電力会社は、自社の発電所・卸市場・相対契約・再生可能エネルギーなど複数の方法で電力を調達しています。この調達コスト構造の違いが、法人向け電気料金の水準や変動パターンに直接影響します。
電力会社を選定するとき、またはプランを比較するときに「なぜこの料金水準なのか」を理解するための基礎として、調達コストと料金の関係を整理します。
このページでわかること
電力の小売会社(新電力・一般電力会社問わず)は、顧客に電力を届けるために「電力そのもの」を調達するコストを負担しています。このコストは発電源によって性格が異なり、化石燃料依存度が高ければ燃料価格の影響を受けやすく、卸市場調達が多ければ市場価格の変動に敏感になります。
調達コストが上昇すれば、その分が何らかの形で小売料金に転嫁されます。燃料費調整額のような自動調整の仕組みもありますが、固定プランでは調達コスト上昇分を小売会社が一定期間吸収することもあり、これが「固定プランでも突然値上がりする」要因のひとつになっています。
電力会社が用いる主な調達手段とその特性を整理します。
自社発電(自前の発電所)
大手電力会社が保有する火力・原子力・水力発電所からの供給
料金への影響: 燃料費・設備維持費が直接コストになる。燃料費調整額に反映される。
電力卸市場(JEPX)からの調達
日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場・時間前市場での購入
料金への影響: 市場価格の変動がそのまま調達コストに影響。市場連動プランの料金に直結。
相対契約(相対取引)
発電事業者との長期・相対的な契約による電力調達
料金への影響: 比較的安定した調達コスト。小売価格の固定部分に反映されやすい。
再生可能エネルギー(PPA・FIT買取)
太陽光・風力などの再エネ電源からの調達
料金への影響: FIT調達には賦課金が別途発生。非化石価値証書(非化石証書)も関連。
実際の電力会社は複数の調達手段を組み合わせており、その比率によってコスト構造が変わります。新電力の多くはJEPX依存度が高いため、市場価格が高騰したときに料金水準が急上昇しやすい傾向があります。
法人向け電気料金は複数の項目から構成されており、それぞれに調達コストとの関連性が異なります。
| 料金項目 | 算定基礎 | 調達コストとの関係 |
|---|---|---|
| 基本料金(デマンド料金) | 電力供給設備の維持コスト | 調達構成に直接は依存しないが、電源投資コストが間接的に影響 |
| 電力量料金(従量料金) | 調達コスト+送配電費用+利益 | 調達コスト変動が最も直接的に反映される部分 |
| 燃料費調整額 | LNG・石炭・石油の輸入価格 | 化石燃料依存の発電比率が高いほど変動幅が大きくなる |
| 再エネ賦課金 | FIT・FIP制度による買取費用の総額 | 再エネ比率の拡大とともに上昇傾向。調達コストとは別立て |
| 容量拠出金(容量市場) | 発電設備の容量確保コスト | 2024年度以降に顕在化。中長期的なコスト上昇要因 |
料金の見直しや比較を行う際は、単価だけでなくこれらの構成項目ごとに変動要因を確認することが重要です。詳しくは 法人電気料金の明細の見方 をご覧ください。
電力会社ごとの調達構成の違いは、料金水準だけでなくリスクの性格にも影響します。
自社発電・相対契約依存が高い場合
調達コストが安定しやすいため、固定プランを維持しやすい。ただし設備コストが料金に反映されるため、基本料金・従量料金が高めの傾向がある。
卸市場(JEPX)依存が高い場合
市場価格が安定しているときは低コストで調達できるが、市場高騰時に調達コストが急上昇する。市場連動プランではこのリスクが顧客側に転嫁される。
燃料費変動の波及
LNGや石炭など化石燃料を主体とする発電への依存度が高いほど、国際燃料価格・為替変動の影響を受けやすくなる。
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
再エネ調達の増加
太陽光・風力の比率が上がると天候依存のリスクが生じる一方、燃料費変動の影響を受けにくくなる。ただし容量確保コストが別途発生する場合がある。
法人の電力調達担当者が調達構成を意識すべき主な場面は以下のとおりです。
市場価格が法人料金に反映される詳細な仕組みは 市場価格が法人料金に反映される仕組み で解説しています。
電力会社の調達構成(自社発電・卸市場・相対契約・再エネの比率)は、法人向け電気料金の水準と変動リスクの両方を左右します。市場調達依存度が高い電力会社のプランは、市場高騰時に料金が大きく上振れするリスクがあります。プランを比較する際は料金単価だけでなく、どのような調達構成に基づいているかを意識することが、長期的なコスト管理に役立ちます。
調達構成の変化による料金影響を踏まえ、現在の契約条件でのリスクをシミュレーションできます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。