介護施設は、利用者の生活・安全を守るために電力供給の途絶が許されない施設です。24時間稼働の空調・入浴・洗濯・医療機器など、夜間も含めた継続的な電力需要があります。コスト削減の観点だけでなく、供給安定性と予算管理の確実性を重視した契約選択が求められます。
このページでは、介護施設特有の負荷特性と公的施設としての制約を踏まえ、電気料金見直しの着眼点を整理しています。
このページでわかること
介護施設は24時間稼働という特性から、電力コストの増加が経営に大きく影響します。主な要因は以下のとおりです。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由 で確認できます。
介護施設の電力使用は、設備カテゴリによって稼働パターンが異なります。各設備の特性を把握しておくと、デマンド管理や省エネ対策の優先順位が見えてきます。
24時間の居室空調・照明
介護施設では、利用者の安全・快適性のため、居室の空調と廊下照明が24時間稼働します。一般のオフィスや商業施設と異なり、深夜・休日も電力使用量が大幅には減少しません。これがベースロードを高くする主因のひとつです。
入浴設備・給湯
特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、大型浴槽・機械浴・シャワーチェアなどの入浴設備が特定の時間帯に集中して稼働します。電気式給湯設備では、この時間帯の電力消費がデマンドのピークを形成します。
洗濯・乾燥設備
入所施設では、タオル・シーツ・衣類の洗濯が日々の業務として発生します。業務用洗濯機・乾燥機の電力消費は大きく、稼働スケジュールを分散させることでデマンドを抑制できる余地があります。
医療機器・衛生設備
在宅支援設備や医療的ケアが必要な入所者が多い施設では、電動ベッド・吸引器・酸素濃縮器などの医療機器が常時稼働します。これらは停電時のバックアップ電源としての確保も重要な課題です。
介護施設は、供給安定性と予算の確実性の両面から、固定プランとの相性が非常に高い業種です。
固定プランが向きやすい理由
市場連動を検討する場合の注意
最終保障供給のリスクについては 最終保障供給とそのリスク で詳しく解説しています。
介護施設では、電力供給の安定性は利用者の安全に直結します。契約の見直しにあたっては、価格条件だけでなく、小売事業者の経営基盤・供給安定性・最終保障供給のリスクについても確認することが必要です。信頼性の低い事業者への切替えは、最悪の場合、供給停止リスクを伴います。
社会福祉法人・医療法人が運営する介護施設では、年度ごとの予算管理が必要です。電気料金が予算を大幅に超過した場合、補正対応や翌年度予算への転嫁が難しい場合があります。固定価格契約によって年間コストを事前に確定させておくことが、予算管理の観点から有効です。
入浴・洗濯などの高電力設備の稼働時間を分散させることで、デマンドのピークを抑制できます。現状の最大需要電力(デマンド値)と契約電力を比較し、契約電力の引き下げ余地があるかを確認してみましょう。デマンドコントローラーの導入で基本料金削減につながる場合があります。
介護施設の電力コスト削減は、施設全体の経営改善につながります。省エネ設備投資については、厚生労働省・経済産業省・自治体の補助金制度が活用できる場合があります。電力契約の見直しと省エネ設備投資を組み合わせた計画を立てることが、長期的なコスト改善に有効です。
契約見直しの全体的な進め方は 法人の電力契約見直しチェックリスト で整理しています。
介護施設では、利用者への影響を最小限にしながら省エネを進める必要があります。運用を変えずに実施できる設備対策から優先的に検討することをおすすめします。
LED照明への切替え
廊下・共用部・居室のLED化は、24時間稼働の照明電力削減に直接効果があります。人感センサーは居室では利用者の生活パターンへの影響に注意が必要ですが、廊下・トイレでは有効です。
空調設備の高効率化
老朽化した空調設備の更新は電力削減効果が大きく、施設全体の温度管理品質も向上します。更新工事は利用者への影響を考慮した計画的な実施が必要です。
洗濯・給湯の稼働分散
洗濯・乾燥設備の稼働時間を分散させることで、デマンドのピークを下げられます。設備投資なしで実施できる運用改善として、比較的取り組みやすい対策です。
非常用電源の整備
停電時の利用者安全確保のため、非常用発電機や蓄電池の整備は施設運営上の重要課題です。省エネ目的の蓄電池導入を非常用電源として兼用する設計も検討できます。
介護施設の契約見直しでは、24時間稼働という特性から年間の電気料金が安定して大きな水準になります。シミュレーターを使って、現行契約の上振れリスクを数値で把握することで、固定プランへの切替えの必要性を判断しやすくなります。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
はい、使用パターン・ピーク時間帯・契約区分が業種ごとに異なるため、見直しの着眼点も変わります。
経済産業省の電力取引報や新電力ネットの統計データで業種別の目安を確認できます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
病院の電気料金見直しポイント
医療安全を前提とした供給安定性重視の契約見直しの考え方。
固定プランが向く法人の特徴
予算管理と安定性を重視する法人に固定プランが向きやすい理由。
法人の電力契約見直しチェックリスト
見直しの準備段階で確認すべき項目を一覧で整理。
学校施設の電気料金見直しポイント
公共施設の予算制約と季節変動を踏まえた考え方。
最終保障供給とそのリスク
新電力からの切替え時に知っておくべき供給保証の仕組み。
市場連動プランと固定プランの違い
料金の動き方とリスクの差を比較。
業種別・電気料金の相場と目安
介護施設の電気料金水準を業界平均と比較し、コストの見直し根拠を把握する。
冷蔵倉庫の電気代
厨房や食材冷蔵の電力負荷が大きい介護施設にとって、冷蔵倉庫の契約見直し事例は厨房系コスト改善の有力なヒントです。
自治体の電気代
公的・準公的な介護施設は、自治体本体と同じく予算制約下で電力コストを管理する必要があり、調達手法の知見が活きます。
オフィスビルの電気代
介護施設も建物全体での電力契約を組む点でオフィスビルと共通項があり、共用部・専有部の按分や中央管理の考え方が役立ちます。
小売店電気代ベンチマーク
業種横断の電気代相場を把握する起点として小売店ベンチマークは有効で、介護施設の支出水準の妥当性確認にも転用できます。
介護施設の契約条件をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プランと市場連動プランの年間コスト比較にも活用できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。