当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
MUNICIPALITY / 自治体・公共向け
近年増える不落への実務対応
電力市場の高止まりや新電力の撤退を背景に、自治体の電力調達入札が「不調(不落)」となるケースが急増しています。 入札不調は単なる調達の失敗ではなく、最終保障供給への移行リスク、予算超過、議会対応など連鎖的な課題をはらみます。 本ページでは財政・総務・施設管理担当者が迷わず動けるよう、法的根拠から実務手順・議会説明の骨子までを体系的に解説します。
2022年以降、ロシアによるウクライナ侵攻、LNG調達難、円安の同時発生により、日本の電力市場は構造的な高コスト時代へ突入しました。 一方で多くの自治体の予定価格は旧来の市場環境を前提とした単価設定のままであったため、 市場単価が予定価格を上回る「予定価格超過不落」が頻発しています。 さらに新電力各社の自治体向け入札からの撤退により「参加者ゼロの不成立」も珍しくありません。
地方自治法第234条は、契約の原則として一般競争入札を定めつつ、 「政令で定める場合においては指名競争入札・随意契約・せり売りによることができる」と規定しています。 入札不調後の随意契約は、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(競争入札に適しない場合)または 第5号(緊急の必要)が根拠となります。
重要:随意契約の要件
随意契約を締結するには「競争に付することが不利と認められるとき」の事実認定が必要です。 単に「入札が面倒」「高くなりたくない」は要件を満たしません。 不調の客観的事実(開札調書・参加者ゼロの記録)を必ず保存してください。
不調が確定してから次の契約締結までに自治体担当者が行う6つのステップを示します。 供給切れまでの日数が短い場合はSTEP 2と3を並行して進めてください。
STEP 1
不調・不落の確認と記録
入札参加者ゼロ、または予定価格超過を確認。開札調書に不調理由を明記し、契約課・財政課へ速報する。
STEP 2
現行供給事業者への継続供給打診
現在の供給事業者に対し、暫定的な継続供給が可能かヒアリング。供給条件(単価・期間)を文書で確認する。
STEP 3
地方自治法234条に基づく随意契約の検討
競争に適しない場合(不落後再入札でも成立しない場合)は随意契約が可能。法令根拠と見積書取得先(1者以上)を整理する。
STEP 4
見積合わせ・価格交渉
複数社へ見積依頼(可能な範囲で)。近隣自治体の契約単価や電力市況を参考に価格の妥当性を確認する。
STEP 5
契約手続き・議会報告
随意契約理由書を作成し、内部決裁を取得。議会への報告基準額を超える場合は議決または委員会報告が必要。
STEP 6
次回入札への改善策立案
入札仕様の見直し(電力量の分割発注、複数年契約、変動料金条件の緩和)を検討し、次年度入札計画を策定する。
不調の状況によって適用する法令根拠と対応が異なります。下表で自団体の状況に合った対応を確認してください。
| 状況 | 法的根拠 | 対応方針 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 1回目入札で不調 | 自治法施行令167条の2第1項第2号 | 再入札(条件変更可)または随意契約 | 再入札でも不調の場合は随意契約へ移行が一般的 |
| 再入札でも不調 | 同上(競争に適しない場合) | 1者随意契約 | 見積合わせは1者でも可。理由書必須 |
| 供給事業者が1社のみ | 同上(競争相手がいない) | 随意契約(特命) | 独占・寡占エリアや離島等で発生しやすい |
| 緊急(供給切れが迫る) | 自治法施行令167条の2第1項第5号(緊急の必要) | 緊急随意契約 | 事後の議会説明と随契理由書が必須 |
入札不調後に契約締結が間に合わない場合、自動的に最終保障供給(最終保障料金)へ移行します。 最終保障供給の単価は標準的な低圧契約と比べて大幅に高く、公共施設の電気代を押し上げる要因となります。 契約満了の90日前には入札スケジュールを見直し、不調リスクをあらかじめ財政担当に伝えてください。
詳細は 最終保障供給に入りそうなときの対応手順 を参照してください。
随意契約への移行は、適切に説明しなければ「競争回避」との批判を受ける可能性があります。 以下の骨子で説明資料を構成することを推奨します。
政令市・中核市・一般市・町村では、入札不調時に動かせるリソースと制約が異なります。
中規模市(人口10万人規模):年間電力使用量1,000万kWhの一般競争入札が不調となり、随意契約で旧契約事業者と単年度契約を締結。 翌年度は仕様を3エリアに分割し再入札した結果、2社から入札参加を得て契約が成立した。
町村(人口2万人規模):電力供給可能な事業者が実質1社のみの地域で、毎年度特命随意契約を実施。 包括外部監査で契約の適正性を確認し、指摘なし。見積書の取得と理由書の充実で対応。
随意契約の理由書作成・予定価格の見直し・分割発注設計など、内部対応が難しい場合は エネルギー調達の専門家への相談をご検討ください。 シミュレーターを活用して自団体の電力コスト水準を把握した上でご相談いただくとスムーズです。
A.原則として競争入札(一般入札・指名入札・プロポーザル)で決定します。地方自治法・契約規則に基づき、透明性・公正性が求められます。
A.①予算年度に縛られる、②議会承認が必要なケースあり、③単年度・複数年度契約の選択、④価格変動リスクへの対応制約、⑤入札仕様書作成の専門性、などです。
A.①入札仕様書の最適化(過度な制約を排除)、②複数年契約の活用、③省エネ設備導入、④施設別の使用パターン把握、⑤一括契約による調達力強化、の5点です。
A.経営安定性・供給実績の確認、財務健全性指標の確認、撤退時の対応条項を契約に盛り込むことで、リスクを管理できます。複数社の比較検討が必須です。
A.①コスト削減根拠データ、②選定プロセスの透明性、③供給安定性の根拠、④環境価値(再エネ比率)、⑤緊急時対応、を分かりやすく整理して説明します。
2022 年以降のロシア・ウクライナ情勢、LNG 調達難、円安の同時発生で電力市況が構造的高コスト時代に突入し、多くの自治体の予定価格が市場実勢と大きく乖離したことが主因です。さらに新電力各社が固定価格入札から相次いで撤退(スポット連動型のみ提示)したことで、参加者ゼロの不成立も急増しました。離島・過疎地域では参加可能事業者が 1 社以下のケースもあります。
地方自治法第234条と施行令第167条の2第1項第2号(競争入札に適しない場合)または第5号(緊急の必要)が随意契約の根拠となります。実務は STEP1 不調確認 → STEP2 現行供給事業者打診 → STEP3 随契検討 → STEP4 見積合わせ → STEP5 契約・議会報告 → STEP6 次回改善策の 6 ステップで、開札調書・参加者ゼロの記録の保存が後の議会・監査対応で必須になります。
契約満了の 90 日前には不調リスクを財政担当に共有し、現行供給事業者への暫定継続供給打診と、随契候補先 1〜2 社への見積依頼を並行で進めるのが鉄則です。最終保障供給の単価は標準契約の 1.2〜1.4 倍程度になるため、移行を回避するだけで自治体財政の負担を大きく軽減できます。詳細手順は『最終保障供給に入りそうなときの対応』を参照してください。
①入札不調の客観的事実(参加者数・予定価格超過の数値)、②市場環境変化(JEPX 推移グラフ等)、③随意契約の法的根拠(自治法施行令167条の2 該当号)、④価格妥当性(近隣自治体ベンチマーク)、⑤再発防止策の 5 項目を骨子に資料化します。グラフ・表で視覚化し、競争回避ではなく構造的要因による不可避の選択であることを定量的に示します。
政令市・中核市は専任の入札契約担当を活用し、複数年・分割発注の設計変更を内部完結。一般市(人口 5 万人以上)は契約課と施設担当の役割分担調整役を明確化。一般市・町村(小規模)は都道府県や近隣市の前例参照と、広域連合経由の共同調達への参加が現実的な選択肢になります。
中規模市(10 万人規模)では、不調後に随意契約で旧契約事業者と単年契約 → 翌年仕様を 3 エリアに分割し再入札 → 2 社応札で契約成立、という事例があります。町村(2 万人規模)では、供給可能事業者が実質 1 社の地域で毎年度特命随意契約を実施し、包括外部監査で適正性を確認した事例があります。見積書取得と理由書の充実が共通成功要因です。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-17
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
自治体電力調達の入札実務|一般競争・指名競争・随意契約の使い分け
入札方式の基本から使い分け判断まで体系的に解説します。
最終保障供給に入りそうなときの対応手順
最終保障供給への移行リスクを回避するための実務フローを解説。
自治体庁内で電力契約見直しを説明するとき
財政・議会・首長への説明資料作成のポイントをまとめています。
自治体・公共向け記事一覧
自治体の電力調達に関する記事をカテゴリでまとめています。
法人向け電力・省エネ補助金まとめ
入札不調後の省エネ投資検討時に活用できる主要補助制度を横断比較。
電気代高騰と事業継続リスク
電力調達リスクをBCPと財務リスク管理の視点で整理します。
公共施設の電力一括調達(バンドリング)の進め方
不調を回避するもう一つの解として、複数施設まとめての調達手法を解説。
自治体庁舎の電気料金見直しポイント
庁舎・学校など公共施設の負荷特性と契約見直しの基本フレーム。
自治体のRE100・脱炭素調達と電力コストの両立
総合評価方式・加点評価で環境要件を組み込みながら不調を避ける手法。
最終保障供給とは
不調後に自動移行する最終保障供給の仕組みと回避手順を解説。
法人電気代見直しの基本ポイント
業種・エリアを問わず適用できる契約見直しの基本フレームワーク。
入札単価の妥当性確認や随意契約時の参考値として、シミュレーターで電力コストを試算できます。お問い合わせもお気軽にどうぞ。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。