単独で運営する飲食店は、調理設備・冷蔵設備・空調・換気が重なる電気料金が経営コストを大きく左右します。特に利益率が低い飲食業では、電気料金の上昇が直接的に収益を圧迫するため、契約内容の定期的な確認と見直しが重要です。
このページでは、単独飲食店特有の電力需要特性を踏まえ、契約見直しの着眼点と実務上の確認事項を整理します。
このページでわかること
飲食店の電気料金は、以下の構造的な要因から高止まりしやすい特性があります。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由 で確認できます。
飲食店の電力使用は設備カテゴリごとに特性が異なります。各設備の特性を理解しておくことで、見直しの優先順位が明確になります。
調理設備(厨房機器)
業務用オーブン、フライヤー、スチームコンベクションオーブン、電磁調理器などの調理設備は、営業時間中に断続的に大電力を消費します。特にランチ・ディナーのピーク時間帯に複数の調理設備が同時稼働し、最大需要電力を押し上げます。
冷蔵・冷凍設備
食材の保管に必要な業務用冷蔵庫・冷凍庫が24時間稼働します。スタンドアップ型の大型冷蔵庫や冷凍ストッカーは消費電力が大きく、ベースロードの主要因になります。夏場は外気温の影響で消費電力が増加します。
空調・換気設備
客席の空調に加え、厨房の換気扇・排煙設備が常時稼働します。厨房の発熱を排気するための強力な換気システムは、特に夏季の空調負荷を増加させます。食品衛生上の観点から換気設備の停止が難しい点も特徴です。
照明・その他設備
客席の雰囲気照明・ショーケース照明・店頭サイン照明など、営業時間外も含めて稼働する照明があります。POSシステム・BGM設備・テレビモニターなど小電力設備も積み上がると無視できない規模になります。
単独飲食店は利益率が低く、電気料金の変動が収益に直結するため、固定プランによるコスト安定化が特に重要な業種です。
固定プランが向きやすい理由
市場連動を検討する場合の注意
固定プランが向く法人の特徴は 固定プランが向く法人の特徴 で、市場連動プランのリスクについては 市場連動プランが向かない法人の特徴 で詳しく解説しています。
単独飲食店は契約電力50kW未満の低圧契約が多く、電力会社の規制料金か新電力の低圧プランが選択肢になります。低圧は高圧・特別高圧と比べて単価が高い傾向があり、新電力への切り替えによる単価削減効果を確認することが重要です。現在の契約電力の設定が実態のピーク需要と適合しているかも確認ポイントです。
飲食店の電力使用は営業時間・仕込み時間・閉店後の片付けなど、1日の中で大きく変動します。ランチとディナーのピーク時間に調理設備が集中稼働するパターンを把握し、デマンドコントロールの余地があるかを確認します。仕込み時間を早朝・深夜にシフトすることで深夜割引料金を活用できる場合もあります。
飲食業は食材費・人件費・家賃に加え電気料金が経費に占める割合が高く、利益率が低い業種です。電気料金の月次変動が経営収支に直接影響するため、市場連動型プランを採用する場合は変動幅の上限シミュレーションを必ず行い、最悪ケースでも経営を継続できるかを確認することが重要です。
テナント入居の飲食店では、電力契約がオーナーとテナントのどちらの名義になっているか、また転貸電力の条件を確認する必要があります。自社名義の場合は直接新電力への切り替えが可能ですが、オーナー名義の建物一括契約の場合は変更にオーナーの承認が必要になります。
契約見直しの全体的な進め方は 法人の電力契約見直しチェックリスト で整理しています。
飲食店では初期投資が限られることが多いため、費用対効果の高い対策から優先して取り組むことが重要です。
冷蔵設備の省エネ化
古い業務用冷蔵庫・冷凍庫を省エネ型に更新することで、24時間のベースロードを削減できます。経年劣化した設備は特に効率が低下しているため、更新の費用対効果が高い場合があります。
照明のLED化
客席照明・厨房照明をLEDに切り替えることで照明電力消費を削減できます。比較的初期投資が小さく、飲食店でも取り組みやすい対策です。
空調・換気の適正化
厨房換気扇のインバーター制御化や、客席空調の設定温度・稼働スケジュールの最適化により、空調・換気の電力消費を抑制できます。
調理設備の使用計画の見直し
仕込み作業のタイミングを分散させたり、ピーク時間帯に一部設備の稼働をずらすことでデマンドを抑制できます。設備投資なしで取り組める対策です。
飲食店の契約見直しでは、以下の観点でシミュレーターを活用することで、経営判断に必要な数値を把握できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
はい、使用パターン・ピーク時間帯・契約区分が業種ごとに異なるため、見直しの着眼点も変わります。
経済産業省の電力取引報や新電力ネットの統計データで業種別の目安を確認できます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
飲食店の契約条件をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プランと市場連動プランの比較にも活用できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。