本記事は実在企業ではなく、業界統計・公開事例から再構成した代表シナリオであり、特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。24時間営業のフィットネスジムは、深夜・早朝を含めて常時空調・換気・照明を回し、シャワー給湯、有酸素・筋力トレーニングマシンの動力、看板・店内照明といった電力・熱需要が複合します。特徴は、来館者が少ない無人・低利用時間帯(スタッフ不在の深夜帯など)でも設備が動き続けやすく、ここに需要制御の余地が残る点です。同じ『体を動かす施設』でも、自治体が運営し日中利用が中心でイベント時に負荷が跳ねる公共体育館とは、運営主体・稼働時間・無人時間帯の扱いが大きく異なります。本記事は民間の24時間営業ジムで、無人/低利用時間帯の需要制御とシャワー給湯を主眼に置く点で読み分けてください。無人/低利用時間帯の空調・照明の需要制御(人感・時間帯・ゾーニング)、シャワー給湯のヒートポンプ化・貯湯運用、換気・マシンの効率化、看板/店内照明のLED化・減光、多店舗の契約一括見直し、デマンド/基本料金の最適化によって電気代の構造をどう改善できるかを、中立な社団法人の視点で代表シナリオとして整理します。実数値は契約条件・設備構成・立地・稼働実態により異なるため、本記事の削減幅はあくまで目安(代表値)としてご覧ください。読み進める際は、自社が『どの規模・どの設備構成・どの立地に近いか』を意識し、後半のチェックリストと業種別電気代計算機を使って、代表シナリオと自社との差を具体的に確かめていただくと、実践に落とし込みやすくなります。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
このページでわかること
※ 本記事は業界統計・公開事例から再構成した代表シナリオです。数値は目安であり、実数値は契約条件・設備構成・立地・稼働実態により異なります。本記事は中立的立場で作成しており、特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。 公共体育館の電気代見直し(自治体運営・日中利用中心の読み分け)や 業種別電気代計算機もあわせてご活用ください。
本事例の業種特性・規模・契約区分・熱需要・コスト構造の前提を整理します。ここでの前提が自社と近いほど、後半の削減アプローチや代表シナリオがそのまま参考になりやすく、逆に前提が大きく異なる場合は効く打ち手や削減幅も変わってきます。自社の条件と照らして読み進めてください。同じ運動施設でも運営主体・稼働時間が異なる 公共体育館の電気代見直し や、給湯・入浴が重なる 温浴施設の電気代見直し も参照してください。
業種特性(24時間稼働・無人/低利用時間帯・給湯の複合)
24時間フィットネスジムは深夜・早朝を含めて営業し、常時の空調・換気・照明に加え、シャワー給湯、有酸素マシン・筋力マシンなどの動力、看板・店内照明が複合します。特筆すべきは、来館者が少ない無人・低利用時間帯(深夜帯やスタッフ不在時間)でも設備が動き続けやすい点で、ここに需要制御の余地が残ります。会員はいつでも来館できるため、空調・照明・換気を一律に止めることはできませんが、実際の来館は朝と夜に集中し、深夜から早朝にかけては利用がごく少数にとどまる店舗が多いのが実態です。同じ『体を動かす施設』でも、自治体が運営し日中利用が中心でイベント時に負荷が跳ねる公共体育館とは、運営主体(民間チェーン)・稼働時間(24時間)・無人時間帯の扱いが大きく異なります。本記事は民間の24時間営業ジムで、無人/低利用時間帯の需要制御とシャワー給湯を主眼に置く点で読み分けてください。公共体育館の記事が日中の集中利用とイベント負荷を主眼にするのに対し、本記事は『常時稼働のなかで無駄をどう削るか』を主眼に、こうした特性を代表シナリオとして整理します。フィットネスジムの電力は、会員がトレーニングする空間の空調・照明・換気という『快適性と安全に直結する部分』と、シャワー給湯や看板・待機電力という『サービスや集客に付随する部分』に大別できます。前者は削り過ぎると会員満足や退会に跳ね返るため慎重さが求められますが、後者や無人時間帯の過剰運転には比較的踏み込みやすく、優先的に着手できる余地が残ります。この『どこを削り、どこを守るか』の切り分けが、24時間ジムの省エネ設計の勘所になります。
規模(単店舗〜多店舗チェーン、低圧〜高圧受電)
24時間ジムは、住宅街のワンフロア型マシン特化店(低圧受電)から、シャワー・スタジオ・浴室を備える大型店や、複数店舗を運営するチェーン(高圧受電の店舗を含む)まで幅があります。単店舗では低圧電灯・低圧電力の組み合わせが中心ですが、シャワー給湯や空調が大きい大型店・多店舗では契約電力(デマンド)が高めになりがちです。基本料金が契約電力で決まるため、無人時間帯を含めた24時間のピークをどう抑えるかが料金に直結します。フランチャイズ展開する事業者では、店舗ごとに開業時期・設備・立地が異なり、契約メニューがばらばらのまま放置されているケースも珍しくありません。本記事は業界統計・公開事例から再構成した代表シナリオとして、単店舗から多店舗チェーンまで規模の異なる複数パターンを想定し、規模ごとに効きやすい打ち手が変わることを整理します。単店舗の低圧受電では電力量料金の削減や運用改善が中心になりやすく、シャワー・浴室を備える大型店や高圧受電の店舗では契約電力(デマンド)の抑制や給湯設備の効率化のインパクトが大きくなります。多店舗チェーンでは、個々の店舗改善に加えて、店舗横断の標準化と契約の一括見直しという『チェーンならではの打ち手』が加わり、削減の総額が大きくなりやすい反面、実行にあたっては本部と各店の役割分担・データ共有の仕組みづくりが前提になります。
契約区分(基本料金+電力量料金+調整費)
電力料金は契約電力に基づく基本料金、使用量に応じた電力量料金、燃料費調整額や再エネ賦課金などで構成されます。24時間ジムは空調・換気・給湯が連続的に電力量が大きく、電力量料金の比率が高くなりやすい一方、開店直後や利用集中帯(朝・夜のピーク)に空調・シャワー・マシンが重なるとデマンドが跳ね、基本料金も膨らみます。低圧では従量部分、高圧では契約電力の抑制が効きやすく、量(kWh)の削減と契約電力の抑制の双方が効く構造です。とりわけ深夜も稼働し続けるベース負荷が大きい業態のため、ベース部分の削減がそのまま年間の使用量削減に直結しやすい点が特徴です。多店舗では契約の一括見直しでスケールメリットも狙え、店舗横断で条件を揃えることが管理コストの低減にもつながります。加えて、燃料費調整額や再エネ賦課金といった調整費は購入電力量に連動するため、使用量そのものを減らすと基本料金・電力量料金だけでなく調整費の負担も相対的に軽くなります。つまり24時間ジムでは、ベース負荷の削減が『量×単価×調整費』の複数の項目に同時に効くため、深夜帯を含む常時稼働の無駄を削ることの費用対効果が高くなりやすい構造です。請求書の内訳を項目ごとに分解し、どの項目が重いのかを把握することが、優先順位付けの第一歩になります。
熱需要(シャワー給湯・空調に削減余地が残る)
シャワー設備を持つ店舗では給湯に電気やガスを使い、電気温水器やヒートポンプ給湯機(貯湯式)の効率・運用に削減余地が残りやすい領域です。空調は24時間ほぼ連続運転となり、無人・低利用時間帯まで設定温度・風量を落とさず回し続けているケースが多く見られます。換気も法令・快適性の範囲で過剰になりがちで、CO2濃度や在館人数に応じた可変制御がされていない店舗が少なくありません。給湯は利用が朝・夜に偏る一方、貯湯タンクは終日保温されるため、湯増しのタイミングと保温ロスに改善余地が残ります。設備別の熱・電力の状態を把握することが省エネの起点になります。どの設備がいつ、どれだけの熱・電力を使っているかを可視化しないと、感覚的な省エネにとどまりがちです。とくに給湯は、シャワーの利用が朝と夜に偏る一方で、貯湯タンクの保温は終日続くため、需要と供給のタイミングがずれた分がそのまま保温ロスになります。ヒートポンプ給湯機への更新や貯湯運用の最適化を検討する際は、まず月別・時間帯別のシャワー利用量と給湯機の消費を突き合わせ、どの時間帯にどれだけの湯が必要かを把握することが出発点になります。空調についても、外気温と設定温度の関係、無人時間帯の運転状況を実測し、快適性を損なわずに緩められる余地を定量化することが重要です。数値は代表シナリオの目安です。
コスト構造(電力・給湯・稼働時間が絡む)
24時間ジムのエネルギーコストは、空調の電力、シャワー給湯の電力・ガス、換気・マシンの動力、看板・店内照明が絡み合い、立地(気候)や会員数・利用時間帯の偏りの影響も受けます。寒冷地では暖房、温暖地では冷房が大きくなるなど、地域差も無視できません。どの設備でどのエネルギーをどれだけ使うか、そして無人/低利用時間帯にどれだけ無駄が出ているかを把握することが、需要制御・給湯効率化・照明LED化・契約最適化の判断の出発点になります。とくに24時間稼働はわずかな待機・過剰運転が長時間積み上がるため、単価だけでなく『時間×電力』の観点で無駄を洗い出すことが重要です。たとえば一台あたりの待機電力は小さくても、多数の有酸素マシンやサイネージが24時間点きっぱなしなら、年間では無視できない金額になります。逆に言えば、こうした常時稼働の無駄を削る施策は、投資が小さくても効果が長時間積み上がるため、回収が早くなりやすいという利点があります。会員数や利用の季節変動、立地の気候差によっても内訳は変わるため、単年度の平均だけでなく、繁忙期と閑散期の両方でコスト構造を確認しておくと、対策の優先順位を見誤りにくくなります。本記事の金額はすべて代表シナリオの目安であり、特定企業の実数ではありません。
見直し前に抱えていた電気代・給湯コストの構造上の課題を整理します。これらは無人/低利用時間帯を抱える多くの24時間フィットネスジムで共通して見られる論点です。自社の状況と照らし合わせ、当てはまる項目がいくつあるかを確認してみてください。当てはまる項目が多いほど、これから紹介するアプローチによる削減余地が大きい可能性があります。
無人/低利用時間帯も空調・照明を絞らず稼働
深夜帯やスタッフ不在の時間、来館者がほとんどいない時間帯でも、空調を日中と同じ設定温度・風量で回し続け、店内照明も全灯のままにしていた代表シナリオを想定します。人感センサーや時間帯スケジュール、ゾーニング(マシンエリア・スタジオ・更衣室ごとの制御)が未導入で、誰も使っていない空間まで冷暖房・照明のエネルギーを消費していました。24時間営業ゆえに『止められない』という思い込みが強く、来館データを踏まえた運転の最適化が検討されないまま、需要制御の余地が手つかずで残っていました。実際には深夜帯に空調設定をわずかに緩めるだけでも積み上げると相応の削減になり得ますが、その効果が定量化されていませんでした。誰がいつ来館しているかのデータと設備運転が結び付いておらず、運転は開業時の初期設定のまま固定化されていました。空調のスケジュール機能やタイマー、人感連動といった基本的な制御機能が備わっているのに使いこなされていない、あるいは機能はあってもゾーニングされておらず全館一律でしか制御できない、というケースも見られました。深夜帯に来館者がいない、あるいはマシンエリアの一部しか使われていない時間でも、フロア全体を日中と同じ環境に保ち続けることで、快適性の観点では過剰な運転が積み重なっていました。こうした無駄は日々の請求では埋もれて見えにくく、時間帯別に分解して初めて『削れる無駄』として顕在化するものでした。
シャワー給湯が旧型・非効率で貯湯運用も最適化されていない
シャワー給湯に旧型の電気温水器やガス給湯を使い続け、ヒートポンプ給湯機(高効率)への置き換え余地があるにもかかわらず検討が進んでいませんでした。貯湯タンクの湯増し時間帯が電力ピークや割高な時間帯と重なり、利用の少ない時間の保温ロスも生じていました。給湯温度・循環の設定が『昔からこの設定』のままで、利用実態に合わせた運用最適化がされておらず、熱と電力の双方で非効率が残っていました。シャワーの利用が朝・夜に偏るにもかかわらず、終日同じ温度・湯量で沸かし続け、需要の谷間でも保温のために電力を消費していました。給湯機の効率や消費量が設備台帳・請求データと突き合わせて把握されておらず、更新の判断材料が乏しい状態でした。シャワーヘッドや混合栓も旧型で、節湯タイプへの交換余地が残っていました。給湯は衛生管理(レジオネラ属菌対策など)のために一定温度を保つ必要があり、単純に温度を下げれば良いという性質のものではないため、衛生要件を満たしながら効率と運用を改善する視点が欠けていました。結果として、シャワー利用のピークに合わせた合理的な湯増し計画がなく、需要の少ない時間帯まで高温を維持し続け、保温・待機のエネルギーを恒常的に消費していました。給湯は熱と電力(またはガス)の両面に関わるため、光熱費全体で捉え直す余地が大きい領域として残っていました。
看板・店内照明が旧型で常時全灯、換気・マシンも効率化余地
看板・店内照明に蛍光灯や旧型器具が残り、24時間全灯・全時間帯フル点灯で消費電力が大きく、LED化・減光・調光の余地がありました。換気ファンが常時最大風量で回り、CO2濃度や利用人数に応じた可変運転がされていませんでした。有酸素マシン(トレッドミル・バイク等)の待機電力やモニタ・サイネージ類の点けっぱなしなど、細かな待機ロスも積み上がっていました。24時間営業では、こうした小さな待機・過剰運転が長時間続くため、単体では小さく見えても年間では無視できない金額に膨らみます。設備別の見える化がなく、どの器具・機器がどれだけ電力を使っているかが把握されていないため、改善機会を取りこぼしていました。省エネは担当者の気付きに依存し、体系的な棚卸しがされていませんでした。照明については、営業時間が24時間であることを理由に『全灯が当たり前』という運用が固定化し、共用部・トイレ・更衣室・スタジオといったエリアごとに必要な照度が異なるにもかかわらず、一律の点灯パターンで運用されていました。看板照明も終日点灯で、深夜帯の集客効果と電力コストのバランスが検証されていませんでした。換気は、法令や快適性の観点から一定量を確保する必要がありますが、在館人数に対して過剰な風量で回り続け、その分だけ空調で調整した空気を余計に入れ替えることで、換気と空調の双方でエネルギーを消費するという悪循環も生じていました。これらは個別には小さくても、24時間という時間軸で積み上がると相応の規模になっていました。
利用集中帯でデマンドが跳ね、多店舗の契約もばらばら
朝・夜の利用集中帯に空調・シャワー給湯・マシンが重なり、契約電力(デマンド)のピークが高止まりしていました。ピークをずらす運用やデマンド監視の仕組みがなく、基本料金が過大になりがちでした。とりわけ夏冬の空調立ち上げとシャワー給湯の湯増しが同時間帯に重なると、瞬間的なピークが月間デマンドを押し上げ、その1回のピークが1年間の基本料金に響く構造でした。さらに多店舗チェーンでは店舗ごとに契約条件・メニューがばらばらで、一括見直しによるスケールメリットを取れていませんでした。全体の電力量は把握できても、店舗別・設備別・時間帯別の内訳がリアルタイムに見えず、改善は各店の経験に依存していました。良い運用をしている店舗のノウハウが他店に共有される仕組みもありませんでした。多店舗チェーンでは、同じ看板を掲げていても、開業時期・立地・設備世代の違いから店舗ごとに電力原単位(会員数あたり・面積あたりの使用量)に差が出ますが、その差の要因が分析されず、改善のヒントとして活かされていませんでした。契約面でも、店舗ごとに異なる時期・条件で個別に契約したメニューが残り、チェーン全体で見れば割高になっている店舗が混在していました。本部に電力・エネルギーを横断で見る担当や仕組みがなく、各店任せになっていたことが、こうした非効率が温存された背景にありました。
本ケースで採用した削減手法を整理します。単一施策ではなく、無人/低利用時間帯の需要制御を軸に、シャワー給湯の効率化・照明LED化・デマンド最適化・多店舗の契約一括見直しを組み合わせている点が特徴です。それぞれの打ち手は効く対象(使用量・ピーク・単価)が異なり、単独では部分最適にとどまりがちです。複数を組み合わせて初めて、量とピークと単価の三方向から電気代の構造に働きかけられます。
無人/低利用時間帯の空調・照明の需要制御(人感・時間帯・ゾーニング)
稼働を止めずに無駄な運転だけを削り購入電力量を削減
来館者の少ない時間帯を入退館データ・スマートメーターの実データで把握し、人感センサー・時間帯スケジュール・ゾーニングで空調・照明の運転を最適化します。マシンエリア・スタジオ・更衣室などをゾーンに分け、使われていない空間の設定温度を緩め、照明を減光・消灯します。24時間営業を維持しつつ、無人・低利用時間帯の過剰運転だけを削るのが要点です。たとえば深夜帯は空調の設定温度を数度緩め、スタジオなど未使用エリアは人感連動で照明を落とす、といった運用を組み合わせます。会員の快適性・安全(最低限の照度・空調・防犯)を確保する範囲で行い、実施後は来館データと満足度の両面で検証します。投資の小さい運用改善から段階的に進められるのが利点で、効果は立地・会員の利用時間分布により幅がある目安です。具体的には、まずスケジュール制御で深夜帯の空調設定温度を数度緩め、次に人感センサーで未使用エリアの照明を自動で減光・消灯し、さらにゾーニングで空調の吹き出しをエリア単位に分けて制御する、という順で高度化していくと、投資と効果のバランスを取りながら進められます。重要なのは、削減後も会員アンケートや退会率、来館者からの声をモニタリングし、快適性が損なわれていないかを確認することです。数字上の削減だけを追うと、体感温度の悪化や暗さで会員満足が下がり、長期的にはかえって不利になりかねません。『使う空間だけを快適に保ち、使わない空間の無駄を削る』という原則を、実データで運用に落とし込むことが要点です。
シャワー給湯のヒートポンプ化・貯湯運用最適化
熱需要の大きい給湯を源流から効率化
旧型の電気温水器やガス給湯を、利用実態に応じてヒートポンプ給湯機(高効率)へ置き換え、消費エネルギーを下げます。貯湯タンクの湯増しを電力の割安・低ピーク時間帯に寄せ、保温ロスと利用の少ない時間の空焚きを抑えます。シャワー利用が朝・夜に集中する店舗では、その直前に湯増しを寄せ、需要の谷間の保温を最小化する運用が効きます。給湯温度・循環・レジオネラ対策など衛生要件を満たす範囲で運用を適正化し、節湯シャワーヘッドなど給湯量そのものを抑える施策も併用します。置き換えは投資を伴うため、シャワー利用量と回収年数の見極めが前提で、補助金・税制の活用可能性も含めて評価します。ヒートポンプ給湯機は、外気の熱を利用して少ない電力で湯を沸かせるため、電気温水器やヒーター式に比べてエネルギー効率が高い一方、初期費用や設置スペース、寒冷地での能力低下などの制約もあり、すべての店舗に一律に適するわけではありません。シャワー利用の少ない小規模店では回収年数が長くなりやすく、まず節湯シャワーヘッドや貯湯運用の見直しといった低コスト施策で効果を確かめてから、設備更新の是非を判断するのが堅実です。導入する場合も、貯湯容量を利用実態に合わせて過不足なく設計し、湯増しを電力需要の谷間に寄せることで、量とピークの両面で効果を高められます。効果は利用量・給湯方式・立地の気候により幅がある目安です。
看板/店内照明のLED化・減光、換気・マシンの効率化
常時稼働の照明・換気・動力の稼働ロスを削る
看板・店内照明をLED化し、時間帯・エリアに応じた減光・調光・人感連動を導入して常時全灯の無駄を減らします。24時間点灯する看板や共用部照明はLED化の効果が長時間にわたり積み上がりやすく、投資回収が早い傾向です。換気ファンをCO2濃度・利用人数に応じた可変風量(インバータ制御)へ切り替え、過剰換気を抑えます。有酸素マシン・モニタ・サイネージ類の待機電力を管理し、閉店に近い低利用帯の待機を減らします。個々の効果は小さくても、24時間×多数の器具で積み上がると年間では相応の削減になります。多くは投資が小さく回収の早い施策で、まず着手しやすい打ち手です。照明のLED化は、消費電力の削減に加えて発熱が小さくなるため、夏場は空調負荷の軽減にも間接的に寄与します。また長寿命化により交換・保守の手間とコストも下がるため、削減効果は電気代だけにとどまりません。換気については、CO2センサーや在館人数に応じてファンの回転数を自動調整する仕組みにすると、必要なときに必要なだけ換気し、過剰換気による空調ロスを抑えられます。マシンやサイネージの待機電力も、閉店に近い低利用帯に一部を休止する運用や、主電源の管理で削減できます。これらの積み上げ型の施策は、目立たないものの費用対効果が高く、省エネの土台になります。効果は運用・器具構成により幅がある目安です。
デマンド/基本料金の最適化・多店舗の契約一括見直し
基本料金・単価面を契約と運用の両面で最適化
デマンド監視で空調・シャワー給湯・マシンの同時ピークを避け、給湯の湯増しや空調の立ち上げをずらしてピークを平準化し、契約電力(基本料金)を抑えます。夏冬の空調立ち上げが集中する時間帯を分散させるだけでも、月間デマンドの押し上げを防げる場合があります。契約電力が実態に対して過大でないかを検証し、適正化余地を確認します。多店舗チェーンでは店舗ごとにばらついた契約・メニューを一括で見直し、スケールメリットや高圧化・低圧最適化の余地を評価します。店舗横断で契約条件を揃えることは、請求管理・更新管理の手間を減らす効果もあります。契約電力の適正化にあたっては、過去のデマンド実績を精査し、たまたま生じた一時的なピークに引きずられて契約電力が過大に設定されていないかを確認します。デマンド監視装置を導入すれば、設定値に近づいた際に警報を出し、空調やマシンの一部を一時的に抑制してピークを未然に防ぐこともできます。多店舗では、電力使用量をまとめて交渉材料にすることで、単価やメニューの条件を有利にできる可能性がありますが、店舗ごとの立地・受電区分・使用パターンの違いを踏まえた精査が前提で、単純な一括化が常に最適とは限りません。本記事は代表シナリオとして観点を整理するもので、量の削減施策と組み合わせて評価することが前提です。特定の電力会社・契約形態を推奨するものではありません。
規模や店舗形態の異なる代表シナリオ3件で、Before/Afterと削減額の考え方を整理します。記載の削減幅は業界統計・公開事例から再構成した目安で、実際の効果は契約条件・設備構成・立地・稼働実態により異なります。実在企業の事例ではありません。各効果は年間使用量×改善単価で年間削減額を、年間削減額×5年で5年累計を算出した単純試算です。読者が電卓でそのまま追試できるよう、各シナリオに検算式を併記しています。自社の規模・設備・立地に最も近いシナリオを起点に、数字を自社の実態に置き換えて考えていただくのが効果的です。
① 住宅街の単店舗24時間ジム・無人時間帯の需要制御+照明LED化
Before:低圧受電のマシン特化型・単店舗24時間ジムが、無人/低利用時間帯も空調をフル運転し、看板・店内照明を常時全灯にしていた代表シナリオを想定します。深夜帯の来館はごく少数にとどまるにもかかわらず、日中と同じ設定温度・全灯のままで、誰も使っていない時間帯まで冷暖房・照明のエネルギーを消費していました。人感・時間帯・ゾーニングによる制御が未導入で、24時間の稼働がそのままベース負荷を押し上げていました。マシン特化型で常駐スタッフのいない時間帯が長いにもかかわらず、環境は終日一定で、電気代の内訳を時間帯別に分解して見たことがない状態でした。
After:入退館データで低利用時間帯を把握し、人感センサー・時間帯スケジュール・ゾーニングによる空調・照明の需要制御と、看板/店内照明のLED化・減光を組み合わせ、営業と最低限の快適性・防犯を維持したまま購入電力量を抑えた代表シナリオです。投資が小さく回収の早い施策から段階的に進めました。空調はスケジュールとゾーニングで深夜帯の設定を緩め、照明は人感連動と全体のLED化・減光を組み合わせ、看板照明も時間帯で減光しました。会員の快適性・防犯を確保しつつ、誰も使っていない空間の無駄だけを削るという方針を徹底した点が要点です。数値は業界統計・公開事例から再構成した目安です。
効果(目安):年間使用量 約30万kWh × 改善 約1.5円/kWh = 年間 ▲45万円(検算:30×1.5=45)。さらに 5年累計 ▲45万円 × 5年 = ▲225万円(検算:45×5=225)。需要制御・LED化は比較的着手しやすく回収も早い傾向ですが、実額は立地・会員の利用時間分布・エネルギー単価により異なります。特定の電力会社・契約形態を推奨するものではありません。
② シャワー併設の中規模24時間ジム・給湯ヒートポンプ化+デマンド最適化
Before:シャワー・更衣室を備える中規模24時間ジムが、旧型給湯の非効率と、朝・夜の利用集中帯に空調・シャワー給湯・マシンが重なるデマンド高止まりを抱えていた代表シナリオを想定します。貯湯の湯増しがピーク時間帯と重なり、需要の谷間でも保温ロスが生じ、基本料金が過大になりがちでした。給湯量・温度も終日一律のまま見直されていませんでした。旧型のシャワーヘッド・混合栓が残り、給湯量そのものを抑える余地も手つかずで、熱と電力の双方に非効率が積み重なっていました。
After:シャワー給湯のヒートポンプ化・貯湯運用最適化(湯増しの時間帯シフト・節湯シャワーヘッド)に、デマンド監視によるピーク平準化と契約電力の適正化を組み合わせ、量と基本料金・単価面を抑えた代表シナリオです。衛生要件を満たす範囲で運用を適正化しました。給湯は朝・夜のシャワー利用ピークの直前に湯増しを寄せ、需要の谷間の保温を最小化し、あわせてデマンド監視で空調とシャワー給湯の同時ピークを避ける運用に切り替えました。設備更新と運用改善・契約適正化を組み合わせ、量とピークの双方に働きかけた点が特徴です。数値は目安で、実在企業の事例ではありません。
効果(目安):年間使用量 約55万kWh × 改善 約1.6円/kWh = 年間 ▲88万円(検算:55×1.6=88)。さらに 5年累計 ▲88万円 × 5年 = ▲440万円(検算:88×5=440)。シャワー利用量が多く契約電力が高いほど効果が出やすい傾向ですが、実額は利用実態・給湯方式・契約条件により異なります。量(kWh)の削減施策と併せて評価することが前提です。
③ 多店舗チェーン・全店の需要制御/給湯効率化+契約一括見直し
Before:複数店舗を運営する24時間ジムチェーンで、店舗ごとに需要制御や給湯効率化がばらつき、契約条件・メニューも店舗ごとにばらばらだった代表シナリオを想定します。良い運用をしている店舗のノウハウが他店に共有されず、設備更新と契約の双方に削減余地がありました。開業時期の異なる店舗が混在し、旧型設備の残る店舗ほど改善余地が大きい状態でした。店舗別・時間帯別の使用実態を横断で見る仕組みがなく、どの店舗にどの打ち手が効くのかを本部として把握できていませんでした。
After:効果の出た店舗の運用を基準に、全店で無人/低利用時間帯の需要制御・照明LED化・給湯効率化を標準化し、複数店舗の電力契約を一括で見直してスケールメリットを取りにいった代表シナリオです。エネルギー管理システムで店舗横断のモニタリング体制を整え、補助金・税制の活用可能性も含めて回収年数を試算します。まず効果の出やすい店舗でパイロット導入して投資対効果を確かめ、そのうえで全店へ横展開する順序を取りました。店舗ごとの電力原単位を比較し、消費の大きい店舗から優先的に着手することで、限られた投資で全体の削減総額を大きくすることを狙った点が特徴です。数値は目安で、実在企業の事例ではありません。
効果(目安):年間使用量 約120万kWh × 改善 約1.4円/kWh = 年間 ▲168万円(検算:120×1.4=168)。さらに 5年累計 ▲168万円 × 5年 = ▲840万円(検算:168×5=840)。多店舗の一括見直しはスケールメリットが出やすい反面、店舗ごとの契約条件・立地差の精査が前提で、実額は店舗数・稼働・補助金採択の有無により変動します。特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。
本記事の数値は、特定企業の実績ではなく、公開された業界統計・採択事例集・公的データから再構成した代表シナリオのレンジです。数値の作り方と限界をあらかじめ明らかにすることで、読者が過信も過小評価もせず、自社の判断材料として適切に使えるようにすることが狙いです。前提を以下に明記します。
数値の位置づけ(代表シナリオ・目安・特定企業でない)
本記事のBefore/Afterや削減額(①▲45万円/②▲88万円/③▲168万円)は、特定企業の実績ではなく、経産省・資源エネルギー庁の統計やSII採択事例、業界統計から再構成した代表シナリオの目安です(2026年度時点)。実在の24時間フィットネス事業者を指すものではなく、特定チェーン・店舗の実データを転載したものでもありません。改善単価(1.4〜1.6円/kWh)は、需要制御・給湯効率化・照明LED化・契約最適化を組み合わせた場合に見込みうる購入単価・使用量の複合的な改善幅を、業種横断の公開情報から幅を持って設定した代表値です。5年累計は年間削減額を単純に5倍した機械的な試算であり、燃料・電力単価や稼働・会員数の変動は織り込んでいません。実際の効果は契約条件・設備構成・立地・稼働実態により異なります。
削減額の考え方(2段電卓の検算)
各代表シナリオは、まず年間使用量×改善単価で年間削減額を算出し(①30万kWh×1.5円=45万円、②55万kWh×1.6円=88万円、③120万kWh×1.4円=168万円)、次に年間削減額×5年で5年累計を算出しています(①45×5=225、②88×5=440、③168×5=840、単位は万円)。読者が電卓で追試できるよう、あえて単純な掛け算で構成し、各シナリオ本文にも検算式を明記しています。これは効果の規模感を示すための単純累計で、割引率・再投資・単価変動を考慮した精緻なキャッシュフローではありません。投資回収の判断では、保守費・設備寿命・補助金採択の有無を含めたライフサイクルで評価してください。実際には初期投資・工事費・更新費がかかるため、5年累計がそのまま純利益になるわけではない点に注意が必要です。たとえばシャワー給湯のヒートポンプ化のように投資額の大きい施策では、5年累計の削減額から初期投資を差し引いて初めて正味の効果が見えてきます。一方、運用改善や設定変更のように投資がほぼゼロの施策では、削減額の大部分がそのまま効果として残ります。同じ『年間▲◯◯万円』でも、投資の大小によって経営的な意味合いは大きく異なるため、金額の規模感だけでなく、それを生み出すのにいくらかかったのかとセットで評価することが欠かせません。本記事の検算はあくまで規模感の把握を助けるための単純計算であり、正式な投資判断は個別の見積もりとキャッシュフローに基づいて行ってください。
金額表現の扱い
24時間ジムは空調・給湯・換気が長時間連続で稼働するため、わずかな効率改善や無人時間帯の需要制御でも年間で相応の金額になり得ますが、本記事の金額はあくまで代表シナリオの目安であり、特定企業の実数ではありません。24時間×365日という稼働の長さが、小さな単価・使用量の改善を大きな年間差に変換する点が、この業態の金額感の特徴です。断定的な普遍化は避け、実額は設備の状態・立地・稼働・エネルギー単価・契約条件で変動する点を併記しています。とりわけ気候(寒冷地/温暖地)や会員数の季節変動により空調負荷は大きく上下します。自社の設備別・店舗別データに基づく試算を前提としてください。なお本記事で用いた『万円』『万kWh』といった単位や概数は、読者が全体像をつかみやすいように丸めた表現であり、細かな端数まで正確な実測値を示すものではありません。実務では、契約種別ごとの単価表、時間帯別の従量単価、力率割引、燃料費調整額、再エネ賦課金などを個別に反映して精算されるため、ここでの単純な掛け算よりも計算は複雑になります。あくまで『どの施策が、どのくらいの規模で効きそうか』を大づかみに理解するための代表シナリオとしてご覧ください。
制度・規格の名称と再エネ賦課金
参照する制度は正式名称を用います。SII(環境共創イニシアチブ)の省エネ補助金、GX・カーボンニュートラル投資促進税制、ものづくり補助金、ヒートポンプ関連の補助などはいずれも公的に定められた名称で、対象設備・要件・公募期間は最新の公募要領で要確認です(2026年度時点)。制度の名称・内容は年度ごとに改正されるため、本記事の記載時点と申請時点で条件が変わっている可能性があります。なお購入電力量に課される2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWhです。この単価は購入電力量に比例するため、使用量を減らすと再エネ賦課金の負担も相対的に小さくなります。制度や補助金の名称・内容・単価は、本記事の作成時点(2026年度)のものであり、将来にわたって同じとは限りません。実際に申請・契約・投資を検討する際は、必ず各制度の公式サイトや最新の公募要領、電力会社の料金表など一次情報にあたり、条件を確認してください。本記事は理解を助けるための整理であって、個別の制度適用や契約条件を保証するものではなく、採択を前提にせず一次情報の確認が前提となります。
※ 数値は2026年度時点の公開情報(経済産業省・資源エネルギー庁・SII採択事例集・各業界統計等)から再構成した代表シナリオの目安です。実数値は契約条件・使用実態により異なります。本記事は特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。
同様の取り組みを自社で進める際の、データ収集から効果検証までの実行プロセスを整理します。省エネは一度の設備投資で完結するものではなく、現状把握・分析・実行・検証を繰り返すことで効果を定着させ、積み上げていく取り組みです。以下の流れを一つの型として、自社の体制や規模に合わせて無理のない範囲から着手してください。
データ収集・設備別/時間帯別使用量の把握
受電の電力量・デマンド記録に加え、空調・シャワー給湯・換気・照明・マシンごとの消費電力、そして時間帯別(特に無人/低利用帯)の使用実態を棚卸しします。あわせて入退館データを重ね、どの時間帯に来館が少ないのかと設備の稼働を突き合わせます。どの時間帯にピークができ、どの設備が無人時間帯まで無駄に動いているかを把握することが、需要制御・給湯効率化・照明LED化・契約最適化の出発点です。簡易計測やスマートメーターで設備別・時間帯別に見える化し、ベース負荷とピーク、無人時間帯の無駄を切り分けます。多店舗なら店舗間比較を行い、同じ規模でも消費が大きい店舗を特定して優先順位付けに使います。この段階では、直近1年分の月別・時間帯別データを最低限そろえ、できれば季節のピーク(真夏・真冬)を含む2〜3年分を確認して、外れ値や異常なピークの背景を把握しておくと精度が上がります。会員数・営業形態・立地の気候といった条件も併せて記録し、単純な使用量ではなく『会員数あたり』『床面積あたり』の原単位で比較すると、店舗間の良し悪しが公平に見えてきます。データが十分にない場合は、代表的な設備の定格と稼働時間から概算し、後日の実測で補正する前提で進めても構いません。まずは『どこに、どれだけ、いつ使っているか』の全体像をつかむことが、以降の打ち手の精度を左右します。
分析・診断と打ち手の切り分け
第三者の省エネ診断やエネルギー監査を活用し、需要制御の運用改善・照明LED化・待機削減など回収の早い施策と、シャワー給湯のヒートポンプ化のような投資を伴う施策を切り分けます。設備ごとに削減ポテンシャルと概算投資額、補助金・税制の適用可能性を含めた投資回収年数(ROI)を試算し、優先順位を付けます。まずは投資の小さい運用改善で確実に成果を出し、その削減原資を大型投資に回す順序が現実的です。多店舗では標準化しやすい施策から横展開する順序を検討し、パイロット店舗で効果を検証してから全店展開します。診断では、単に削減量を見積もるだけでなく、施策同士の相互作用にも注意します。たとえば照明のLED化は空調負荷を下げる一方、暖房主体の寒冷地では冬場の発熱減がわずかに暖房需要を増やす、といった副次的な影響もあり得ます。こうした相互作用を踏まえ、総合的にどの組み合わせが最も効くかを見極めます。あわせて、削減効果の『確からしさ』も評価軸に加えます。運用改善のように前提が崩れにくい施策と、設備更新のように立地・稼働に効果が左右されやすい施策では、見込みの信頼度が異なるため、リスクの低い施策から着実に積み上げる設計が有効です。
相見積・補助金/税制・契約見直しの検討
ヒートポンプ給湯機・LED照明・空調・デマンド監視機器などは複数社から相見積を取り、仕様・保証・保守費・省エネ計画を含めたライフサイクルコストで比較します。価格だけでなく、保守体制や省エネ効果の根拠の確からしさも比較軸に含めます。SIIの省エネ補助金、GX・カーボンニュートラル投資促進税制、ヒートポンプ関連補助の要件・公募スケジュールを確認し、省エネ効果の根拠資料を準備します。あわせて多店舗の電力契約の一括見直し余地も並行して検討し、契約更新の時期を揃える段取りも進めます。補助金・税制は、申請から交付までに時間がかかり、着工のタイミングにも制約(交付決定前の発注が対象外になる等)があるため、工事スケジュールと申請スケジュールを早い段階から整合させておくことが重要です。省エネ効果の根拠資料としては、更新前の設備の消費実績、更新後の想定値、その算定根拠を整理しておくと、申請だけでなく社内の投資判断にもそのまま使えます。相見積では、価格・仕様だけでなく、施工実績や保守体制、故障時の対応スピードといった運用面も比較し、24時間営業を止めずに更新できる工事計画を提案できる業者かどうかも見極めます。
意思決定・実行・効果検証
投資判断は経営層と現場が共有できる指標(削減率・回収年数・CO2削減量)で行い、閑散期や設備更新のタイミングに合わせて工事・入替を計画します。会員への影響が大きい工事は事前告知や時間帯の工夫で配慮します。導入後はエネルギー管理システムで設備別・店舗別・時間帯別の消費と需要制御の実績をモニタリングし、想定との差異を検証します。差異があれば設定や運用を見直し、効果を定着させます。運用改善(無人時間帯の設定・デマンド管理・待機削減)も継続し、多店舗では良い運用を全店へ横展開するPDCA体制を整えます。効果検証では、単月の請求額の上下だけで判断せず、外気温や会員数・営業日数といった変動要因で補正したうえで、前年同月比などで実質的な削減を評価することが大切です。気温の高い夏・低い冬は空調需要が増えるため、対策をしても請求額が前年より増えて見えることがありますが、条件を揃えて比較すれば効果が確認できます。検証結果は現場スタッフにも共有し、『何をすると電気代がどう動くか』を体感してもらうことで、日々の運用における省エネ意識が定着します。こうした継続的な改善の仕組みこそが、一度きりの設備更新以上に長期の削減を支えます。
自社の24時間ジムが今回の代表シナリオと近い状況かどうかは、まず使用実態の試算から始まります。業種別電気代計算機を使えば、業種や規模・稼働条件を入力するだけで電気代の概算と内訳の目安を確認でき、24時間稼働の空調・照明、シャワー給湯、換気・マシンのどこに削減余地がありそうかの当たりを付けられます。無人/低利用時間帯の需要制御やデマンド最適化がどれだけ効きそうか、代表シナリオとの差を把握する最初の一歩としてご活用ください。試算結果は精緻な見積もりではなく概算の目安ですが、削減余地の大きさや優先的に着手すべき領域の当たりを付けるには十分です。試算で得た仮説を、実際の請求書や設備別の計測データと突き合わせて検証していくことで、机上の目安から自社の実態に即した計画へと精度を高めていけます。
業種・規模・契約区分・エリアを選ぶだけで推定年間電気代と削減余地を試算できる 業種別電気代計算機 で、自社が本ケースに近いかを確認できます。試算はあくまで目安であり、特定の電力会社・契約形態を推奨するものではありません。
削減手法を検討する際に、単価や一面的な効果だけでなく総合的に判断するための観点を整理します。目先の削減額の大小だけで判断すると、投資規模や回収年数、快適性への影響、施設の稼働特性といった重要な要素を見落としがちです。次の観点を意識することで、自社にとって本当に合理的な打ち手を選びやすくなります。
量(kWh)・契約電力・単価を分けて考える
無人時間帯の需要制御・給湯効率化・照明LED化・換気改善は使用量(購入電力量・ガス)を減らす取り組み、デマンド最適化・契約電力の適正化は基本料金や単価面を抑える取り組み、多店舗の契約一括見直しは単価を下げる取り組みです。これらは効く相手(従量料金/基本料金/単価)が異なるため、どれか一つだけでは全体最適になりません。24時間ジムは空調・給湯・換気の使用量が大きく量の削減効果が大きい一方、利用集中帯の同時稼働による基本料金の最適化も無視できません。まず自社の請求内訳で基本料金と電力量料金の比率を確認し、どちらの削減余地が大きいかを見極めてから打ち手の重み付けを決めると効率的です。24時間ジムのようにベース負荷が大きく稼働時間の長い業態では、電力量料金の比率が高くなりやすく、量の削減施策の効きが大きい傾向があります。一方で、大型店や高圧受電で契約電力が高い場合は基本料金の比率が無視できず、ピーク対策の重要度が増します。同じ『電気代を下げたい』という目的でも、内訳の構造によって最適な打ち手の順序は変わるため、まず自社がどのタイプかを把握することが遠回りに見えて最短の道になります。
投資回収年数(ROI)とライフサイクルで判断
シャワー給湯のヒートポンプ化やLED化のような投資は、初期費用だけでなく想定削減額・保守費・エネルギー費・設備寿命を含めたライフサイクルコストで評価します。安価だが効率の低い設備を選ぶと、生涯コストではかえって高くつくことがあります。補助金・税制で実質負担が下がると回収年数が短縮されるため、制度活用の有無で判断が変わることがあります。会員数・利用時間分布の変動やエネルギー価格の変動も感度分析に織り込むと判断の堅牢性が高まります。楽観・悲観の複数シナリオで回収年数を試算し、価格が上振れしても耐えられるかを確認しておくと安心です。回収年数だけでなく、設備の更新サイクルとの整合も重要です。既存設備が寿命を迎えるタイミングでの更新なら、どのみち必要な投資に高効率化の差額を上乗せする形になるため、実質的な回収は早く見えます。逆にまだ使える設備を前倒しで入れ替える場合は、残存価値の損失も加味して判断する必要があります。CO2削減量やブランド価値、会員への訴求といった金額換算しにくい便益も、経営判断の材料として整理しておくと、電気代削減だけでは説明しきれない投資の意義を共有しやすくなります。
需要制御・LED化・待機削減は投資が小さく効きやすい
無人/低利用時間帯の空調・照明の需要制御、照明のLED化・減光、待機電力の削減は、大型の設備更新に比べて投資が小さく回収が早い傾向があり、まず着手しやすい領域です。とくに24時間稼働では、これらの小さな改善が長時間積み上がって効くため、費用対効果が高くなりやすいのが特徴です。大型のヒートポンプ給湯機導入や空調更新を検討する前に、運用改善・LED化で取れる分を先に取り切る順序が現実的で、そこで得た削減原資を大型投資に回す考え方も有効です。この『小さく始めて大きく育てる』アプローチは、初期投資を抑えつつ現場に成功体験を積ませられるため、社内の合意形成の面でも有利です。運用改善で目に見える削減が出ると、次の設備投資の議論が進めやすくなり、省エネの取り組み全体に推進力が生まれます。逆に、いきなり大型投資から入ると、効果が想定を下回ったときに『省エネは効果がない』という誤った学習をしてしまい、以降の取り組みが停滞するリスクがあります。まず確実に取れるところから取り、実績を積み上げながら投資規模を段階的に上げていくのが、失敗しにくい進め方です。効果は立地・利用時間分布により幅がある目安です。
稼働時間の特性(24時間・無人時間帯)で公共体育館と読み分ける
自治体運営で日中利用が中心・イベント時に負荷が跳ねる公共体育館と、民間の24時間営業ジムでは、運営主体・稼働時間・無人時間帯の扱いが異なるため、効く打ち手も変わります。公共体育館は日中の集中利用とイベント負荷のピーク対策が主眼になりやすいのに対し、ジムでは『24時間止められないが、無人/低利用時間帯の無駄は削れる』という発想が中心で、需要制御・ゾーニングの比重が高くなります。同じ運動施設だからと打ち手を流用するのではなく、稼働特性に合わせて設計することが重要です。たとえば公共体育館では、利用が予約制でイベント時に大人数が集中するため、そのピークに合わせた空調・照明の運転と、非利用日の停止が効きます。一方、24時間ジムは会員がいつでも来られる代わりに、深夜帯はごく少数という『薄く広い稼働』が特徴で、完全停止ではなく『絞る』制御が中心になります。給湯も、体育館ではシャワーの利用が競技後などに偏るのに対し、ジムでは日常的に一定の利用があるなど、需要のかたちが違います。こうした違いを踏まえずに他業態の成功事例をそのまま持ち込むと、期待した効果が出ないことがあります。施設の稼働特性を踏まえ、電力・給湯・換気を横断してエネルギーフロー全体で俯瞰する視点が欠かせません。
中立的な比較情報で意思決定する
特定の設備メーカー・ベンダーや電力会社の提案だけで判断せず、複数の選択肢を中立的に比較することが重要です。1社の提案だけでは、その製品に有利な前提での試算になりがちで、実態と乖離することがあります。中立・非営利の立場の情報や第三者診断を併用し、自社の設備別・店舗別データに基づいて判断することで、過度な期待や偏った投資を避けられます。提案を受ける際は、削減効果の前提条件(想定単価・稼働時間・気候など)が自社の実態と合っているかを必ず確認し、前提が異なれば効果も変わることを念頭に置きます。複数の情報源を突き合わせ、良い面だけでなくリスクや制約も説明してくれる相手を選ぶことが、健全な意思決定につながります。本記事は代表シナリオを中立的に整理したもので、特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。
本ケースの手法を検討する際に陥りやすい誤解や、事前に確認すべき留意点を整理します。削減効果ばかりに目が向くと、会員満足や安全、制度の要件といった見落としがちな側面でつまずくことがあります。以下の点をあらかじめ押さえておくことで、投資の失敗や想定外のリスクを避けやすくなります。
施設の立地・利用実態で効果は大きく変わる
需要制御・給湯効率化の効果は、立地(気候)・会員数・利用時間分布・既存設備の劣化度に強く依存します。寒冷地では暖房、温暖地では冷房の比重が高く、同じ打ち手でも効き方が変わります。本記事の削減額は一定の前提を置いた代表シナリオの目安であり、すでに効率が良好な設備や利用が平準化された店舗、あるいは新しい高効率設備を導入済みの店舗では効果が小さくなります。導入ありきで進めず、設備別・時間帯別の計測に基づいて削減ポテンシャルを見極めることが重要です。同じ『24時間フィットネス』でも、都心のオフィス街に立地して平日夜間の利用が多い店舗と、郊外住宅地で早朝・夜間に利用が分散する店舗では、無人時間帯の長さやピークの出方が異なり、効く打ち手も削減幅も変わります。本記事の代表シナリオはあくまで一定の前提を置いた例であり、そのまま自社に当てはまるわけではありません。数値の普遍化は避け、自社の実測に基づいて判断してください。
無人時間帯の制御は会員の快適性・安全とのバランスが前提
無人/低利用時間帯の空調・照明の需要制御は削減効果が期待できますが、24時間営業では深夜帯にも会員が利用します。最低限の照度・空調・安全確保(防犯・見守り・非常時対応)を損なわない範囲での制御が前提で、快適性を過度に犠牲にすると会員満足・退会リスクに跳ね返り、かえって収益を損ないます。人感・ゾーニングで『使う空間だけ快適に』を実現し、実データで効果と満足度の両面を検証することが安全です。削減額だけを追わず、サービス品質とのバランスで判断する姿勢が欠かせません。とくに無人時間帯の運転抑制は、防犯カメラや緊急通報など安全に関わる設備まで巻き込まないよう、制御対象を明確に切り分ける必要があります。深夜帯の会員が『暗い』『寒い/暑い』と感じて退会につながれば、削減した電気代を上回る収益機会の損失になりかねません。段階的に設定を変えながら会員の反応を確認し、快適性と省エネの両立点を探る慎重な運用が求められます。導入ありきで進めない姿勢が大切です。
補助金・税制は要件と期限がある
SIIの省エネ補助金、GX・カーボンニュートラル投資促進税制、ものづくり補助金、ヒートポンプ関連補助は、対象設備・省エネ効果の基準・公募期間が定められ、年度ごとに内容が変わります。予算に達し次第受付終了となる制度もあり、採択されない場合や交付が想定より遅れる場合もあります。2026年度時点でも最新の公募要領を確認し、採択前提に依存しすぎない計画が安全です。申請には省エネ効果の根拠資料が必要になるため、設備別・時間帯別の計測データの整備を先行させると有利です。また、補助金を使えること自体を目的化すると、本来は不要な設備まで導入してしまう『補助金ありきの過剰投資』に陥る危険があります。補助金は投資判断を後押しする要素の一つに過ぎず、補助がなくても一定の合理性がある投資かどうかを軸に据えることが健全です。交付要件・実績報告・処分制限期間など、導入後に発生する義務も事前に確認し、運用の負担まで含めて総合的に判断してください。
デマンド・契約最適化だけでは量は減らない
デマンド最適化や契約電力の適正化・多店舗の一括見直しは基本料金や単価に効きますが、使用量(kWh)そのものを大きく減らすわけではありません。逆に需要制御・給湯効率化・LED化は量に効きますが、ピークの平準化までは自動では実現しません。契約だけ見直しても消費が大きいままなら効果は限定的で、省エネだけ進めてもピークが残れば基本料金は下がりません。両者は役割が異なるため、量の削減と契約・単価の最適化を組み合わせて考えることが大切です。よくある誤解として『契約を切り替えれば電気代は下がる』と単価だけに注目してしまう例がありますが、単価が下がっても使用量やピークが大きいままでは、期待したほどの削減にならないことがあります。逆に省エネを進めてもピークの出方が変わらなければ、基本料金という固定費は下がりません。量・ピーク・単価の三つの要素を分けて捉え、それぞれに合った打ち手を組み合わせることが、遠回りに見えて確実な削減につながります。代表シナリオでも両輪で整理しています。
本記事は推奨ではなく参考情報
本記事は業界統計・公開事例から再構成した代表シナリオに基づく中立的な解説であり、特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。実在企業の事例や優劣比較ではなく、金額はすべて目安です。投資判断は専門家の診断と自社の設備別・店舗別データに基づき、複数の選択肢を比較したうえで行ってください。判断に迷う場合は、中立・非営利の立場の相談窓口や第三者の省エネ診断を活用することをおすすめします。本記事で示した打ち手や金額は、あくまで検討の出発点となる『地図』のようなもので、実際の道のりは各施設の条件によって変わります。まずは自社の使用実態を把握し、小さく試して効果を確かめながら、確度の高い施策から着実に積み上げていく——この基本姿勢が、過度な投資リスクを避けつつ着実に電気代を下げる近道になります。
本ケースに近い取り組みを自社で進めるための確認項目です。まずは現状把握と設備別・時間帯別使用量の取得から始めましょう。すべてを一度に行う必要はなく、上から順に手を付けられるものから確認していけば十分です。チェックが埋まるほど、自社の削減余地と優先すべき打ち手の輪郭がはっきりしてきます。
無人/低利用時間帯の需要制御やシャワー給湯のヒートポンプ化の検討は、まず自社の電気代と高騰リスクを把握することから始まります。法人向け電気料金シミュレーターを使えば、現在の契約条件をもとに料金上昇シナリオでの負担増を見える化でき、量の削減(空調・給湯・換気の省エネ)と単価・基本料金の最適化(デマンド/契約見直し・多店舗一括)のどちらにどれだけ取り組むべきかの判断材料になります。とくに電力単価が今後上振れした場合に負担がどれだけ増えるかを事前に把握しておくと、省エネ投資の意義や優先度を経営判断として説明しやすくなります。将来の高騰リスクを『見えない不安』のまま放置せず、数値として捉えることが、腰を据えた対策の第一歩になります。代表シナリオと自社の差を確認する出発点としてご利用ください。
※ 電力単価・エリア別単価の最新動向は 新電力ネット(pps-net.org/unit)のデータも参照のうえ、契約見直しの判断材料にご活用ください。
一般社団法人エネルギー情報センター(中立・非営利)。初回相談は無料、2営業日以内に返信、営業電話は一切いたしません。
※特定の電力会社・プランへの勧誘は行いません(中立)。
いいえ。本記事は実在企業の事例ではなく、業界統計やSII採択事例、経産省・資源エネルギー庁の公開情報から再構成した代表シナリオです(2026年度時点)。実在の24時間フィットネス事業者を指すものではなく、特定チェーン・店舗の実データを転載したものでもありません。年間▲45万円・▲88万円・▲168万円やその5年累計は精密な実績値ではなく、規模感を示す目安です。改善単価や年間使用量も、業種横断の公開情報から幅を持って設定した代表値です。実際の効果や金額は契約条件・設備構成・立地・稼働実態により異なるため、自社の設備別・店舗別計測データに基づく試算が前提となります。まずは自社の請求データと使用実態を突き合わせるところから始めてください。
いいえ。当センターは中立・非営利の立場から情報を提供しており、特定の電力会社・設備ベンダー・契約形態を推奨することはありません。本記事は無人時間帯の需要制御・シャワー給湯のヒートポンプ化・照明LED化・デマンド最適化の考え方や効果の目安を中立的に整理した代表シナリオで、優劣比較や勧誘を目的としていません。1社の提案だけでは自社に最適とは限らないため、投資判断は複数の選択肢を比較し、第三者の省エネ診断や自社データに基づいて行うことをおすすめします。相見積を取り、保証・保守・省エネ効果の根拠まで含めて比較すると、判断の確度が高まります。
運営主体と稼働時間・無人時間帯の扱いが異なります。公共体育館は自治体が運営し、日中利用が中心でイベント時に負荷が跳ねるのが主眼ですが、本記事は民間の24時間営業ジムで、深夜・早朝を含む常時稼働のなかで無人/低利用時間帯の需要制御とシャワー給湯を主眼に置きます。公共体育館ではイベント時の一時的なピーク対策や日中の空調・照明の最適化が中心になりやすいのに対し、ジムでは『24時間止められないが、無人時間帯の無駄は削れる』という需要制御・ゾーニングの発想が中心になります。同じ運動施設でも効く打ち手が異なるため、施設の稼働特性に応じて公共体育館の記事と読み分けてご覧ください。数値は代表シナリオの目安です。
営業を止めなくても、無人/低利用時間帯の過剰な運転を削ることで下げられる余地があります。まず入退館データで来館の少ない時間帯を把握し、人感センサー・時間帯スケジュール・ゾーニングで、使われていない空間の空調設定を緩め、照明を減光・消灯します。最低限の照度・空調・安全(防犯・見守り)は確保したうえで『使う空間だけ快適に』を実現するのが要点です。24時間稼働では、こうした小さな改善が長時間積み上がって効くため、費用対効果が高くなりやすいのが特徴です。効果は立地・会員の利用時間分布により幅がありますが、投資が小さく回収の早い施策から着手できます。ポイントは、営業を止めることと環境を『絞る』ことは別だと理解することです。深夜も入館できる状態を保ちながら、来館が少ない時間帯の設定温度をわずかに緩めたり、未使用エリアの照明を落としたりするだけでも、24時間という長い時間軸で積み上がると無視できない削減になります。まずは請求データと来館データを重ねて『いつが低利用か』を可視化し、そこから無理のない範囲で運転を最適化していくのが現実的な進め方です。数値は代表シナリオの目安です。
必ず得になるとは限りません。ヒートポンプ給湯機はエネルギー効率が高く、貯湯運用の最適化(湯増しの時間帯シフトや保温ロスの抑制)と組み合わせると消費を下げられる一方で投資額も大きく、シャワー利用量が少ない店舗では回収年数が長くなります。まず需要制御・LED化・待機削減で取れる分を取り切り、給湯のヒートポンプ化は補助金・税制の活用可能性も含めた回収年数とライフサイクルコストで判断するのが堅実です。あわせて節湯シャワーヘッドなど給湯量そのものを抑える低コスト施策も検討に値します。衛生要件(レジオネラ対策等)を満たす運用が前提です。特定の設備ベンダーを推奨するものではありません。
朝・夜の利用集中帯に空調・シャワー給湯・マシンが重ならないよう、給湯の湯増しや空調の立ち上げをずらしてデマンドのピークを平準化すると、契約電力に基づく基本料金を抑えられる場合があります。夏冬の空調立ち上げが集中する時間帯を分散させるだけでも、月間デマンドの押し上げを防げることがあります。デマンド監視の導入や運用でのピークずらしが有効です。あわせて契約電力が実態に対し過大でないかを検証します。多店舗ならばらついた契約の一括見直しでスケールメリットも狙えます。ただし使用量も大きいため、量の削減と契約最適化を併せて検討することが大切です。なお、契約電力を下げる際は、過去のデマンド実績を十分に確認し、繁忙期のピークに対して余裕を持たせておくことが重要です。無理に下げ過ぎると、想定外のピーク時に契約超過となり、かえって割増や契約見直しのコストが発生することがあります。デマンド監視でピークを事前に抑制する仕組みと組み合わせれば、契約電力を安全に適正化しやすくなります。
標準化しやすい施策(無人時間帯の需要制御・照明LED化・待機削減)を効果の出た店舗から全店へ横展開し、店舗別・時間帯別の使用実態を比較して削減ポテンシャルの大きい店舗から着手するのが有効です。まずパイロット店舗で効果を検証し、投資対効果を確かめてから全店展開すると失敗リスクを抑えられます。あわせて店舗ごとにばらついた電力契約・メニューを一括で見直し、スケールメリットや高圧化・低圧最適化の余地を評価します。エネルギー管理システムで店舗横断のモニタリング体制を整えると、良い運用の水平展開が進めやすくなり、更新・請求管理の手間も減らせます。数値は代表シナリオの目安です。
需要制御・給湯効率化・LED化で購入電力量を減らすと、電力量料金に加え、購入電力量に連動する各種調整費や再エネ賦課金相当の負担も購入量の減少分に応じて相対的に小さくなります。再エネ賦課金は購入電力量に対して課され、2026年度は4.18円/kWhです。たとえば購入電力量を減らせば、その分だけ再エネ賦課金の支払いも比例して小さくなります。量の削減は負担軽減に寄与しますが、効果は設備の状態・立地・稼働により異なるため、自社データに基づく試算が前提です。賦課金の単価そのものは国が定めるため個社では変えられませんが、使用量を通じて負担総額に働きかけることはできます。24時間ジムはベース負荷が大きく年間の購入電力量が多い業態のため、量の削減がそのまま賦課金・調整費を含む総支払額の圧縮につながりやすい点は、この業態ならではの利点といえます。まずは自社の請求書で再エネ賦課金や燃料費調整額がいくらを占めているかを確認し、使用量の削減がこれらにどう波及するかをイメージすると、省エネの効果をより立体的に捉えられます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-07-15
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自治体運営・日中利用中心・イベント負荷の論点(業種の読み分け)。
高齢者福祉施設×省エネの事例
入浴・給湯・空調が重なる24時間稼働施設のケース。
映画館・アミューズメント×空調の事例
稼働時間・来場ピークと空調の論点。
温浴施設の電気代見直し
給湯・循環ポンプ・空調の電力構造。
日帰り温浴×ヒートポンプの事例
給湯のヒートポンプ化・貯湯運用の考え方。
ヒートポンプ導入と補助金
給湯・熱利用の投資支援。
LED・空調の削減効果
照明・空調の省エネ効果の目安。
デマンド制御ガイド
ピークカットで基本料金を抑える考え方。
デマンド・契約電力の用語集
基本料金・力率の基礎用語。
エネマネ投資のROI計算
投資回収の考え方。
契約見直しの実務ガイド
相見積・多店舗一括見直しの進め方。
SII省エネ補助金の活用
設備更新の補助金スキーム。
東京エリアの法人電気料金
首都圏エリアの単価・契約の目安。
関西エリアの法人電気料金
関西エリアの単価・契約の目安。
本ケースに近いかどうかは、自社の業種・規模・契約条件で試算してみるのが近道です。シミュレーターと業種別電気代計算機で、上振れリスクと削減余地を中立的な判断材料として確認できます。
一般社団法人エネルギー情報センターは、特定の電力会社を推奨も否定もしない中立的立場で、法人・自治体の電力契約の見直しや省エネ・設備更新投資の判断材料を整理します。本記事の事例に近い取り組みの進め方について、初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社・契約形態・設備ベンダーを推奨するものではありません。