日本の電力は、LNG・石炭・石油などの化石燃料を使った火力発電に大きく依存しています。これらの燃料価格の変動は、燃料費調整額を通じて法人向け電気料金に転嫁されます。
「なぜ電気料金が上がったのか」「今後も上がり続けるのか」を判断するためには、燃料価格の波及経路と調整の仕組みを理解することが出発点になります。
このページでわかること
2011年の東日本大震災以降、原子力発電の稼働が大幅に制限され、日本の電力需給は化石燃料による火力発電への依存度を高めてきました。LNG・石炭・石油を合わせた化石燃料火力の比率は、時期によって70〜80%前後に達することもあります。
このような構造のもとでは、国際的な燃料価格の変動は電気料金に直結します。2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機としたLNG・石炭価格の高騰が法人電気料金の急上昇につながったのは、この構造を如実に示した事例です。
電力に使われる主要燃料それぞれの特性と、料金への影響を整理します。
LNG(液化天然ガス)
日本の火力発電燃料の中心。発電量の約40〜45%を占める。
価格連動: 国際LNG価格(アジアスポット価格)に連動。原油価格との相関が高い長期契約も多い。
料金反映: 約2〜3か月のタイムラグで燃料費調整額に反映。
石炭
安定・安価な電源として利用。発電量の約30〜35%を占める。
価格連動: 豪州産一般炭の国際市況に連動。LNGより価格変動が大きい傾向がある。
料金反映: 約2〜3か月のタイムラグで燃料費調整額に反映。
石油(重油・原油)
ピーク時の補完電源として利用。シェアは減少傾向。
価格連動: WTI・ブレント原油価格に連動。ただし発電での利用比率は低下している。
料金反映: 燃料費調整額の算定基準に含まれる。
燃料費調整額は、燃料価格の変動を一定のルールに従って自動的に料金に反映する仕組みです。算定から請求書への反映までの流れを確認します。
基準燃料価格の設定
電力会社の料金認可時に設定された燃料の「基準価格」を基準として、現在の平均輸入価格との差額を算出します。
3か月の平均輸入価格の算出
直近3か月の原燃料の平均輸入CIF価格(LNG・石炭・石油の加重平均)を各月のデータから算出します。
調整単価の計算
算出した平均輸入価格が基準価格を上回れば正の調整額(追加請求)、下回れば負の調整額(割引)となります。
請求書への反映
当月の使用電力量(kWh)に調整単価を乗じた金額が燃料費調整額として請求書に加算・差引されます。
燃料費調整額には上限が設定されている場合がありますが、上限を超えた超過分は電力会社が負担するか、または次期の料金改定に反映されることになります。詳しくは 燃料費調整額の仕組み をご参照ください。
燃料費調整額は3か月前後のタイムラグをもって料金に反映されます。このため、燃料価格の変動を見ておくことで、今後の電気料金の方向性を先読みするヒントになります。
先行指標として使えるもの
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
確認のタイミング
電力会社は毎月の燃料費調整単価を公表しています。来月以降の調整単価の予測には、直近3か月の燃料輸入CIF価格を確認する方法があります。経済産業省の輸入統計が参考になります。
燃料価格リスクを経営管理の観点から把握するためのポイントを整理します。
為替(円安)が燃料輸入コストをさらに押し上げる仕組みについては 為替と法人電気料金の関係 をご覧ください。
原油・LNG・石炭の国際価格は、燃料費調整額を通じて約2〜3か月のタイムラグをもって法人電気料金に反映されます。日本の電力供給は化石燃料火力への依存度が高く、地政学リスクや国際市況の変動が電気料金に直結しやすい構造です。燃料価格の動向を先行指標として確認し、契約見直しや省エネ・自家消費投資の判断材料にすることが有効です。
現在の契約条件と燃料価格シナリオをもとに、電気料金の変動幅を試算できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。