不動産業(仲介業・開発業・賃貸管理業・REIT)は、本社オフィス+多拠点支店+管理物件共用部+保有物件運営という複層構造の業種です。事業形態によって電力契約管理の課題が大きく異なります。本ページでは不動産業特有の電力負荷特性、業界平均水準、規模別事例、管理物件代行集中購買、保有物件ZEB化、補助金活用、契約見直しチェックリストまで実務に直結する観点を整理します。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
このページでわかること
不動産業の電力使用は『本社オフィス/多拠点支店/管理物件共用部/保有物件運営』の4層構造です。事業形態(仲介・賃貸管理・開発・REIT)で電力契約管理の課題が異なるため、自社事業の重み付けを把握することが見直しの起点です。
本社オフィス+多拠点支店
不動産業は地域密着型の支店展開が一般的。本社+全国・都市部・住宅地に複数支店を展開し、平日昼間中心の業務電力が発生。1拠点あたり低圧20〜80kW、年5〜30万kWhが目安で、多拠点合計では年200〜1,000万kWhに達する大手も。
管理物件の共用部電力(エレベーター・廊下・駐車場)
賃貸管理業務で扱う管理物件の共用部電力(エレベーター・廊下照明・駐車場照明・受水槽ポンプ・換気)はオーナー契約だが、PM/BM業務で管理を委託される。1棟あたり年5〜50万kWh規模で、保有/管理戸数が多いほどグループ合計が膨大。
倉庫・展示場・モデルルーム
開発業の倉庫・モデルルーム・展示場は使用パターンが業務時間中心。1棟あたり低圧20〜100kW、年10〜50万kWh。週末営業のモデルルーム特性、季節商戦の影響も。
商業ビル・物件運営(保有物件)
REIT/開発業の自社保有物件は商業ビル・オフィスビル・物流施設として運営。1棟あたり高圧500〜3,000kW、年200〜2,000万kWh。テナント別個別契約と共用部一括契約の組合せ管理が必要。
ITシステム・データセンター(顧客管理)
REINS/物件管理システム・賃貸契約管理システムは自社サーバーまたはクラウド運用。大手では自社DC運用も。社内サーバー室で月3,000〜10,000kWhの電力消費。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由、削減打ち手の全体像は 法人電気代の削減ポイントで確認できます。
不動産業の電気代水準は事業形態(仲介・賃貸管理・開発・REIT)で大きく異なります。業界統計と公開データから整理した業界平均値を、自社水準との比較で活用してください。
業界全体の電気代水準
経産省・不動産業協会等の参考値から、不動産業(仲介・賃貸管理)の電気代は売上高比0.2〜0.8%、開発業(REIT・建設)で売上高比0.3〜1.5%。中堅仲介業で年1,000〜5,000万円、大手開発業で年5,000万〜2億円が一般的レンジ。
管理物件の共用部電気代
管理戸数1,000戸の中堅PM業で年間共用部使用量は500〜2,000万kWh、年1.5〜6億円規模。オーナー契約だが管理委託費に含めて代行契約するケースが大半。
事業形態別の年間使用量
小規模仲介業(30〜100名)で本社+1〜3拠点、年間20〜80万kWh。中堅仲介+管理業(300〜1,000名)で本社+10〜30拠点、年間200〜800万kWh。大手開発業+REIT(1,000名超、保有物件多数)で本社+保有物件全体、年間1,000〜5,000万kWh。
※ 出典: 全日本不動産協会・不動産協会・経産省統計から整理。実値は事業形態・保有物件数で2〜5倍ぶれます。
不動産業の電気代上昇は、制度的要因(燃料費・賦課金)に加え、テナント請求の透明性、ESG投資家対応のZEB化要求という業界固有要因が並列します。
燃料費調整額の多拠点合算インパクト
本社+多拠点で年間500万kWh使用の中堅不動産業者で燃料費調整額1円/kWh変動による年500万円の差。管理物件共用部を含めると年数千万円規模に。2022年以降4〜5円/kWhレンジで推移する継続的上昇要因。
再エネ賦課金の負担増
再エネ賦課金は2024年度3.49円/kWh、2025年度3.98円/kWh、2026年度4.5円/kWh前後と上昇トレンド。年間1,000万kWh使用の中堅PM業で年4,500万円の負担、5年で2.25億円超。
テナント請求と共用部費用配賦
賃貸物件のテナント別電気代と共用部費用の配賦ルールが上昇局面で問題化。共用部の電気代上昇分を管理費に転嫁できない契約形態が多く、PM業の利益圧迫要因に。
ESG対応(賃貸物件ZEH/ZEB化)
投資家・テナント要求でZEH(ゼロエネルギーハウス)・ZEB(ゼロエネルギービル)対応が必須化。太陽光・蓄電池・断熱性能向上の初期投資負担が新たな費用に。
管理物件分散契約と集中購買機会
管理物件ごとに地域電力会社・新電力との個別契約が分散しているケースで、集中購買すれば年5〜10%単価改善の機会がある。PM/BM業の電力購買担当不足が課題。
個別要因の詳細は 燃料費調整額の仕組み、 再エネ賦課金上昇の影響、 容量拠出金の事業影響で深掘りできます。
不動産業の電気代削減は規模帯ごとに最適施策の組合せが異なります。実在事業者の公開事例・業界団体ヒアリングから整理した3つのパターンをBefore/Afterで提示します。
事例1:中堅仲介業の年間11%削減(Before/After)
Before(見直し前):都内中堅仲介業者A社(本社+5支店、低圧合計 200kW、年間 60万kWh、年間電気代 1,800万円)。各拠点個別契約、市場連動プラン継続、LED未更新、管理物件共用部の購買集約なし。
After(実施施策):本社・支店をグループ一括契約化(固定3年)/全拠点LED化(投資 200万円)/空調個別制御化/管理物件100戸の共用部代行集中購買開始。
Result(削減効果):年間電気代 1,800万円 → 1,602万円(▲11%、▲198万円)/契約 kW 合計 200→180/投資回収 1.5年(SII補助 1/2 活用)
事例2:中堅PM業の年間14%削減
Before(見直し前):中堅PM業者B社(本社+20支店+管理1,500戸、高圧合計 800kW、年間 600万kWh、年間電気代 1.8億円)。各支店個別契約、市場連動プラン、管理物件代行契約も分散状態。
After(実施施策):支店グループ一括契約+管理物件共用部代行集中購買化/固定5年プラン切替/全拠点LED+BEMS導入/管理物件LED改修プログラム(オーナー負担+補助金活用)/グリーン電力20%調達。
Result(削減効果):年間電気代 1.8億円 → 1.548億円(▲14%、▲2,520万円)/契約 kW 合計 800→700/投資回収 3年(補助金後 2年)/オーナー満足度向上による契約継続率改善
事例3:大手REIT保有物件年間1.5億円削減
Before(見直し前):大手REIT C社(本社+保有商業ビル20棟、特別高圧合計 8,000kW、年間 5,000万kWh、年間電気代 15億円)。長期固定契約継続も保有物件のZEB化未着手、テナント還元プログラムなし。
After(実施施策):電力契約の10年長期固定締結/保有物件ZEB化10棟+自家消費太陽光2MW+蓄電池3MWh/オフサイトPPA 5MW(再エネ100%)/テナント還元プログラム導入(再エネ証書テナント別還元)。
Result(削減効果):年間電気代 15億円 → 13.5億円(▲10%、▲1.5億円)/契約 kW 合計 8,000→7,200/投資回収 8年(補助金後 6年)/テナント満足度向上による稼働率改善
関連業種の事例は オフィスビルの電気料金見直し、 ショッピングモールの電気料金見直し、 百貨店の電気料金見直し。
管理物件の共用部電力(エレベーター・廊下・駐車場・受水槽)は原則オーナー契約ですが、PM/BM業務として代行集中購買化することで管理戸数100戸超で年5〜8%の単価改善、年100万〜1,000万円規模の削減効果が見込まれます。
集中購買の進め方
PM業のメリット
多拠点企業の電気代対応は 多拠点企業の料金高騰リスクで確認できます。
不動産業のデマンド管理は『本社・支店グループ契約』『管理物件代行集中購買』『保有物件ZEB化+自家消費太陽光』『テナント還元プログラム』の4論点を組合せて最適化します。
本社・支店グループ一括契約化
各拠点個別契約をグループ一括契約に統合することで電力単価▲5〜10%削減。新電力との交渉力強化、契約条件統一による管理コスト削減効果も発生する。
管理物件共用部の代行集中購買
管理物件の共用部電力をオーナー個別契約から代行集中購買化することで、年5〜8%単価改善。PM業の付加価値サービスとしてオーナー満足度も向上。
保有物件ZEB化と自家消費太陽光
保有商業ビル・オフィスビルの屋上太陽光1MW級導入で年100〜130万kWh発電、年1,000〜1,500万円削減。テナント還元プログラムと組み合わせると差別化に。
テナント還元プログラム
保有物件の再エネ電力をテナント別に配賦・再エネ証書発行することで、テナント側ESG要求対応と稼働率向上の両立。大手商業ビルで標準化が進行中。
デマンド管理の削減効果試算は デマンドコントロール削減効果で確認できます。
不動産業は事業形態によって市場連動・固定プランの最適選択が異なります。仲介中心は市場連動も検討可能ですが、保有物件運営・PM業は固定プラン推奨。テナント還元・オーナー透明性確保で固定プランの優位性が高くなります。
固定プランが向く理由
市場連動を選んだ場合のリスク
プラン選択論点は 市場連動プランが向かない法人、固定プラン適性は 固定プランが向く法人、比較は 市場連動と固定プランの違い。
不動産業向けの省エネ施策は『保有物件ZEB化』『管理物件代行集中購買』『本社・支店BEMS導入』『テナント還元プログラム』が4本柱。投資回収3〜8年で実行可能な施策が多数存在します。
保有物件ZEB化
屋上太陽光1MW級
テナント還元プログラム
本社・支店BEMS
不動産業向けに活用しやすい補助金は4本柱。設備投資のタイミングを補助金スケジュールと合わせると投資回収を2〜3年短縮できます。複数補助金の組合せ申請(SII+PPA+ZEB)で採択率が高くなる傾向。
省エネ補助金(経産省 SII / オフィス・商業ビル型)
対象:本社・支店のLED・空調・BEMS/保有物件のZEB化
補助率:中小1/2、大企業1/3、上限15億円
不動産業の本社・支店設備更新で活用しやすい主力補助金。保有物件のZEB化で大規模採択事例多数。
需要家主導型 PPA / 蓄電池併設補助金
対象:保有物件屋上太陽光・蓄電池併設
補助率:1/2以内、kWh定額補助型もあり
REIT/開発業の保有物件で活用しやすい。屋上面積大の商業ビル・物流施設で投資回収短縮。
ZEB化補助金(環境省・経産省)
対象:保有物件のZEB Ready/ZEB Oriented化
補助率:1/2〜3/5、上限数億円
新築・大規模改修時のZEB認証取得で活用可能。投資家・テナント要求対応に整合的。
中小企業省エネルギー設備等支援補助金
対象:中小不動産業の本社・支店設備更新
補助率:2/3、上限数千万円
従業員数300名以下の中小仲介・管理業で活用可能。LED・空調更新で採択率高い。
個別制度の詳細は SII省エネ補助金、 蓄電池・自家消費太陽光の補助金、 補助金スケジュールと採択率。
契約見直し前にこのチェックリストで自社状況を整理してください。1項目でも未確認があれば、新電力相見積の精度や交渉力が下がります。
見直し全体手順は 法人電力契約見直しチェックリスト、契約更新3か月前の準備は 契約更新3か月前にやることで確認できます。
不動産業は本社・支店・管理物件・保有物件が複雑に絡む業種で、契約電力の最適点が見えにくい構造です。シミュレーターで自社条件における上振れ幅を試算し、固定プラン切替・ZEB化のメリットを定量化できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
売上高比0.2〜0.8%(仲介・賃貸管理)、0.3〜1.5%(開発・REIT)が業界平均です。中堅仲介・管理業で年6,000万〜2.4億円、大手開発・REITで年6〜30億円規模の電気代になります。
原則はオーナー個別契約ですが、PM/BM業務として管理委託される代行契約が一般的です。集中購買化することで管理戸数100戸超で年5〜8%の単価改善が可能、PM業の付加価値サービスとしても活用できます。
本社・支店中心は市場連動も検討可能ですが、保有物件運営・PM業は固定プラン推奨。テナント還元プログラムや管理委託先オーナーへの透明性確保で固定プランの優位性が高くなります。
ZEB Ready改修で年間電気代▲30〜50%、ZEB Oriented化で▲50%以上削減事例があります。中規模商業ビル(年間電力500万kWh)で年5,000万〜1億円規模の削減、投資回収7〜10年(補助金後5〜7年)が目安です。
保有物件の再エネ電力をテナント別に配賦・再エネ証書発行する仕組み。テナント側ESG要求対応と物件側稼働率向上を両立。大手商業ビル・オフィスビルで標準化が進行中で、優良テナント獲得アドバンテージに。
現実的です。複数物件分の電力を一括長期PPA契約することで、単価▲10〜20%+再エネ100%対応を実現可能。10〜20年の長期契約となり、ESG投資家対応にも整合的です。
経産省SII省エネ補助金(本社・支店設備更新)、需要家主導型PPA補助金(保有物件太陽光)、ZEB化補助金(投資家対応)、中小企業補助の4本柱です。複数組合せで採択率向上。
なります。オーナー個別契約だと年5〜10%の単価改善機会を逸失しているケース多数。PM業として代行集中購買サービスを提供することで管理委託契約継続率・新規獲得率の向上効果が確認されています。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-05-21
業種別の見直しポイント集(一覧)
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大型商業施設運営の関連事例。
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再エネ賦課金とは
賦課金の仕組みと推移を確認する。
本社・支店・管理物件・保有物件の電力使用パターン、ZEB化計画、テナント還元プログラムをもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プラン・市場連動プランの年間コスト比較にもご活用ください。
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