JEPX スポット価格は、日次・時間帯ごとに動きます。ニュースでは「高騰」「下落」だけが伝わりがちですが、 価格を動かす要因を切り分けて理解すると、実務の予測精度や、シナリオ別の備えが格段にやりやすくなります。 このページでは、JEPX 価格を動かす 5 大要因を整理します。
最も直接的な要因。需要が発電能力に対して逼迫すると、限界費用の高い発電機(石油火力・緊急用電源)が追加稼働し、 市場価格が跳ね上がります。広域予備率が一桁台に下がると、スポット価格は一気に 50〜100 円/kWh 超まで上昇する傾向があります。
需給逼迫シグナル
火力発電の限界費用は、燃料価格によって大きく変わります。LNG スポット価格が 10 ドル/MMBtu から 30 ドル/MMBtu になれば、 LNG 火力の発電コストはほぼ 3 倍になり、市場価格もそれに応じて上昇します。
2022 年度のウクライナ危機時には、LNG スポットが一時 100 ドル/MMBtu 近くまで急騰し、 JEPX 年度平均が 20 円/kWh 台に押し上げられました。
太陽光・風力の出力は、JEPX 価格に大きく影響します。特に太陽光は晴天の昼間(10〜15時)に出力が集中するため、 この時間帯の需要は化石燃料発電ではなく再エネで賄える → 限界費用が下がる → スポット価格が急落 というパターンが定着しました。
スポット価格が 0.01 円/kWh まで下がる時間帯も発生。過剰供給により一部の火力が停止する。
再エネ出力が減り、火力の稼働比率が上がるため、価格が上昇。特に冬の曇天夕方は高値になりやすい。
気象は需要と再エネ出力の両方を動かすため、JEPX 価格の最大の短期変動要因です。
送電線の容量制約により、全国一律のシステムプライスから「エリアプライス」が分離することがあります。 送電線が混雑したエリアは高値、余裕のあるエリアは低値になります。
九州エリアでは太陽光大量導入の影響で、昼間のエリアプライスがシステムプライスより安くなりやすい傾向があります。 一方、北海道エリアは本州との連系線容量が限られるため、冬季に逼迫しやすい構造です。
| 時期 | 主な要因 | ピーク価格帯 |
|---|---|---|
| 2021年1月 | 寒波 + LNG逼迫 + 発電所停止 | 250 円/kWh 超 |
| 2022年春 | ウクライナ危機起点のLNG高騰 | 35 円/kWh |
| 2022年夏 | 猛暑 + LNG高止まり | 40 円/kWh |
| 2022年冬 | 需給逼迫 + 寒波 | 45 円/kWh |
実データによるボラティリティの推移です。FY2020は日次ボラティリティが20.79と突出して高く、 2021年1月の歴史的スパイク(最高251円)が全年度の数値を大きく押し上げています。 FY2024以降はスパイク発生ゼロとなり、市場は安定化傾向にあります。
| 年度 | 日次ボラティリティ | コマ単位StdDev | 最高値 |
|---|---|---|---|
| 2010年度 | 1.65 | 2.69 | 36円 |
| 2011年度 | 3.65 | 5.06 | 39円 |
| 2012年度 | 1.93 | 3.40 | 40円 |
| 2013年度 | 1.89 | 3.30 | 55円 |
| 2014年度 | 1.81 | 2.75 | 45円 |
| 2015年度 | 1.88 | 2.70 | 45円 |
| 2016年度 | 1.71 | 2.98 | 40円 |
| 2017年度 | 2.57 | 3.82 | 50円 |
| 2018年度 | 2.08 | 3.37 | 75円 |
| 2019年度 | 1.76 | 3.12 | 60円 |
| 2020年度 | 20.79 | 23.73 | 251円 |
| 2021年度 | 7.94 | 9.99 | 80円 |
| 2022年度 | 6.74 | 10.41 | 100円 |
| 2023年度 | 2.50 | 4.44 | 53円 |
| 2024年度 | 2.71 | 4.39 | 45円 |
| 2025年度 | 2.17 | 3.88 | 38円 |
| 2026年度 | 4.67 | 7.99 | 35円 |
FY2020は749コマ(全体の4.3%)で50円超のスパイクが発生し、最高値は251円に達しました。FY2024以降はスパイク発生ゼロとなっており、市場は安定化傾向が続いています。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
| 年度 | 50円超コマ数 | 発生率 | 最高値 |
|---|---|---|---|
| 2010年度 | 0コマ | 0.0% | 36円 |
| 2011年度 | 0コマ | 0.0% | 39円 |
| 2012年度 | 0コマ | 0.0% | 40円 |
| 2013年度 | 16コマ | 0.1% | 55円 |
| 2014年度 | 0コマ | 0.0% | 45円 |
| 2015年度 | 0コマ | 0.0% | 45円 |
| 2016年度 | 0コマ | 0.0% | 40円 |
| 2017年度 | 0コマ | 0.0% | 50円 |
| 2018年度 | 7コマ | 0.0% | 75円 |
| 2019年度 | 2コマ | 0.0% | 60円 |
| 2020年度 | 749コマ | 4.3% | 251円 |
| 2021年度 | 193コマ | 1.1% | 80円 |
| 2022年度 | 282コマ | 1.6% | 100円 |
| 2023年度 | 1コマ | 0.0% | 53円 |
| 2024年度 | 0コマ | 0.0% | 45円 |
| 2025年度 | 0コマ | 0.0% | 38円 |
| 2026年度 | 0コマ | 0.0% | 35円 |
出典: JEPX公表データを集計。スパイク = システムプライスが50円/kWhを超えたコマ。
JEPX価格を動かす主要因は、需給バランス、燃料CIF価格、再エネ出力、気象条件、系統制約の5つです。これらが同じ方向に重なると価格が大きく動きやすくなります。2021年1月には寒波+LNG逼迫+発電所停止が重なり250円/kWhを超えました。
晴天の昼間(10〜15時)は太陽光出力が集中するため、限界費用が下がりスポット価格が急落するパターンが定着しています。一方、曇天・雨天・夜間は火力依存が高まり価格が上昇します。特に冬の曇天夕方は高値になりやすい傾向があります。
FY2020は50円/kWh超のスパイクが749コマ(全体の4.3%)発生し最高値は251円でしたが、FY2024以降はスパイク発生ゼロとなっており、市場は安定化傾向にあります。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
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