燃調単価は月次で細かく動きますが、年度平均で見ると 2018 年度から現在までで 2 度の大きな転換点があります。 ひとつは 2020 年度のコロナ禍でのマイナス圏、もうひとつは 2022 年度のウクライナ危機起点の歴史的な急騰です。 このページでは、東京電力EP 高圧を例に年度別の変化を整理します。
LNG・原油・石炭 CIF 価格と燃調単価は強く連動しますが、貿易統計の反映は 3〜5 ヶ月遅れのため、 燃料価格が下がった後もしばらく燃調の高止まりが続くことがあります。
出典: 財務省貿易統計(年度平均の概算)。3燃料すべてが2022年度にピークをつけています。
原油・LNG ともに落ち着いた水準で、燃調はほぼ±ゼロ付近。法人では燃調の存在感が低い時期でした。
世界的な燃料需要の低下で LNG は 39,000 円/トン、原油は 34,000 円/kl まで下落。 燃調は −3〜−5 円/kWh 台までマイナス。実質的な電気代減少局面。
経済再開と冬季需要で燃料価格が反発。年度後半にかけて燃調はマイナス圏から 0 付近へ急上昇。
LNG スポット価格は一時 100 ドル/MMBtu 近くまで高騰。貿易統計ベースでも 128,000 円/トンと過去最高。 燃調単価は自由料金では +10 円/kWh を超える月もあり、請求額が 1.5〜2 倍になる事業者も。
政府の補助金で高圧は 1〜9 月 3.5 円/kWh、10 月〜 1.8 円/kWh の値引き。 実質的な燃調水準は抑えられるが、ベースの燃料価格は高止まり。
補助は段階的縮小。燃料価格は高止まりの中、燃調は +2〜+3 円/kWh 台で推移。 見かけ上の値引きが消えるため、請求額は再び上昇局面。
月10万 kWh 使用の中規模事業所を例に、燃調単価だけで月額がどう変わったかを試算します。
| 年度 | 燃調単価 | 月額影響 | 対2020年度差 |
|---|---|---|---|
| 2018年度 | +0.60 円/kWh | +60,000 円 | +380,000 円 |
| 2019年度 | -0.20 円/kWh | -20,000 円 | +300,000 円 |
| 2020年度 | -3.20 円/kWh | -320,000 円 | 0 円 |
| 2021年度 | -0.40 円/kWh | -40,000 円 | +280,000 円 |
| 2022年度 | +6.80 円/kWh | +680,000 円 | +1,000,000 円 |
| 2023年度 | +1.10 円/kWh | +110,000 円 | +430,000 円 |
| 2024年度 | +2.40 円/kWh | +240,000 円 | +560,000 円 |
| 2025年度 | +3.10 円/kWh | +310,000 円 | +630,000 円 |
| 2026年度 | +3.30 円/kWh | +330,000 円 | +650,000 円 |
2020 年度と 2022 年度で、月あたり 100 万円以上の差が生じた事業所も存在します。
A.燃料費(LNG・石炭)の国際価格上昇、再エネ賦課金の増加、容量拠出金の新設、託送料金改定、カーボンプライシング導入が主な要因です。複数要因が同時に進行し、中長期的に上昇圧力が続きます。
A.LNG・石炭・原油の輸入価格変動を電気料金に反映する調整額です。kWhあたりで加減算され、原油価格が高騰すると料金全体が大きく上昇します。毎月更新され、請求書に別項目で記載されます。
A.2012年度の0.22円/kWhから2024年度は3.45円/kWh程度まで上昇。再エネ普及とともに今後も上昇傾向で、2030年度には4円/kWh超の可能性があります。年間使用量100万kWhなら賦課金だけで約345万円の負担です。
A.将来の供給力確保のため、小売電気事業者が負担する料金で、2024年度から本格稼働。需要家には小売料金を通じて転嫁されます。kWhあたり数十銭〜1円程度の上昇要因となります。
A.①プラン見直し(固定・市場連動・TOU)、②切替先との相見積もり、③デマンド削減による基本料金圧縮、④再エネPPA・自家発電の検討、⑤省エネ投資、の順で取り組むのが効果的です。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
シミュレーターで月間使用量を入力すると、燃調上振れシナリオでの総額影響を確認できます。
燃調費や市場連動、再エネ賦課金など、料金が上がる要因を自社の契約に当てはめると、今後の影響額が具体的に見えてきます。読み解きに不安があるときや、社内説明の材料が必要なときは、専門家へお気軽にご相談ください。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。