月、2022年度の状況では、全量を市場に依存していた新電力の多くが経営危機に陥りました。 そのため、多くの電力会社は市場の機動性を活かしつつ、市場依存度が高くなりすぎないよう調達ポートフォリオを設計しています。
FY2025のコマあたり平均約定量は1,624万kWh、年間総約定量は約2,845億kWhに達しています。 FY2010の31万kWh/コマから50倍超に成長しており、電力小売自由化以降、JEPXの約定量は急増し、 市場の流動性と価格発見機能が大幅に向上しました。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
| 年度 | コマ平均約定量 | 年度平均価格 | 主なトピック |
|---|---|---|---|
| 2010年度 | 31万kWh/コマ | 8.38円/kWh | 市場黎明期 |
| 2016年度 | 131万kWh/コマ | 8.46円/kWh | 電力小売全面自由化 |
| 2019年度 | 1665万kWh/コマ | 7.93円/kWh | 過去最安値(7.93円) |
| 2022年度 | 1818万kWh/コマ | 20.41円/kWh | ウクライナ危機・過去最高値(20.41円) |
| 2025年度 | 1624万kWh/コマ | 11.06円/kWh | 約定量50倍超・安定化傾向 |
出典: 日本卸電力取引所(JEPX)公表データを集計。
JEPX(日本卸電力取引所)は、発電事業者と小売電気事業者などが電気を売買する日本唯一の卸電力市場です。2003年に設立され、30分単位の電気を取引対象とし、年間3,000〜4,000億kWh規模の取引が行われています。
一日前市場(スポット市場)は翌日の30分単位の電気を前日に売買する市場で、主な調達量の確保に使われます。時間前市場は当日に需要予測や発電計画のずれを修正するための市場で、天候急変などへの追加調整に使われます。
市場連動プランでは JEPX 価格が直接請求単価に反映されます。固定単価プランでも、電力会社の調達コストとして間接的に影響し、契約更新時の単価に反映されることがあります。2022年度にはJEPX年度平均が20円/kWhを超え、多くの法人で料金が上昇しました。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-03-11
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この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
JEPXの次は価格形成を見ると、なぜ同じ日でも価格差が出るのか、なぜ高騰時に影響が大きいのかが読みやすくなります。
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