LNG(液化天然ガス)は、日本の電力供給においてガス火力発電の主要燃料として重要な役割を担っています。国際市場でLNG価格が高騰すると、その影響は数カ月後に法人の電気料金請求として現れます。このシナリオは2021〜2022年に現実のものとなり、多くの法人が想定外のコスト増に直面しました。
このページでは、LNG価格上昇がどのような経路で法人の電気料金に波及するか、どのような企業が特に影響を受けやすいか、そしてどのように備えるかを整理します。
このページでわかること
LNG価格が急騰する背景には複数のシナリオが考えられます。最も典型的なのは、欧州など他地域での需要急増により、アジア向けLNGの供給が奪われるケースです。2021〜2022年にかけての欧州エネルギー危機では、ロシア産天然ガスの供給減少を補うため欧州各国がLNG調達を急増させ、アジア市場との争奪戦が生じました。
その他にも、主要産ガス国(カタール、オーストラリア、米国など)での生産トラブル、アジアの冬季需要集中、地政学的リスクによる供給経路の不安定化なども価格急騰の引き金となり得ます。これらのリスクは単独でも複合的にも発生し得るため、「LNG高騰は一時的な異常事態」ではなく、定期的に到来し得るリスクシナリオとして認識することが重要です。
LNG価格の上昇が法人の電気料金に反映されるまでの流れを段階的に示します。
① 国際LNG価格の上昇
LNGは原油価格や需給バランス、地政学的リスクによって国際市場で価格が変動します。欧州での需要急増、産ガス国の生産トラブル、アジア全体での冬季需要集中などが価格を押し上げる代表的な要因です。
② 電力会社の調達コスト上昇
日本の電力会社はLNGを主要燃料とするガス火力発電を多数保有しています。国際LNG価格が上昇すると、電力会社の燃料調達コストが直接的に増加します。
③ 燃料費調整額への反映
日本の電力料金制度では、燃料価格の変動を燃料費調整額として翌々月から請求に反映させる仕組みがあります。LNG価格が上昇してから数カ月後に、法人の電気料金請求に上乗せされます。
④ 法人の月次コスト増加
使用量の大きい工場や商業施設では、燃料費調整額の1円/kWh上昇が月額数十万〜数百万円規模のコスト増に直結することがあります。
燃料費調整額の詳しい仕組みは 燃料費調整額(燃調費)とは で確認できます。
LNG高騰が波及する際、法人の電気料金はどの程度変動するのでしょうか。2021〜2022年の実例では、燃料費調整額が1kWhあたり数円単位で上昇し、年間通じて数十円/kWhの上乗せとなったケースも見られました。
仮に月間電力使用量が50,000kWhの法人で、燃調額が3円/kWh上昇したとすると、月額で15万円、年間では180万円のコスト増となります。100,000kWhの法人では年間360万円規模の増加です。これは経常利益の数%に相当するケースも珍しくなく、経営上の重大なリスクとなります。
また、市場連動プランを契約している場合は、LNG高騰がJEPX(日本卸電力取引所)のスポット価格上昇を通じてさらに即時かつ大きく反映されることがあります。固定プランであっても燃料費調整額の上限設定がないプランでは、同様にコスト増が発生します。
以下のような企業はLNG高騰シナリオで特に大きな影響を受けやすい傾向があります。
| 企業・業種タイプ | 影響が大きい理由 |
|---|---|
| 電力多消費型製造業 | 使用量が大きく、燃調額の変動が金額ベースで非常に大きくなる。 |
| 冷蔵・冷凍倉庫 | 24時間365日稼働で電力消費が多く、コスト圧縮余地が少ない。 |
| 市場連動プラン契約企業 | JEPX価格にLNG高騰が即座に反映され、固定プランより影響が大きい。 |
| 食品スーパー・飲食チェーン | 利益率が低く、コスト転嫁が難しいため営業利益への影響が大きい。 |
| 病院・介護施設 | 公定価格で運営するため、価格転嫁が制度上できない。 |
LNG高騰リスクに対して法人が取れる主な対策を整理します。
LNG高騰リスクをシミュレーターで確認する際は、以下の手順が効果的です。
LNG高騰は過去に複数回発生しており、今後も発生し得るリスクシナリオです。事前の試算が、契約見直しや予算策定の判断材料になります。
A.燃料高騰・気候・地政学・需給逼迫など、電気料金を上昇させる可能性のある事象を体系的に整理したものです。複数シナリオで備えることが重要です。
A.歴史的には燃料費高騰(特にLNG価格)と需給逼迫が二大リスク。2020-2022年は両者が複合し、JEPX価格は通常の3倍以上に達しました。
A.はい。燃料高騰には固定価格契約、需給逼迫には需要抑制・蓄電池、地政学リスクには長期PPA契約など、シナリオ別のヘッジ手段があります。
A.むしろ財務余力の小さい中小企業ほど重要です。年間電気代100万円規模でも、20%上昇で20万円のキャッシュフロー悪化となります。
A.標準・楽観・悲観の3シナリオを用意し、悲観シナリオでも事業継続できる体力かを確認するのが基本。年次でレビューします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
現在の使用量と契約条件を入力して、LNG価格が高騰した場合の年間コスト増加額をシミュレーターで試算できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。