JEPX(日本卸電力取引所)は、電力会社や新電力が電力を売買する卸売市場です。市場連動プランを契約している法人は、このJEPXのスポット価格が電気料金に直接反映されます。価格が安定している局面ではメリットがありますが、急騰した場合には想定外のコスト増に直面するリスクがあります。
2021年1月には国内の寒波と需給逼迫からJEPXのスポット価格が通常の数十倍に達する局面が発生し、市場連動プランを契約していた法人が月額請求の急増に苦しめられました。このページではそのリスクの仕組みと対策を整理します。
このページでわかること
JEPXのスポット市場では、翌日の電力が30分単位のコマで取引されます。需要が多く供給が少ないコマでは価格が上昇し、逆の場合は下落します。このメカニズム自体は正常に機能していますが、需給が極端に逼迫する局面では通常では考えられない水準にまで価格が跳ね上がることがあります。
燃料価格の急騰
LNG・石炭などの燃料価格が上昇すると、火力発電の限界費用が上がり、JEPXの約定価格も連動して上昇します。
需給逼迫
猛暑や厳冬期に需要が急増し、供給余力が不足する場面でJEPXのスポット価格は急騰しやすくなります。2021年1月の価格急騰はその典型例です。
発電所の計画外停止
大型の原子力発電所や火力発電所が突然停止すると、供給不足から価格が一時的に急騰することがあります。
再エネ出力の急低下
天候不良などで太陽光・風力の発電量が急減した場合、火力発電への依存が高まり価格が上昇することがあります。
市場連動プランでは、JEPXの価格が電気料金に翌月(または当月)の請求として反映されます。固定プランが燃料費調整額を通じて数カ月後に反映されるのとは対照的に、JEPX急騰の影響は極めて速く法人の請求に届きます。
仮にJEPXスポット価格が通常の5円/kWhから15円/kWhに急騰した場合、月間使用量50,000kWhの法人では月額コストが約50万円増加します。これが数カ月続くと、年間数百万円規模の想定外コストとなります。
市場連動プランの仕組みについては 市場連動プランとは で詳しく確認できます。
JEPX急騰シナリオでの影響は、契約しているプランタイプによって大きく異なります。
| プランタイプ | 影響度 | 説明 |
|---|---|---|
| 完全市場連動プラン | 非常に大きい | JEPXスポット価格がそのまま電力量料金に反映されるため、急騰時の影響が直撃します。 |
| 部分市場連動プラン(一部固定) | 中程度 | 市場連動部分の比率に応じて影響を受けます。比率が高いほど急騰時の負担が大きくなります。 |
| 固定プラン(燃調あり) | 小さい | 電力量料金は固定ですが、燃料費調整額の変動は受けます。JEPX急騰の直撃は避けられます。 |
| 固定プラン(燃調上限あり) | 非常に小さい | 燃調に上限が設けられているため、急騰時でも請求の上振れが抑えられます。 |
市場連動プランを選んだ理由が「割安だったから」という場合でも、急騰時にはその割安分を大きく超えるコスト増が発生することがあります。特に以下のケースでは注意が必要です。
JEPX急騰リスクに対する備えとして、以下の対策が有効です。
A.燃料高騰・気候・地政学・需給逼迫など、電気料金を上昇させる可能性のある事象を体系的に整理したものです。複数シナリオで備えることが重要です。
A.歴史的には燃料費高騰(特にLNG価格)と需給逼迫が二大リスク。2020-2022年は両者が複合し、JEPX価格は通常の3倍以上に達しました。
A.はい。燃料高騰には固定価格契約、需給逼迫には需要抑制・蓄電池、地政学リスクには長期PPA契約など、シナリオ別のヘッジ手段があります。
A.むしろ財務余力の小さい中小企業ほど重要です。年間電気代100万円規模でも、20%上昇で20万円のキャッシュフロー悪化となります。
A.標準・楽観・悲観の3シナリオを用意し、悲観シナリオでも事業継続できる体力かを確認するのが基本。年次でレビューします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
市場連動プランでJEPX価格が高騰した場合の年間コスト増加額を、シミュレーターで試算できます。
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中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。