再エネ電気の調達というと、太陽光や風力の設備を思い浮かべやすいかもしれません。ただ、小売電気事業者の調達という視点で見ると、 実際には複数の仕組みが並んでいます。
FITやFIPの制度のもとで流通する電気もあれば、PPAや相対契約の形で個別に調達するケースもあります。同じ「再エネ調達」と言っても、 価格の持ち方、数量の安定性、需給の変動の受け方はかなり異なります。
小売会社が再エネを調達するときは、制度経由で市場に流れる電気を扱う場合もあれば、発電事業者と個別契約を組む場合もあります。 そのため、「再エネを調達する」を一つの方法で理解しようとすると実務が見えにくくなります。
FITは固定価格での買取を前提とした制度で、再エネ導入初期の普及に大きな役割を果たしてきました。FIPはそれに対して、 市場価格にプレミアムを上乗せする仕組みで、再エネを市場へ統合していく考え方が強くなっています。
小売会社の調達視点では、FITとFIPで価格の持ち方や市場との接続の仕方が異なるため、同じ再エネ電気でも調達リスクの出方が変わります。
| 仕組み | 価格の持ち方 | 調達の安定性 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| FIT | 固定の買取価格・制度運営色が強い | 制度の枠組みで流通しやすい | 制度経由で再エネ電気の流れを理解したい場面 |
| FIP | 市場価格にプレミアムを上乗せする考え方 | 市場との連動を前提にした運用 | 市場統合された再エネ電源の理解 |
| 相対契約 | 個別条件で価格式を設計 | 契約次第で安定性を持たせやすい | 発電事業者と小売で条件を作り込みたい場面 |
| PPA | 長期の価格・受渡条件を事前に定めることが多い | 中長期の確保に向きやすい | 特定電源との継続的な関係を作りたい場面 |
制度と契約形態を同じ土俵で比較した整理表です。実務では受渡方法、環境価値の帰属、バランシングの持ち方でさらに差が出ます。
PPAは長期の売電・調達関係を組む枠組みとして語られることが多く、再エネ電源との関係性を長く持ちたいときに使われます。 相対契約はより広い概念で、再エネに限らず個別条件で組む契約全般を含みます。再エネ調達では、この二つが重なって見えることがありますが、 「特定電源との継続的な関係を持つか」「個別条件でどう設計するか」で整理すると理解しやすくなります。
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
通常の電力調達よりも、制度、環境価値、出力変動の三つを重ねて見なければならない点が大きな違いです。 そのため、再エネ調達を理解するときは、設備導入の話に寄りすぎず、小売会社がどんな条件で再エネ電気を仕入れ、 その価値を商品へどう反映するかに焦点を置くのが実務的です。
制度名称は2026年4月2日時点で、資源エネルギー庁のFIT・FIP制度公開情報をもとに確認しています。
| 調達手法 | 価格帯目安 | 契約期間 | 環境価値 | 法人コスト影響 |
|---|---|---|---|---|
| FIT電気+非化石証書 | 10〜14円/kWh | 短〜中期 | 証書で付与 | 通常電気+0.3〜1円/kWh |
| FIP電気 | 11〜16円/kWh | 中期 | 電源由来 | 市場変動あり |
| コーポレートPPA | 10〜15円/kWh | 10〜20年 | 電源由来 | 長期固定で安定 |
| 自家消費(屋根上太陽光) | 8〜12円/kWh | 設備寿命 | 自家消費 | 最も安価な可能性 |
※ 価格は概算参考値です。実際は規模・エリア・条件により異なります。
※ 通常電気料金との差額として算出。非化石証書の価格帯・調達手法により幅があります。
再エネ電気の調達方法を押さえたら、次は非化石証書で環境価値の持ち方を確認すると全体像がつながります。
再エネ電気の仕入れ方を見たら、次は環境価値をどう確保するかを確認すると、再エネメニューの背景が読みやすくなります。
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シリーズ 8/10 ・ 応用
読む順番を意識して、前後の記事へつなげて読めるようにしています。調達手段の違いを単発で見るより、 全体像から順に追う方が背景をつかみやすくなります。
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