ビジネスホテルは24時間稼働の宿泊施設であり、客室空調・給湯・共用部照明などが常時電力を消費します。客室稼働率による電力使用量の変動が大きく、繁忙期と閑散期の差を踏まえた契約条件の設定が重要です。
このページでは、ビジネスホテル特有の電力需要特性と設備構成を踏まえた電気料金見直しの考え方を整理します。
このページでわかること
ビジネスホテルの電気料金は、以下の構造的な要因から高止まりしやすい特性があります。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由 で確認できます。
ビジネスホテルの電力使用は設備カテゴリごとに特性が異なります。各設備の特性を理解しておくことで、見直しと設備投資の優先順位が明確になります。
客室空調・給湯設備
ビジネスホテルの電力消費の中心は客室の空調と給湯です。客室稼働率に応じて電力消費が変動するため、繁忙期と閑散期で使用量が大きく異なります。全客室が24時間利用可能な状態を維持する必要があるため、稼働率が低い時期でも一定の電力消費が続きます。
共用部照明・エレベーター
廊下・ロビー・エレベーターホール・駐車場などの共用部照明は24時間点灯しています。エレベーターも稼働率に関わらず常時使用可能状態を維持するため、稼働台数・稼動時間が電力消費に影響します。
調理・厨房設備(レストランがある場合)
朝食・夕食を提供するレストランを持つビジネスホテルでは、厨房設備の電力消費も加わります。特に朝食は客室数に対応した大量調理が必要で、短時間に電力消費が集中する傾向があります。
業務用洗濯・リネン設備
タオル・シーツなどのリネン類の洗濯・乾燥設備が稼働します。大型洗濯機・乾燥機は消費電力が大きく、特に客室数の多いホテルでは連続稼働時間が長くなります。深夜に洗濯を行うホテルでは深夜電力を活用できる場合があります。
ビジネスホテルは電力使用量が大きく24時間稼働のため、電気料金の変動が事業収支に大きく影響します。固定プランによるコスト安定化のメリットが大きい業種といえます。
固定プランが向きやすい理由
市場連動を検討する場合の注意
固定プランが向く法人の特徴は 固定プランが向く法人の特徴 で、市場連動プランのリスクについては 市場連動プランが向かない法人の特徴 で詳しく解説しています。
高圧契約が多いビジネスホテルでは、契約電力と基本料金の関係を確認することが見直しの基本です。
ビジネスホテルの電力使用量は客室稼働率に強く依存します。過去12か月の月別稼働率と電力使用量を対比させることで、単位稼働率あたりの電力消費の傾向が把握できます。この分析から、将来の稼働率予測に基づいた電力使用量の見通しを立てることができ、契約条件の設定に活用できます。
客室数が多いビジネスホテルでは高圧契約が適用されます。契約電力が実際の最大需要電力に対して過大になっていないか、力率の状況(力率割引・割増の適用可否)、時間帯別料金の活用可否などを確認することが重要です。特に設備更新後に契約条件の見直しを行っていない場合、見直し余地が生まれている可能性があります。
客室キーカードによる電源連動システム(不在時に自動で空調・照明をオフにする)の導入状況を確認します。このシステムが導入されていない場合、空室でも空調・照明が稼働し続けるため、大きな無駄が生じています。導入による電力削減効果は客室稼働率に応じて変動しますが、稼働率が高い繁忙期より閑散期に効果が大きくなります。
同一法人が複数のビジネスホテルを運営している場合、拠点ごとに電力契約が異なるケースがあります。全拠点の電力使用量・契約単価・更改タイミングを一覧化し、まとめて新電力に見積依頼することで交渉力が生まれる場合があります。ただし、各拠点の電力会社の供給エリアが異なる場合は対応できる新電力が限られます。
契約見直しの全体的な進め方は 法人の電力契約見直しチェックリスト で整理しています。
ビジネスホテルでは、客室数が多いほど省エネ設備の投資効果が大きくなります。以下の設備対策が有効です。
客室キーカード電源連動システム
キーカードを抜くと自動的に客室の空調・照明・コンセントの一部をオフにするシステムです。チェックアウト後の空室での電力消費を大幅に削減できます。客室数が多いほど投資効果が高まります。
LED照明への更新
客室・廊下・共用部の照明をLED化することで照明電力消費を大幅に削減できます。特に24時間点灯の共用部照明では削減効果が高く、客室数が多いほど年間削減量が大きくなります。
高効率給湯設備
ヒートポンプ式給湯器(エコキュート等)への更新で給湯に必要なエネルギーを大幅に削減できます。深夜電力を活用した貯湯運転と組み合わせると経済的な効果が高まります。
BEMSによるエネルギー管理
BEMSを導入することで客室・フロア・設備別の電力使用をリアルタイムで把握・制御できます。稼働率に応じた空調の自動調整や、異常消費の早期発見に役立ちます。
ビジネスホテルの契約見直しでは、以下の観点でシミュレーターを活用することで、経営判断・事業計画策定に必要な数値を把握できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
はい、使用パターン・ピーク時間帯・契約区分が業種ごとに異なるため、見直しの着眼点も変わります。
経済産業省の電力取引報や新電力ネットの統計データで業種別の目安を確認できます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
ビジネスホテルの契約条件をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プランと市場連動プランの比較にも活用できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。