燃料費調整額には、規制料金と自由料金で扱いが大きく異なります。規制料金(低圧の経過措置料金)には 「基準燃料価格の 1.5 倍」という上限がありますが、自由料金(法人向け高圧・特別高圧、新電力プランなど)には 原則として上限がありません。
この違いは 2022 年のウクライナ危機で深刻な問題になり、規制料金の上限到達による電力会社の赤字、 自由料金の燃調急騰による新電力の経営悪化・撤退など、多くの影響を引き起こしました。
電力自由化以前から続く「経過措置料金(低圧)」は、電気事業法で料金算定ルールが定められています。 その中に、燃料費調整額の上限として「基準燃料価格の 1.5 倍」というキャップが設定されています。
上限到達の考え方
平均燃料価格が「基準燃料価格 × 1.5」を上回った場合、上回った分は料金に反映されない
つまり、燃料価格がどれだけ急騰しても、規制料金需要家の請求額には上限以上のコストは転嫁されません。 反面、電力会社側で「転嫁できなかったコスト」が赤字として残る構造です。
2022 年のウクライナ危機で LNG スポット価格が急騰し、日本の多くの電力会社の規制料金で 2022 年夏〜秋にかけて燃調単価が上限に到達しました。
この結果、2022 年度は旧一般電気事業者各社で数百億円〜数千億円規模の燃料費転嫁不足が発生。 2023 年 6 月に多くの電力会社が規制料金の本体値上げ(認可料金改定)を申請・実施し、 同時に基準燃料価格も引き上げました。
| 電力会社 | 2023年改定値上げ幅(規制料金、低圧) |
|---|---|
| 北海道電力 | 約 20% |
| 東北電力 | 約 24% |
| 北陸電力 | 約 42% |
| 中国電力 | 約 29% |
| 四国電力 | 約 25% |
| 沖縄電力 | 約 38% |
※ 値上げ幅は改定時の標準的な使用量での概算。東京電力・中部電力・関西電力・九州電力は当時規制料金改定を実施せず。
法人向けの高圧・特別高圧契約や、新電力の自由料金プランには、燃調の上限制度は原則として適用されません。 契約書・約款で個別に上限を設けている場合もありますが、多くは「燃料価格に応じて無制限に反映」する仕組みです。
2022年の影響:自由料金の燃調は上限なく上昇。ある月の燃調単価が +10 円/kWh を超えるケースもあり、 請求額が前年比 2〜3 倍になる法人需要家も出ました。
新電力の多くは、燃調を伴う契約ではなく JEPX 市場調達をベースにしていたため、 2022 年の市場価格急騰でそのまま仕入れコストが上昇。約款上転嫁できる範囲を超えた損失が発生し、 2022〜2023 年に数十社が事業撤退・新規受付停止・他社への事業譲渡に追い込まれました。
主な影響事例
最終保障供給については 最終保障供給とはで詳しく解説しています。
A.燃料費(LNG・石炭)の国際価格上昇、再エネ賦課金の増加、容量拠出金の新設、託送料金改定、カーボンプライシング導入が主な要因です。複数要因が同時に進行し、中長期的に上昇圧力が続きます。
A.LNG・石炭・原油の輸入価格変動を電気料金に反映する調整額です。kWhあたりで加減算され、原油価格が高騰すると料金全体が大きく上昇します。毎月更新され、請求書に別項目で記載されます。
A.2012年度の0.22円/kWhから2024年度は3.45円/kWh程度まで上昇。再エネ普及とともに今後も上昇傾向で、2030年度には4円/kWh超の可能性があります。年間使用量100万kWhなら賦課金だけで約345万円の負担です。
A.将来の供給力確保のため、小売電気事業者が負担する料金で、2024年度から本格稼働。需要家には小売料金を通じて転嫁されます。kWhあたり数十銭〜1円程度の上昇要因となります。
A.①プラン見直し(固定・市場連動・TOU)、②切替先との相見積もり、③デマンド削減による基本料金圧縮、④再エネPPA・自家発電の検討、⑤省エネ投資、の順で取り組むのが効果的です。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
燃調に上限がない契約が大半を占める中、契約見直しで総額の上振れリスクを管理することが重要です。
燃調費や市場連動、再エネ賦課金など、料金が上がる要因を自社の契約に当てはめると、今後の影響額が具体的に見えてきます。読み解きに不安があるときや、社内説明の材料が必要なときは、専門家へお気軽にご相談ください。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。