2021年度から始まった容量市場制度により、電力の安定供給を確保するための発電設備の「容量」維持コストが、小売電気料金を通じて法人に転嫁されるようになりました。2024年度以降、この「容量拠出金」が本格的なコスト増加要因として注目されています。
容量市場の仕組みとその料金への影響を理解することで、今後の電力コスト動向をより正確に予測できます。
このページでわかること
容量市場とは、電力の安定供給に必要な発電設備の「容量(供給力)」をあらかじめ確保するための仕組みです。電力自由化が進む中で、発電設備への投資が不足し将来的な供給不足が生じることを防ぐために、2021年度から導入されました。
電力は「電力量(kWh)」だけでなく、必要なときに必要な量を出力できる「供給力(kW)」の確保が不可欠です。容量市場では、この供給力を将来4年分まとめて確保するためのオークションが毎年実施されます。
容量市場は電力量の取引ではなく、「いざとなれば電力を供給できる態勢を維持することへの対価」を支払う仕組みです。このため、発電量が少ない時期でも発電設備の維持コストを支援する役割を担っています。
容量市場で決定したコストが法人の電気料金に反映されるまでの4段階を確認します。
容量市場オークションの実施
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が毎年オークションを実施し、4年後の供給力を確保します。発電事業者や需要家(需要応答リソース)が供給力を入札します。
約定した容量価格の決定
入札価格のうち需要量を満たすラインの価格(約定価格)が決定します。この価格に確保された供給力(MW)を掛けた総額が容量市場コストになります。
小売事業者への費用配分
容量市場の総コストは、各小売事業者の供給実績(販売電力量)に応じて按分されます。需要家規模が大きいほど負担額が大きくなります。
容量拠出金として法人に転嫁
小売事業者は負担した容量市場コストを「容量拠出金」として顧客の料金に転嫁します。2024年度から本格的な転嫁が始まり、年々上昇する見通しです。
容量市場の約定価格は、2023年に実施されたオークション(2027年度向け)で大幅に上昇しました。これは供給力不足への懸念と、電源投資コストの上昇を反映したものです。
2024年度以前
容量市場の導入(2021年度)以降、段階的に転嫁が開始。影響額は限定的。
2024〜2026年度
約定価格が高騰したオークション結果が転嫁される時期。1kWhあたり数円規模の影響が現れ始めた。
2027年度以降
さらなる転嫁額の増加が見込まれるが、再エネ普及・省エネ・需要応答の拡大により変動する可能性がある。
容量拠出金の詳細や具体的な影響額の試算については、 容量拠出金の仕組みと影響 もご参照ください。
容量拠出金の請求書への反映方法は電力会社・プランによって異なります。主な反映方式を整理します。
電力量料金単価に含める方式
従量料金の単価に容量拠出金相当分を上乗せする形。見た目上は単価改定に見えるが、実態は容量コストの転嫁。
容量拠出金として別立てで請求
燃料費調整額と同様に、「容量拠出金」として請求書に別項目で記載する方式。変動状況が透明で確認しやすい。
基本料金への上乗せ方式
契約電力(kW)に応じた容量拠出金を基本料金に上乗せする方式。使用量(kWh)ではなく需要規模に比例する。
A.①自社発電、②相対契約(特定発電事業者から購入)、③JEPX市場、④先物市場、⑤再エネPPA、の5経路が主流です。各事業者の調達構成は公表されています。
A.需給バランスで決まります。需要が高い・供給が逼迫すると価格上昇、再エネ大量発電や需要低下で価格下落。30分単位で売買されます。
A.将来の供給力(発電所)を確保するための市場です。2020年に初回オークション開始、2024年から供給開始。コストは小売事業者経由で需要家に転嫁されます。
A.容量市場は「将来の発電能力」を取引、需給調整市場は「リアルタイムの調整力」を取引。両者は補完関係にあり、安定供給の二本柱です。
A.東京商品取引所(TOCOM)・欧州エネルギー取引所(EEX)で取引可能。大手法人がリスクヘッジ目的で活用する事例があります。中小企業には敷居が高め。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
確認のポイント
現在の契約書・料金表で容量拠出金の転嫁方法を確認する。見積比較時には、容量拠出金の扱いを統一して比較することが重要。
容量拠出金は、省エネや節電で直接削減できるコストではありませんが、以下の観点から対応を検討できます。
容量市場は、電力の安定供給に必要な発電設備の容量を確保するための制度で、そのコストは容量拠出金として法人電気料金に転嫁されます。2024年度以降、この転嫁額が本格的に増加する見通しであり、燃料費調整額・再エネ賦課金に続く電気料金の上昇要因として認識しておく必要があります。今後の電力コスト管理においては、容量拠出金の動向も継続的に確認することが重要です。
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拠出金の定義・単価表・法人月額試算・4 つの対策をまとめた起点記事。
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容量拠出金の算定方法と法人への影響額。
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燃料費調整額の算定方法と変動要因。
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法人電気料金の明細の見方
請求書の各項目と容量拠出金の確認方法。
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容量市場の供出側となって収益を得る法人向けガイド。
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