市場価格調整額の最大のリスクは「上限がないこと」です。燃料費調整額(規制料金)には上限がありますが、市場連動型契約の多くには上限がなく、JEPX 価格が急騰した月に請求額が予算の数倍になることがあります。
2019 年度(7.92 円/kWh)と 2022 年度(20.37 円/kWh)で、年度平均の差は約 2.5 倍。 市場連動で 100% 仕入れた場合、年間の電力量料金が 2.5 倍になったことを意味します。
2020 年度末(2021 年 1 月)、寒波による需要急増と LNG 逼迫で、JEPX スポット価格は一時 250 円/kWh 超え。 1 月の月平均で約 60 円/kWh に到達しました。
影響例:月 10 万 kWh の中規模事業所で、1 月の電気代が通常月の 5〜6 倍に。 年額予算を 1 ヶ月で使い切る事業者も発生。
この時期に切替タイミングが悪かった事業者では、社長・経理への突発的な追加予算申請、 翌年度予算の大幅見直しなどの経営対応を余儀なくされました。
2021 年度の冬季スパイクが一時的な事象だったのに対し、2022 年度は年間を通じて JEPX が高止まりしました。 ウクライナ危機で LNG スポット価格が歴史的水準に達し、市場連動契約の法人需要家は「毎月」請求急増に直面しました。
最も確実な方法。市場変動リスクをゼロにできるが、平常時は固定プランの方が高くなる期間もある。
完全固定までいかなくても、市場変動の 30〜50% だけ反映する契約に切り替えることでリスクを緩和。
大口需要家であれば「基準単価の 1.5 倍を上限」などの条項を個別に交渉できる場合がある。
JEPX 高値の時間帯(夏夕方・冬朝晩)の使用量を減らす運用で、実績連動型の影響を軽減。
JEPX 高値時間帯に自家消費で系統依存を下げる物理的なヘッジ手段。
複数拠点がある場合、一部は固定・一部は市場連動に分散することで全体のリスクを平準化。
市場価格調整額は、JEPXの変動幅に連動して上下します。ボラティリティが高い年度ほど、月次の調整額の振れ幅が大きくなります。
| 年度 | 日次ボラティリティ(円/kWh) | スパイク発生率(%) | リスク評価 |
|---|---|---|---|
| FY2019 | 1.76 | 0.0 | 安定 |
| FY2020 | 20.79 | 4.3 | 極めて高い |
| FY2021 | 7.94 | 1.1 | 高い |
| FY2022 | 6.74 | 1.6 | 高い |
| FY2023 | 2.50 | 0.0 | 安定 |
| FY2024 | 2.71 | 0.0 | 安定 |
| FY2025 | 2.17 | 0.0 | 安定 |
| FY2026 | 4.67 | 0.0 | 安定 |
FY2024以降はスパイク発生ゼロ・ボラティリティも2〜3円台に安定しており、市場価格調整額のリスクは相対的に低下しています。 ただしFY2026は4.67円台に再上昇しており、地政学リスクの影響を注視する必要があります。
出典: JEPX公表データ(スポット市場システムプライス年度集計)
A.燃料費(LNG・石炭)の国際価格上昇、再エネ賦課金の増加、容量拠出金の新設、託送料金改定、カーボンプライシング導入が主な要因です。複数要因が同時に進行し、中長期的に上昇圧力が続きます。
A.LNG・石炭・原油の輸入価格変動を電気料金に反映する調整額です。kWhあたりで加減算され、原油価格が高騰すると料金全体が大きく上昇します。毎月更新され、請求書に別項目で記載されます。
A.2012年度の0.22円/kWhから2024年度は3.45円/kWh程度まで上昇。再エネ普及とともに今後も上昇傾向で、2030年度には4円/kWh超の可能性があります。年間使用量100万kWhなら賦課金だけで約345万円の負担です。
A.将来の供給力確保のため、小売電気事業者が負担する料金で、2024年度から本格稼働。需要家には小売料金を通じて転嫁されます。kWhあたり数十銭〜1円程度の上昇要因となります。
A.①プラン見直し(固定・市場連動・TOU)、②切替先との相見積もり、③デマンド削減による基本料金圧縮、④再エネPPA・自家発電の検討、⑤省エネ投資、の順で取り組むのが効果的です。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
市場価格調整額の最悪ケースを、シミュレーターで数字として確認しましょう。
燃調費や市場連動、再エネ賦課金など、料金が上がる要因を自社の契約に当てはめると、今後の影響額が具体的に見えてきます。読み解きに不安があるときや、社内説明の材料が必要なときは、専門家へお気軽にご相談ください。
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中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。