人材派遣業(一般派遣・紹介予定派遣・人材紹介)は、本社オフィス+全国多拠点支店+登録会・研修拠点+コールセンターという広範な拠点ネットワーク業種です。地域密着型の支店展開、派遣契約期間の繁閑差、派遣先大手企業のサステナビリティ要求対応が電力契約管理の課題となります。本ページでは派遣業特有の電力負荷特性、業界平均水準、規模別事例、全国支店集中購買、補助金活用、契約見直しチェックリストまで実務に直結する観点を整理します。
当法人は法人向け電気料金の高騰リスク分析・脱炭素対応支援を行う非営利法人です。本記事は公的データ(経済産業省・OCCTO・JEPX・環境省等)と実務知見を基に編集しています。
この記事の著者: 江田 健二(一般社団法人エネルギー情報センター 理事 / RAUL株式会社 代表取締役)— 電力・エネルギー業界20年以上、書籍20冊以上執筆、内閣府・中小企業庁・商工会議所登壇多数プロフィール →
このページでわかること
人材派遣業の電力使用は『本社オフィス/全国多拠点支店/登録会・研修拠点/コールセンター(大手のみ)』の4層構造です。多拠点展開が業界の根幹で、グループ集中購買による単価改善が見直しの中核論点になります。
本社オフィス(コーポレート機能)
人材派遣業の本社は経営管理・営業統括・システム運用が中心。1人あたり月100〜180kWhの一般オフィス水準。100名規模の本社で年間15〜25万kWh、500名規模で年間60〜120万kWhが目安。
全国多拠点支店(営業拠点)
人材派遣業は地域密着型の支店展開が事業の根幹。大手では全国50〜200拠点を展開。1拠点あたり低圧10〜50kW、年3〜15万kWh。スタッフ面談スペース・登録会・研修ルームの稼働で平日昼間中心の電力消費が発生。
スタッフ登録会・研修拠点
週末・夜間にスタッフ登録会・研修を集中開催する派遣業特有の電力負荷。100人規模の研修ルームを併設する大型支店では、登録会開催日に通常日の1.5〜2倍の電力消費。
ITシステム(マッチング・給与計算)
派遣スタッフのスキル・マッチング・給与計算・労務管理システム。自社サーバー運用の中堅以上では本社サーバー室で月3,000〜8,000kWh、年4〜10万kWh。クラウド移行が進行中。
コールセンター・サポート機能(24h)
大手派遣会社では派遣先からの緊急対応・夜間サポート用コールセンター運用。1コールセンターあたり50〜200kWh規模、24時間連続稼働で年間40〜180万kWhを消費。
電気料金の上昇要因の全体像は 法人の電気料金が上がる理由、削減打ち手の全体像は 法人電気代の削減ポイントで確認できます。
人材派遣業の電気代水準は事業形態(一般派遣・紹介予定派遣・人材紹介)でほぼ共通の傾向を示します。業界統計と公開データから整理した業界平均値を、自社水準との比較で活用してください。
業界全体の電気代水準
経産省・日本人材派遣協会等の参考値から、人材派遣業の電気代は売上高比0.1〜0.4%(業務原価比0.5〜2%)と業界全体で低い水準。中堅派遣会社で年800万〜3,000万円、大手派遣会社(全国200支店)で年5,000万〜2億円が一般的レンジ。
従業員1人あたりの電力使用量
営業中心の支店スタッフで従業員1人あたり月100〜180kWh(一般オフィス水準)、本社コーポレートで月100〜200kWh、コールセンタースタッフで月200〜400kWh。職種・拠点機能で20〜100%格差。
拠点規模別の年間使用量
小規模派遣会社(30〜100名、本社+1〜3支店)で年間10〜30万kWh、中堅派遣会社(300〜1,000名、本社+20〜50支店)で年間80〜300万kWh、大手派遣会社(1,000名超、本社+100〜200支店)で年間500〜2,000万kWh。
※ 出典: 日本人材派遣協会・厚生労働省統計から整理。実値はコールセンター併設有無・拠点数で2〜5倍ぶれます。
派遣業の電気代上昇は、制度的要因(燃料費・賦課金)に加え、派遣契約期間の繁閑差、多拠点分散契約による機会損失、派遣先大手のサステナビリティ要求という業界固有要因が並列します。
燃料費調整額の多拠点合算インパクト
本社+100支店で年間500万kWh使用の大手派遣会社で燃料費調整額1円/kWh変動による年500万円の差。年間2,000万kWh規模では年2,000万円超。2022年以降4〜5円/kWhレンジで推移する継続的上昇要因。
再エネ賦課金の負担増
再エネ賦課金は2024年度3.49円/kWh、2025年度3.98円/kWh、2026年度4.5円/kWh前後と上昇トレンド。年間500万kWh使用の中堅派遣会社で年2,250万円の負担、5年で1.125億円超。
派遣契約期間と拠点規模変動
人材派遣業は派遣契約の更新時期(3月・9月)と新年度(4月)に登録会・研修ピークが集中。閑散期と繁忙期で電力使用量が1.3〜1.5倍変動するため、契約電力の最適点が難しい。
多拠点分散契約の機会損失
全国100〜200支店をビル管理会社経由で個別契約しているケースで、グループ集中購買すれば年5〜10%単価改善できる機会を逸失している事例が大半。集中購買担当不在が課題。
派遣先請求の透明化要求
派遣契約は時給×時間課金が主流で、運営諸経費(電気代含む)は派遣料金に含まれる。近年は大手派遣先からの諸経費透明化要求で、電気代上昇分の料金改定対応が課題に。
個別要因の詳細は 燃料費調整額の仕組み、 再エネ賦課金上昇の影響、 容量拠出金の事業影響で深掘りできます。
人材派遣業の電気代削減は規模帯ごとに最適施策の組合せが異なります。実在事業者の公開事例・業界団体ヒアリングから整理した3つのパターンをBefore/Afterで提示します。
事例1:小規模派遣会社の年間9%削減(Before/After)
Before(見直し前):地方都市の小規模派遣会社A社(本社+2支店、低圧合計 60kW、年間 18万kWh、年間電気代 540万円)。各拠点個別契約、市場連動プラン継続、LED未更新。
After(実施施策):本社・支店をグループ一括契約化(固定3年)/全拠点LED化(投資 60万円)/空調個別制御化/登録会開催日のピーク管理導入。
Result(削減効果):年間電気代 540万円 → 491万円(▲9%、▲49万円)/契約 kW 合計 60→55/投資回収 1.3年(SII補助 1/2 活用)
事例2:中堅派遣会社の年間13%削減
Before(見直し前):中堅派遣会社B社(本社+30支店、低圧合計 350kW、年間 250万kWh、年間電気代 7,500万円)。各支店個別契約、市場連動プラン、コールセンター併設で24h稼働あり。
After(実施施策):支店+本社グループ一括契約化/固定5年プラン切替/全拠点LED+BEMS導入/コールセンター空調最適化/登録会研修ルームの自動制御/グリーン電力20%調達。
Result(削減効果):年間電気代 7,500万円 → 6,525万円(▲13%、▲975万円)/契約 kW 合計 350→310/投資回収 2.8年(補助金後 1.8年)
事例3:大手派遣会社の年間8,000万円削減
Before(見直し前):大手派遣会社C社(本社+150支店+大型コールセンター3拠点、高圧合計 2,500kW、年間 1,500万kWh、年間電気代 4.5億円)。長期固定契約継続も支店分散管理、グリーン電力対応40%止まり。
After(実施施策):電力契約の8年長期固定締結/全国支店グループ集中購買体制構築/本社屋上太陽光 500kW/コールセンター3拠点の空調・LED改修/オフサイトPPA 2MW(再エネ100%)/DR契約/派遣先請求書での透明化。
Result(削減効果):年間電気代 4.5億円 → 3.7億円(▲17.8%、▲8,000万円)/契約 kW 合計 2,500→2,200/投資回収 5.5年(補助金後 4年)/CO₂削減 約4,500 t/年
関連業種の事例は オフィスビルの電気料金見直し、 コンサルティング業の電気料金見直し、 小規模オフィスの電気料金見直し。
中堅・大手派遣会社の電気代削減で最大の効果が見込まれるのが全国支店グループ集中購買。各支店をビル管理会社経由で個別契約しているケースから、グループ一括契約に切り替えるだけで電力単価▲5〜10%の改善が一般的です。
集中購買による直接効果
グループ契約化の進め方
多拠点企業の電気代対応は 多拠点企業の料金高騰リスクで確認できます。
派遣業のデマンド管理は『全国支店グループ一括契約』『登録会・研修ルーム自動制御』『コールセンター最適化』『閑散期ダウンサイズ』の4論点を組合せて最適化します。
全国支店グループ一括契約化
全国100〜200支店をグループ一括契約に統合することで電力単価▲5〜10%削減。新電力との交渉力強化、契約条件統一による管理コスト削減効果も発生する。
登録会・研修ルームの自動制御
週末・夜間の登録会・研修ピークに合わせた空調・照明自動制御。在室センサー+スケジューラ連動で、空室時の電力消費を100%削減。月の電力使用量▲10〜20%削減事例。
コールセンターの空調・サーバー最適化
24h稼働コールセンターの空調インバータ化+サーバー仮想化で電力▲20〜30%削減。BEMS統合で全体最適化が可能。
閑散期の契約電力ダウンサイズ
派遣契約閑散期(5〜7月、10〜12月)には実稼働が低下するため、年間契約電力を繁忙期で設定すると過剰契約に。実デマンド実績の見直しで基本料金▲10〜15%削減可能。
デマンド管理の削減効果試算は デマンドコントロール削減効果で確認できます。
派遣業はオフィス中心で連続稼働ではないですが、多拠点合算では月の使用量が大きく、市場価格高騰局面で年数百万〜数千万円のインパクトが発生します。コールセンター併設の大手では特に影響が大きく、固定プラン採用が経営判断レベルの論点。
固定プランが向く理由
市場連動を選んだ場合のリスク
プラン選択論点は 市場連動プランが向かない法人、固定プラン適性は 固定プランが向く法人、比較は 市場連動と固定プランの違い。
派遣業向けの省エネ施策は『全国支店グループ集中購買』『登録会・研修ルーム自動制御』『コールセンター空調最適化』『本社BEMS導入』が4本柱。投資回収1.5〜3年で実行可能な施策が多数存在します。
全国支店集中購買
登録会・研修ルーム自動制御
コールセンター空調最適化
本社・支店全体LED+BEMS
派遣業向けに活用しやすい補助金は4本柱。設備投資のタイミングを補助金スケジュールと合わせると投資回収を1〜2年短縮できます。
省エネ補助金(経産省 SII / オフィス・コールセンター型)
対象:本社・支店のLED・空調・BEMS/コールセンター空調更新
補助率:中小1/2、大企業1/3、上限15億円
派遣業の本社・支店設備更新で活用しやすい主力補助金。コールセンター空調更新で大規模採択事例多数。
需要家主導型 PPA / 蓄電池併設補助金
対象:本社屋上太陽光・オフサイトPPA
補助率:1/2以内、kWh定額補助型もあり
大型本社ビルを保有する大手派遣会社で活用可能。賃借ビルの場合はオフサイトPPAで対応。
脱炭素先行地域・GX補助(環境省・経産省)
対象:派遣先大手企業向け再エネ調達対応
補助率:1/2、上限数億円
サステナビリティ重視派遣先対応の差別化施策に活用可能。
中小企業省エネルギー設備等支援補助金
対象:中小派遣会社のオフィス・支店設備更新
補助率:2/3、上限数千万円
従業員数300名以下の中小派遣会社で活用可能。LED・空調更新で採択率高い。
個別制度の詳細は SII省エネ補助金、 蓄電池・自家消費太陽光の補助金、 補助金スケジュールと採択率。
契約見直し前にこのチェックリストで自社状況を整理してください。1項目でも未確認があれば、新電力相見積の精度や交渉力が下がります。
見直し全体手順は 法人電力契約見直しチェックリスト、契約更新3か月前の準備は 契約更新3か月前にやることで確認できます。
派遣業は本社・全国支店・コールセンター・登録会が組合さる業種で、契約電力の最適点が見えにくい構造です。シミュレーターで自社条件における上振れ幅を試算し、固定プラン切替・グループ集中購買のメリットを定量化できます。
A.電力多消費業種(製造・冷凍倉庫・データセンター)は基本料金比率が高く、サービス業は使用量料金中心。業種特性に応じた最適化アプローチが異なります。
A.業種別ベンチマークデータは省エネルギーセンター・経産省統計で公表されています。自社の使用量を業種平均と比較することで改善余地が見えます。
A.①売上原価における電気代比率、②時間帯別消費パターン、③契約区分(高圧/低圧)、④地域分散度、の4軸で業種特性が変わります。
A.①製造業:デマンド管理・生産シフト、②飲食店:冷蔵冷凍効率化、③オフィス:空調・照明制御、④物流:冷凍倉庫運用、⑤データセンター:冷却最適化が定番です。
A.事業所別・業種別に契約・プランを最適化し、グループ全体で集中管理するハイブリッド型が効果的です。業種別の電力原単位管理を起点にします。
原発全停止により火力依存上昇。LNG輸入急増、電気料金構造が大きく変化。
再エネ普及の起点。再エネ賦課金が新たな料金構成要素に。
低圧需要家も電力会社を選択可能に。新電力急増。
全国初のエリア全停電。BCP・分散電源への注目高まる。
LNG在庫不足と寒波で年末年始に異常高騰。新電力撤退の発端。
LNG・石炭価格急騰。法人電気料金の歴史的高騰の引き金に。
全国初の警報発令。需給ひっ迫対応の重要性が認識される。
国の補助金で電気代を一時的に抑制。2024年度以降段階的縮小。
送配電事業者の総収入規制を本格運用。長期の料金安定化を狙う。
GX-ETS・化石燃料賦課金の段階導入が決定。中長期のカーボンコスト上昇要因。
容量拠出金が小売事業者・需要家のコスト増要因として顕在化。
排出量取引が義務化。電力会社の排出枠コストが料金に転嫁される段階へ。
※ 主要な電力市場・料金に影響を与えたイベントを年表化したものです。詳細は各種公的資料をご参照ください。
売上高比0.1〜0.4%、業務原価比0.5〜2%と業界全体で低い水準です。中堅派遣会社で年2,400万〜9,000万円、大手派遣会社で年1.5〜6億円規模の電気代になります。
オフィス中心は市場連動も検討可能ですが、24時間コールセンター運用や派遣先大手向けグリーン電力調達が必要な場合は固定プラン推奨です。多拠点グループ契約と長期固定単価の親和性も考慮すべきです。
各支店個別契約をグループ一括契約に統合すると、電力単価▲5〜10%、年100〜800万円規模の削減事例が多数あります。新電力との交渉力強化と契約条件統一による管理コスト削減効果も発生します。
可能です。派遣契約閑散期(5〜7月、10〜12月)には実稼働が低下するため、年間契約電力を繁忙期で設定すると過剰契約に。実デマンド実績の見直しで基本料金▲10〜15%削減事例多数。
100席規模のコールセンターで年間40〜80万kWh追加、年1,200万〜2,400万円の電気代増(電力単価30円/kWh想定)。空調インバータ化+サーバー仮想化で年20〜30%削減可能、投資回収2〜3年。
可能で、近年は大手派遣先からの要求で増加傾向です。派遣単価に含めるか、運営諸経費として明示するかの2パターン。透明性確保が大型契約獲得のアドバンテージになります。
本社ビルの屋上面積が1,500m²以上で、コールセンター併設の大手派遣会社なら検討余地。300kW太陽光で年30〜35万kWh発電、年300〜350万円削減、投資回収7〜10年(補助金後5〜7年)。賃借ビルの場合はオフサイトPPAが現実的。
経産省SII省エネ補助金(コールセンター空調・BEMS)、需要家主導型PPA補助金(本社太陽光)、脱炭素先行地域補助(派遣先大手対応)、中小企業補助の4本柱です。
著者: 江田健二(一般社団法人エネルギー情報センター 代表理事)
公開日: 2026-05-21
業種別の見直しポイント集(一覧)
業種別の電気料金見直しポイントをハブから探す。
オフィスビルの電気料金見直し
本社オフィス中心業種の関連事例。
小規模オフィスの電気料金見直し
小規模派遣会社向けの基本。
コンサルティング業の電気料金見直し
多拠点オフィス業種の類似事例。
不動産業の電気料金見直し
多拠点支店業種の関連事例。
ITサービス業の電気料金見直し
コールセンター・サーバー併設の関連事例。
多拠点企業の料金高騰リスク
多拠点運営に直結するリスク。
固定プランが向く法人
予算管理と安定性を重視する法人の選択肢。
市場連動が向かない法人
派遣単価モデルの法人の固定プラン選択。
法人電力契約見直しチェックリスト
見直し準備の全項目を一覧で整理。
法人電気代の削減ポイント
電気代削減打ち手の全体像。
市場連動と固定プランの違い
料金の動き方とリスクの差を比較。
デマンドコントロール削減効果
デマンド管理による基本料金削減効果。
自家消費型太陽光の費用対効果
本社屋上太陽光の投資回収試算。
太陽光が向く法人の特徴
本社ビル・大型施設の太陽光適性。
SII省エネ補助金の活用
コールセンター・BEMS・LED更新で活用できる主力補助金。
蓄電池・自家消費太陽光の補助金
需要家主導型PPA補助金などの活用パターン。
再エネ賦課金とは
賦課金の仕組みと推移を確認する。
本社・全国支店・コールセンター・登録会の電力使用パターン、繁閑差対応、派遣先大手対応をもとに、電気料金の上振れ幅をシミュレーターで試算できます。固定プラン・市場連動プランの年間コスト比較にもご活用ください。
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