電力の卸市場であるJEPX(日本卸電力取引所)では、電力の売買が毎日行われています。この市場で形成される価格が、最終的に法人向け電気料金の請求書に反映されるまでには、いくつかの段階があります。
市場連動プランを利用している場合は特に、どのような仕組みで市場価格が料金に転嫁されているかを理解しておくことが、コスト管理と契約見直しの判断に役立ちます。
このページでわかること
JEPX(Japan Electric Power Exchange)は、発電事業者と小売電気事業者が電力を売買する卸電力取引所です。2005年に設立され、電力自由化の進展とともに取引量が拡大してきました。
JEPXには複数の市場がありますが、最も基本的なのは翌日の30分ごとの電力を取引するスポット市場です。全国を北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の9エリアに分けて価格が形成されます。エリア間で需給が逼迫すると「エリアプライス」が分断し、一部エリアで極端に高い価格が生じることがあります。
2021年1月には厳寒と発電所トラブルが重なり、JEPXスポット価格が一時的に通常の数十倍に跳ね上がる事象が発生しました。この影響で多くの新電力が経営危機に陥り、一部は撤退・廃業しています。
JEPXの市場価格が法人の請求書に反映されるまでのプロセスを段階的に確認します。
JEPX スポット市場での取引
発電事業者と小売電気事業者が翌日の30分ごとのコマ単位で電力を売買します。入札価格によって市場価格(約定価格)が決まり、全国で9エリアごとに価格が形成されます。
市場価格は天候・需要・燃料価格・電源の稼働状況によって大きく変動します。
小売事業者の調達コストへの反映
市場から調達した電力のコストは、小売事業者の調達コストに直接算入されます。JEPX依存度が高い小売事業者ほど、市場価格の変動がコストに即座に影響します。
相対契約や自社発電との組み合わせにより、市場変動の影響度は事業者によって異なります。
プランタイプによる転嫁方法の違い
調達コストを顧客に転嫁する方法はプランタイプによって異なります。市場連動プランではJEPX価格が直接料金に反映され、固定プランでは一定期間のコストを見込んで単価が設定されます。
固定プランでも調達コストが想定を上回れば、次の更新時に単価改定が行われます。
請求書への反映
市場連動プランでは、当月の時間帯別JEPX価格に自社の使用量を掛けた金額が電力量料金に反映されます。固定プランでは単価が一定のため月ごとの請求額変動は少ないですが、燃料費調整額は別途変動します。
請求書の各項目の見方は「法人電気料金の明細の見方」で詳しく確認できます。
市場価格をどの程度・どのように料金に転嫁するかは、プランタイプによって大きく異なります。
完全市場連動型
JEPXスポット価格に一定のスプレッド(手数料・利益)を加えた単価を毎月または毎時間適用
リスクの特性: 高騰時に料金が大幅に上昇するリスクがある
一部市場連動型(部分調整型)
基本単価は固定し、市場価格が一定水準を超えた分だけ追加料金として請求
リスクの特性: 完全連動より変動幅は小さいが、高騰時の影響は受ける
上限付き市場連動型
JEPX価格が上限価格を超えた場合でも上限額までに料金を抑制
リスクの特性: 高騰時のリスクは限定されるが、上限設定の条件を確認することが重要
固定型(市場連動なし)
契約期間中は電力量単価を固定。燃料費調整額は別途変動
リスクの特性: 市場高騰の直接影響は受けないが、調達コスト上昇分が更新時に転嫁される
プランタイプの詳細な比較は 市場連動プランと固定プランの違い をご参照ください。
JEPXスポット価格が急騰しやすい条件を知っておくことで、リスクの高い時期を事前に意識できます。
冬季の寒波・夏季の猛暑
暖房・冷房需要が急増し、全体の需要が発電設備の供給力に近づくと価格が上昇しやすくなります。
LNG・石炭の国際価格高騰
火力発電の限界費用が上昇することで、市場全体の価格を押し上げる効果があります。
発電所の予期せぬ停止
大規模発電所のトラブルや定期検査が重なると、供給力が一時的に不足し価格が跳ね上がることがあります。
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
太陽光発電の出力変動
曇天や日没後に太陽光発電の出力が急落すると、夕方の需要ピーク時に市場価格が急上昇するケースがあります。
市場連動プランを利用している法人は、市場価格の変動に伴う料金リスクに対して以下のような対応を検討できます。
JEPX市場での価格形成から法人の請求書に至るまでには、調達コストの確定、プランタイプによる転嫁方式の選択、燃料費調整額や容量市場コストとの合算という段階があります。市場連動プランを利用している場合は特に、市場価格が高騰する条件と自社の使用パターンを照らし合わせてリスクを把握することが重要です。
現在の契約条件と市場価格シナリオを入力して、料金の上振れリスクを試算できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。