上下水道施設は、取水・送水・配水ポンプや下水処理の曝気設備など、24時間・365日停止できない大電力設備を多数抱えています。電気料金は施設運営コストの中で最大の変動費となりやすく、料金単価の変動が直接的に運営費用を押し上げます。
このページでは、上下水道施設特有の負荷特性を踏まえ、電気料金リスクの把握と契約見直しの考え方を整理します。
このページでわかること
上下水道施設の電気料金は、以下の構造的な要因から高止まりしやすい特性があります。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由 で確認できます。
上下水道施設の電力使用は設備カテゴリごとに特性が大きく異なります。各設備の特性を理解しておくことが、見直しの優先度判断と設備投資効果の予測に役立ちます。
ポンプ設備(取水・送水・配水)
上水道施設では取水ポンプ・送水ポンプ・配水ポンプが24時間稼働し、電力消費の大半を占めます。高揚程・大流量のポンプは単体で数百kWに達することがあり、施設全体の電力コストを左右する主要因です。
下水処理設備(曝気・汚泥処理)
下水処理施設では、活性汚泥法の曝気槽に大型ブロワが必要で、曝気設備だけで処理場全体の電力消費の40〜60%を占めることがあります。汚泥濃縮・脱水設備も継続的な電力を消費します。
24時間・365日の停止不可運用
上下水道は市民生活のインフラであり、停電や設備停止が許容されない施設です。供給安定性が最優先であるため、電力契約でも停電リスクや停止条項への対応を慎重に確認する必要があります。
浄水処理設備・計測制御システム
凝集沈殿・ろ過・消毒などの浄水処理設備、および計測監視制御システムも常時電力を消費します。これらは消費電力は比較的小さいものの、停止できない設備として予備電源確保が必要です。
上下水道施設は、供給安定性と予算管理の観点から、固定プランとの親和性が高い施設類型です。
固定プランが向きやすい理由
市場連動を検討する場合の注意
固定プランが向く法人の特徴は 固定プランが向く法人の特徴 で、市場連動プランのリスクについては 市場連動プランが向かない法人の特徴 で詳しく解説しています。
特別高圧・高圧契約が多い上下水道施設では、契約電力と基本料金の関係を確認することが見直しの第一歩です。
上下水道施設は季節による水需要の変動があります。夏場の水需要増大に伴うポンプ稼働時間の延長や、降水量に依存する流入水量の変化が電力使用量に影響します。直近2〜3年分の月別使用量と最大需要電力の推移を確認し、ピーク月と閑散期の差を把握しておくことが見直しの基礎になります。
中規模以上の処理場では特別高圧や高圧契約が適用されていることが多いです。現在の契約電力が実態の最大需要電力と適切に対応しているか、また過去に設備更新や増設があった場合に契約条件が見直されているかを確認します。契約電力の過大設定は基本料金の無駄払いにつながります。
上下水道は公共インフラであり、電力供給の安定性が最優先事項です。市場連動型プランを検討する場合は、供給停止条項・不足時の対応・停電時のバックアップ電源確保について事前に確認が必要です。地方公共団体が管理する施設では、議会説明の観点から契約変更の理由を明確にしておくことも重要です。
古いポンプを高効率インバーター制御型に更新することで、電力使用量を大幅に削減できる場合があります。ポンプの経年劣化は電力効率の低下をもたらすため、設備更新のタイミングと電力契約の見直しを同時に検討すると、コスト削減効果が最大化できます。
契約見直しの全体的な進め方は 法人の電力契約見直しチェックリスト で整理しています。
上下水道施設では、設備更新と電力契約の見直しを組み合わせることで、長期的な運営コスト削減が図れます。主な設備対策は以下のとおりです。
ポンプのインバーター化
定速運転のポンプをインバーター制御に変更することで、負荷に応じた回転数制御が可能になり、電力使用量を大幅に削減できます。改修費用の回収年数が比較的短い対策として評価されています。
高効率ブロワへの更新
下水処理の曝気設備では、旧型のルーツブロワから高効率型(ターボ式・スクリュー式)への更新で消費電力を20〜30%程度削減できる事例があります。
太陽光発電・消化ガス発電
広大な敷地を持つ処理場では太陽光発電の設置が可能です。また下水処理場では消化ガスを利用したコジェネレーションの導入実績があります。
深夜電力の活用
調整可能な処理工程を深夜帯にシフトすることで、時間帯別料金が安い時間の使用量を増やしコスト削減につなげる方法があります。
上下水道施設の契約見直しでは、以下の観点でシミュレーターを活用することで、財政担当・議会への説明材料となる数値を把握できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
はい、使用パターン・ピーク時間帯・契約区分が業種ごとに異なるため、見直しの着眼点も変わります。
経済産業省の電力取引報や新電力ネットの統計データで業種別の目安を確認できます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
上下水道施設の契約条件をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プランと市場連動プランの比較にも活用できます。
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中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。