当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
MUNICIPALITY / 自治体・公共向け
施設ごとにバラバラに行われていた電力調達を一本化する「バンドリング(一括調達)」は、 入札不調の増加とコスト上昇が続く現在、多くの自治体が注目している調達改善手法です。 一括調達のメリット・進め方・規模別の考え方・注意点を実務担当者向けに整理します。
バンドリング(共同調達・一括調達)とは、複数の公共施設(庁舎・学校・体育館・公民館・図書館等)の電力契約をまとめて一つの入札・契約として調達する手法です。 従来は施設ごと・担当課ごとに個別に電力契約を締結していた自治体が多く、 それぞれの施設で毎年度入札を行う必要がありました。
しかし、2022 年以降の電力市況高騰と新電力撤退ラッシュで「単独調達では応札者ゼロ・予定価格超過不落」が頻発し、自治体単独での入札成立が困難な構造的局面に突入しました。共同調達は単なる効率化ではなく、調達リスク自体を回避する手段として位置付けが変わってきています。
バンドリングを導入することで、調達量の増加によるスケールメリットと手続きの効率化が同時に期待できます。 電力市場の高騰・入札不調の増加という環境下で、多くの自治体が一括調達の検討を始めています。
調達単価の引き下げ
総使用量が増えるほど事業者にとって供給の採算が取りやすくなり、競争が生まれやすくなります。スケールメリットにより単価が5〜15%程度改善する事例もあります。
入札事務の効率化
施設ごとに別々に入札していた手続きを一本化できるため、財政・総務担当者の工数を大幅に削減できます。仕様書・公告文・契約書の標準化も進めやすくなります。
条件の統一と管理の一元化
供給条件・価格形式・契約期間を統一することで、施設ごとのバラつきをなくし、比較・管理がしやすくなります。月次の請求管理も一元化できます。
入札不調リスクの低減
使用量規模が大きくなるほど事業者の参入意欲が高まり、不調になるリスクが下がります。小規模施設が単独で入札しても応札者ゼロになるケースでも、まとめることで解決できます。
すべての施設を最初から一括にする必要はありません。以下の観点で優先順位をつけてください。
STEP 1
施設リストの作成と使用実績の整備
全公共施設(庁舎・学校・体育館・公民館等)の使用量(kWh)・電圧区分(特別高圧・高圧・低圧)・需要番号・契約満了日を一覧にまとめます。使用実績は直近12か月分を取得してください。
STEP 2
一括調達の対象施設の選定とグルーピング
すべての施設を一まとめにするのが理想ですが、電圧区分・供給エリア・契約時期・指定管理の有無によってグループ分けが必要な場合があります。最初から全施設をまとめず、高圧以上を先行させる方法も有効です。
STEP 3
入札仕様書の作成
一括調達の仕様書は個別入札より詳細になります。施設リスト・電圧区分ごとの使用量・価格形式・緊急時対応・施設ごとの供給開始日と終了日を明記します。分割発注・一部施設の随意契約への変更条件も記載してください。
STEP 4
入札の実施
一般競争入札を原則とし、参加資格(小売電気事業者登録・保証金・過去の供給実績等)を設定します。事業者説明会を設けることで質問を事前に集約でき、公告後の問い合わせ対応を減らせます。
STEP 5
契約締結と施設別管理
落札後は一括の契約書を締結しつつ、施設ごとの供給条件を別紙(施設明細書)で管理します。途中で施設が追加・削除された場合の対応ルールも契約書に盛り込んでおいてください。
| 規模 | 年間使用量目安 | 推奨アプローチ | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10施設未満(小規模) | 〜500万kWh/年 | 高圧以上を先行して一括。低圧は個別または小口随意契約 | まずは高圧施設(庁舎・学校)のみでバンドリングを試みる |
| 10〜50施設(中規模) | 500万〜3,000万kWh/年 | 電圧区分・エリアでグルーピングして2〜3本の入札に集約 | 担当者が管理できる範囲で分割。全施設統合は次フェーズで |
| 50施設以上(大規模) | 3,000万kWh以上/年 | 電圧区分ごとに別入札。必要に応じて都道府県共同調達に参加 | 大規模ほどスケールメリットが出やすい反面、不調時の影響も大きい |
1. 施設ごとの特殊要件への対応
病院・福祉施設など24時間対応が必要な施設や、太陽光発電が設置されている施設は特殊な供給条件が必要です。一括仕様書に組み込むと複雑化するため、別途契約とするほうが無難な場合があります。
2. 指定管理施設の取り扱い
指定管理者が電力契約の当事者となっている施設は、自治体主導の一括調達の対象外となる場合があります。協定書・仕様書の確認が必要です。
3. 一部施設が不調になった場合の対応
一括入札でも特定施設だけ応札なし・条件合致なしとなるケースがあります。一部施設を随意契約に切り出す手続きを事前に準備しておき、4月1日以降の供給空白が生じないよう対応してください。
一括調達は「すべての施設を一度にまとめる」ことが目標ではなく、 「スケールメリットを活かしながら調達の安定性と効率化を実現する」ことが本質です。 まずは高圧以上の主要施設から試行し、運用実績を積みながら対象施設を拡大していく段階的アプローチが現実的です。
共同調達は実施スキームによって参加自治体間の役割分担が大きく変わります。代表的な 3 パターンを整理します。
広域連携方式(リード自治体型)
一部事務組合方式
広域連合・地方公共団体組合
出典: 総務省「地方公共団体間の連携・補完」資料、自治体公開事例集をもとに業界平均レンジで作成。
共同調達導入の意思決定では、単独調達と一括調達のコスト差を定量的に示すことが議会・首長への説明の決め手になります。シミュレーターを以下の観点で活用してください。
A.原則として競争入札(一般入札・指名入札・プロポーザル)で決定します。地方自治法・契約規則に基づき、透明性・公正性が求められます。
A.①予算年度に縛られる、②議会承認が必要なケースあり、③単年度・複数年度契約の選択、④価格変動リスクへの対応制約、⑤入札仕様書作成の専門性、などです。
A.①入札仕様書の最適化(過度な制約を排除)、②複数年契約の活用、③省エネ設備導入、④施設別の使用パターン把握、⑤一括契約による調達力強化、の5点です。
A.経営安定性・供給実績の確認、財務健全性指標の確認、撤退時の対応条項を契約に盛り込むことで、リスクを管理できます。複数社の比較検討が必須です。
A.①コスト削減根拠データ、②選定プロセスの透明性、③供給安定性の根拠、④環境価値(再エネ比率)、⑤緊急時対応、を分かりやすく整理して説明します。
業界の典型値として、単独調達からバンドリングに移行することで kWh 単価で 5〜15% の削減が見込めます。年間電力費 1 億円規模の自治体なら年間 500〜1,500 万円の削減効果に相当します。スケールメリットの大きさは調達総量に比例するため、高圧以上の主要施設を先行してまとめると効果が顕著です。
①使用量規模(高圧・特別高圧を優先)、②契約満了日の近接性、③電圧区分・供給エリアの統一性、④指定管理・直営の区分の 4 軸でグルーピングします。最初から全施設を一括にする必要はなく、効果の出やすい高圧施設(庁舎・学校・体育館)から段階導入するのが定石です。
広域連携方式は事務取り扱い自治体(リード自治体)が他自治体分も一括処理する形で、手続きは比較的シンプルです。組合方式(一部事務組合)は法人格を持つ組合が契約主体となり、複数自治体の利害調整に向いています。年間調達総額・参加自治体数・規約整備の難易度で選択するのが実務的判断です。
STEP1 施設リスト・使用実績の整備 → STEP2 対象施設の選定とグルーピング → STEP3 入札仕様書の作成(施設明細書付き)→ STEP4 入札の実施(事業者説明会含む)→ STEP5 契約締結と施設別管理の 5 ステップが標準です。最低でも入札公告 90 日前から逆算した進行管理が必要で、4 月始まりの新契約に向けては前年 9 月〜10 月から準備開始が安全圏です。
病院・福祉施設・指定管理施設などの特殊条件施設を一括仕様書に無理に組み込むと不調リスクが高まります。これらは別契約に切り出すのが鉄則です。また、一部施設だけ応札なし・条件合致なしになるケースに備えて、随意契約への切り出し手続きを事前に契約書に盛り込んでおくのが重要です。
施設数 5 件未満・調達総量 500 万 kWh/年未満の場合は、共同調達の手続き負荷に対して削減効果が小さく、単独調達のほうが合理的な場合があります。また、特殊な供給条件(24時間対応・離島・自家発電併設等)を持つ施設は単独調達のほうが柔軟な条件設計が可能です。規模・特殊性で判断します。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-17
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
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LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
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容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
自治体電力調達の入札実務
一般競争・指名競争・随意契約の使い分けと入札仕様書作成のポイントを解説。
自治体の長期継続契約(債務負担行為)と電力契約の関係
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公共施設の包括管理委託と電力契約の関係
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指定管理施設の電力契約は誰がどう見直すか
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複数拠点の電力コスト一元管理フレームワーク
多施設の電力費を効率的に管理するための体制と手順を解説。
自治体庁舎の電気料金見直しポイント
庁舎・学校・体育館など公共施設の負荷特性と契約見直しの考え方を整理。
自治体電力入札が不調になったときの対応ガイド
共同調達でも不調となった場合の随意契約移行・最終保障供給回避の実務手順。
自治体のRE100・脱炭素調達と電力コストの両立
共同調達と脱炭素要件を組み合わせる場合の戦略パターン。
最終保障供給とは
共同調達不調時の最終保障供給移行リスクと、自治体側で備えるべき手順を解説。
法人電気代見直しの基本ポイント
業種・エリアを問わず適用できる契約見直しの基本フレームワーク。
特別高圧の電気料金の仕組み
大規模公共施設で活用される特別高圧契約の料金体系を解説。
シミュレーターで現在の電力コストを把握し、バンドリング導入後の効果試算の参考にご活用ください。
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