ドラッグストアは、冷蔵・冷凍設備・高照度照明・空調が長時間稼働し、電気料金が事業コストに占める割合が大きい業種です。多店舗展開している場合は、全社的な電力コスト管理が経営上の重要課題になります。
このページでは、ドラッグストア特有の負荷特性と多拠点管理の観点から、電気料金見直しの着眼点を整理します。
このページでわかること
ドラッグストアの電気料金は、以下の構造的な要因から高止まりしやすい特性があります。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由 で確認できます。
ドラッグストアの電力使用は設備カテゴリごとに特性が異なります。各設備の特性を理解することで、優先して取り組むべき対策が明確になります。
冷蔵・冷凍設備(食品・医薬品)
食品・飲料コーナーの冷蔵・冷凍ショーケースに加え、医薬品・化粧品の温度管理が必要な一部商品の保管設備が24時間稼働します。夏場は外気温の上昇に伴い冷媒への負荷が増え、消費電力が増加します。
照明設備(高照度・長時間)
ドラッグストアは商品を明るく見せるため、売場の照明照度が高めに設定されることが多いです。早朝開店・深夜閉店の長営業時間に伴い、照明の稼働時間も長くなります。LED化が進んでいない店舗では特に影響が大きいです。
空調設備
来客の多い小売業として、快適な売場環境を維持するために空調を積極的に稼働させる必要があります。医薬品・化粧品の品質保持の観点から、一定温度・湿度管理が求められる店舗もあります。
多店舗展開における管理の複雑さ
数十〜数百店舗を展開するチェーンでは、店舗ごとに電力契約が分散しているケースがあります。本部で一括管理されていない場合、全社的な電力コストの把握と最適化が難しくなります。
ドラッグストアは利益率が低い小売業であるため、電気料金の変動が収益に直結します。固定プランとの親和性が高い業種といえます。
固定プランが向きやすい理由
市場連動を検討する場合の注意
固定プランが向く法人の特徴は 固定プランが向く法人の特徴 で、市場連動プランのリスクについては 市場連動プランが向かない法人の特徴 で詳しく解説しています。
多店舗展開の場合、まず各店舗の年間電力使用量・最大需要電力・月別推移を一覧化することが見直しの出発点です。店舗ごとの規模・営業時間・設備年次が異なるため、使用量のばらつきが大きいことがあります。使用量の多い上位店舗を重点的に見直すことで、全体への影響が大きくなります。
同一エリアの複数店舗をまとめて新電力に見積依頼する「一括切り替え」は、ボリュームによる単価交渉力が生まれる反面、全店舗一律の条件が最適にならないこともあります。特に店舗によって電圧区分(高圧・低圧)が異なる場合は、区分ごとに最適な供給会社が異なるケースがあります。
ドラッグストアは年末年始・夏季セールなど繁忙期に営業時間が延長される場合があります。冷蔵設備の夏季ピークと繁忙期が重なる場合、その月の電力使用量が年間最大になる可能性があります。繁忙期の使用量を前提に契約条件を検討することが重要です。
多店舗では契約の更改タイミングが店舗ごとにばらばらになりがちです。現在の契約条件(単価・基本料金・自動更新条項)を全店舗で一覧管理し、更改タイミングを把握しておくことで、見直しの機会を逃さずに済みます。
契約見直しの全体的な進め方は 法人の電力契約見直しチェックリスト で整理しています。
ドラッグストアでは、電力契約の見直しと並行して設備改修を行うことで、削減効果を最大化できます。
LED照明への更新
売場照明のLED化は、照明電力消費を50〜60%削減できる場合があります。多店舗を一括でリース契約やLEDリニューアル提案を受けることで、店舗ごとの初期投資負担を平準化できます。
冷蔵ショーケースの更新・扉付き化
オープンケースに扉を後付けすることで、冷気の逃散を防ぎ消費電力を大幅に削減できます。新品ケースへの更新と組み合わせると、さらに高い削減効果が期待できます。
ドラッグストアの契約見直しでは、以下の観点でシミュレーターを活用することで、本部の意思決定に必要な数値を把握できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
はい、使用パターン・ピーク時間帯・契約区分が業種ごとに異なるため、見直しの着眼点も変わります。
経済産業省の電力取引報や新電力ネットの統計データで業種別の目安を確認できます。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-04-11
固定プランが向く法人の特徴
予算管理と安定性を重視する法人に固定プランが向きやすい理由。
法人の電力契約見直しチェックリスト
見直しの準備段階で確認すべき項目を一覧で整理。
スーパーマーケットの電気料金見直しポイント
冷蔵・空調負荷を踏まえた食品小売の契約見直しの考え方。
小売店舗の電気料金見直しポイント
照明・空調と営業時間を踏まえた見直しの考え方。
法人の電気料金が上がる理由
電気料金を構成する要素と上昇の構造を解説。
市場連動プランと固定プランの違い
料金の動き方とリスクの差を比較。
小売チェーンの電気料金高騰リスク
ドラッグストアチェーンが複数店舗で直面する電気料金高騰リスクを解説。
小売店電気代ベンチマーク
一般小売店舗の電気代相場と比較し、ドラッグストアの店舗運営コストが小売業界平均からどれだけ乖離しているかを確認できます。
冷蔵倉庫の電気代
医薬品や要冷蔵品を保管するバックヤード設備は冷蔵倉庫と原理が共通しており、保冷負荷の電力管理手法を体系的に学べます。
小売チェーン電気代見直し事例
多店舗展開の小売チェーンが実際に電気代を見直した事例を踏まえ、ドラッグストアでも適用しうる削減アプローチの参考になります。
コンビニの電気代見直し
24時間営業や冷蔵・冷凍ケースを抱える点でドラッグストアと類似するコンビニの電気代対策を参照し、夜間営業店舗の最適化に応用できます。
ドラッグストアの契約条件をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プランと市場連動プランの比較にも活用できます。
記事を読んで気になった点があれば、エネルギー情報センターにお気軽にご相談ください。法人・自治体の電力契約に精通したスタッフが、中立的な立場で判断材料を整理します。初回相談は無料です。
中立的な立場で、特定の電力会社への勧誘は一切行いません。